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掲載日:2020/10/25
■ 足指、甲、踵、足首、・・・黒幕は土踏まず? <1>

 「足指は伸ばして使いなさい!」
 「踵は押し出して使いましょう!(=アキレス腱を縮めないで!)」


先生から毎度聞かされる注意ですが、私はこの注意にかなり長く悩んで苦しんだ経験があります。「足指は握らない」「アキレス腱は縮めない」、・・・「理屈は解った!でもどうすれば出来るの?」、不器用な私の悩みはいつもこれでした。

一生懸命爪先を伸ばそうとするとつい足指を握ってしまうし、必死で足首を伸ばそうとすると踵が引かれてアキレス腱が縮まってしまう・・・どうしたらいいんだろう?子供の頃からバレエを習っていてもこの事については全く習得しないで感覚だけで踊っていたんですね。

今でも“足”の使い方が完璧に出来ているとは言いづらいですが、それでも現在は「なるほど〜だからこうやって使うのね!」と思えるまでになっています。皆さんの中にも同じような悩みを抱えている方がいらっしゃるのではないでしょうか?身体の使い方は厳密には人によって様々ですが、私の動かし方が少しでも参考になれば幸いです。

 さて、この記事を書くにあたり、「バレエ上達へのテクニック」(←今考えるとスゴイ名前を付けてしまった!と恥ずかしいっ m(> <)m ) の中の「足指は伸ばして使う」 「甲は大人からでも変化する」 「足指に画鋲、踵にヒール」 「美しい爪先」 という記事を修正しました。これらの記事はかなり古かったのでもっと良い内容にしたかったのですが、直してみるとなんとな〜くどれも同じことばかり言っているような、そんな状態になってしまいました。今回はそれらの内容の概要を整理することも目的にしています。少し長い記事になりますが、ご容赦下さいね。「またか!」と思う方、復習のつもりで読んで下さい。
m(- -)m


<まずはア・テール>

[足の部品]
 バレエでの「足」の主な部品は、
“足指”, “甲”, “指の付け根(MP関節)”, “土踏まず”, “踵”, “足首”
他に“爪”や“くるぶし”等もありますが、この記事では取り上げません。

[足に敏感になる]
 まず第1にしなくてはならないこと、それは「足」に敏感になることです。
どのアスリートもそうですが、技術が上がれば上がる程、競技で使う身体の部位にはとても敏感になって来ます。バレエは全身運動ですので、それこそ全身に神経を行き渡す必要があるのですが、足は身体の土台で唯一床とつながっている部分ですので特に敏感になる必要があります。敏感になる為には、自宅で靴下でタンデュをしてみるとか、足指や土踏まずを動かしてみるとか、時間の開いた時に常に意識するようにしてみて下さい。簡単には自由に動かせるようになりませんよ、根気よく足を動かして下さい。

[足裏3点の感覚を感じる]
 繰り返し繰り返し記事に書いてきた「足裏3点」、親指の付け根・小指の付け根・踵、この3点(左図の赤い丸)の感覚を、まずは床の上で感じられるようになりましょう。この3点に神経を集中させてこの3点で「均等に」床を押してみて下さい。押し方は、テントの様に三方に張るような押し方でも良いですし、3点を垂直に上から押すやり方でも結構です。自分に合う押し方を見つけて下さい。


[足裏3点で土踏まずを上げる] (バレエでの土踏まず)

 「足のアーチ」という言葉を聞いたことがありますよね?足のアーチとは足裏の3点を左図のように三角に結んで盛り上がる“テント”のような形をしていて、このアーチが体重を支えています。

バレエで言う「土踏まず」とは、この3点のアーチで作られた足裏の盛り上がりのことを指します。一般で「土踏まず」というと、足裏の内側にある地面とは接していない盛り上がり部分を指しますが、バレエでは足裏3点を結ぶ“テント”のような物だと思って下さい。 このテントは高さこそ違えど生まれつき誰でも持っているアーチです。バレエではこのアーチを強く形づくる訓練を行い、体重を支えられるようにします。

足裏3点で床を押すと「土踏まず」の真ん中が上がって来る感覚が感じられるようになります。最初は感じられなくても大丈夫です、「土踏まずが床から浮いて来た」と感じるように押し方を研究してみましょう。内側や外側に傾かないように3点を「均等に」押して真ん中を押し上げて下さいね!

<余談> (※ 外反母趾や開張足で足のアーチがくずれている場合は足裏3点への力が正しく入り難くなる為に「土踏まず」が感じ難くなります。アーチのくずれている方は非伸縮のテープ等で足の形を整えて訓練すると良いと思います。開張足で外反母趾である私のお勧めは、非伸縮のメディカルテープ(幅3.5〜5cmくらい)で、バニオンのすぐ下を横1周くらい痛くない強さで巻いてレッスンをします。痛くならない程度の強さで巻くことが大切です。足裏のアーチを整えてからレッスンや訓練を行いましょう。)

[指は伸ばして床を押さえる]
 足裏3点で床を押したら、次は足指を先へ先へと伸ばして足指の腹で床を“押さえます”。この足指を伸ばして床を押さえることでより足裏が安定し、ルルベ・アップへの準備になります。(開張足の人は足指はあまり広げないで先に伸ばす感覚で使いましょう。)
ここで足指を縮めてしまったり握ってしまったりすると、足指3点を均等に押せなくなりますので、足指は必ず伸ばして使います。

※ 足指を伸ばす感覚をまだ得られない方は、足裏を床に付けてまずは足指を反らせてみて下さい。そして指先を遠くへ伸ばしながら足指で軽く床を押さえます。繰り返し行うことで足指を伸ばす感覚が強くなって行くと思います。足指は見た目の形自体が曲がって見える事も多いので、手指のように指が真っ直ぐにならなくても伸ばす感覚さえつかめれば大丈夫です。

<余談>  以前の私は重心を爪先寄りに置いていたこともあり、足指で床を強く押して立っていました。しかしそれでは膝下からのすねの筋肉に負担を掛け過ぎてしまうことだと解りました。ア・テールでの足指は、伸ばして床を押さえる程度の力で充分です。
 足裏3点で床を押す筋肉は「内在筋」と言って、足裏の踵から足指の付け根までをつなぐ筋肉(図2)で足裏のアーチを作ります。足指を曲げたり伸ばしたりするのは主にすねまでつながっている「外在筋」(図1)の役割です。「土踏まず」を上げる為に鍛えたいのは「内在筋」です。足指で平ゴムを押したり、タオルを足指で手繰り寄せる訓練などは外在筋の訓練になりますので、まずは内在筋の訓練をしましょう。

(※ こちらのサイトより図を拝借しております。外来筋ではなく外在筋です。)

[内在筋(足裏筋)を鍛える]
「内在筋」の訓練は、足裏3点で床を押して土踏まずを上げる訓練と、足を床から離した状態で足裏3点を三角の中央に集めるような感覚で内在筋を収縮させる運動です。足首関節を前へ押し出し過ぎたり、足指を握ってしまうと、足裏3点による内在筋の収縮がやり難くなりますので気をつけて下さい。
一旦、土踏まずを作る感覚を得てしまえば、その力を強くして行けば良い訳ですし、ルルベ・アップもジャンプの訓練も「内在筋」を使えなければ意味がありません。まずは内在筋を使って土踏まずを上げる、土踏まずを作る訓練をして下さい。

(※ もしバランスパッドをお持ちでしたら、バランスパッドは足裏のトレーニングに大変役に立ちます。パッドの上に立って、足裏3点、伸ばした足指をしっかりと感じて、片足で立てるようになりましょう!)


<ア・テールからルルベへ>

 ア・テールでの土踏まずと足指の状態は解りましたか? 次は、そこからどのようにルルベ・アップをして行くかをお話します。

[重心の移動]

 ア・テールでの重心の置き場所は踵と土踏まずの間、あるいは踵前の位置(左図ピンクの丸)に置きます。ア・テールからルルベ・アップをして行く為にはこの重心を指先の方へ移動させて行かなくてはなりません。

[踵でヒールを押す力]
 足指を伸ばし土踏まずが上がった状態で、重心を指先方向へ移動させて行くと、私の感覚では重心が土踏まずの中心を過ぎた辺りから踵が床から離れ始めます。重心が爪先方向へ移動して行きますので、足指で床を押す力(緑の矢印)も強くして行かなくてはなりません。踵は床から離れて行きますが、足裏3点は床を押したままですので、踵が床から浮いていても床に向かって踵を押し続ける感覚を持続させます(靴のヒールを踵で押す感じ)。 足指と足裏3点で床を押し続けながら土踏まずの真ん中を座骨に向かって押し上げて行きます(青い矢印)。

[テント状の土踏まずで体重を支える]
 踵が一番高い位置まで到達したら、そこが片足で立つルルベの位置となります。 足裏3点(赤い矢印)と伸ばした足指(緑の矢印)で床を押し、土踏まずを甲側へ押し出しつつ、座骨に向かっても押し上げて行きます(青い矢印)。
ここで足首関節や甲の表面を前へ前へと押し出してはいけません。足首は直線状に伸びればそれ以上伸ばす必要はなく、甲もあくまで足裏3点で土踏まずを作った結果で押し出されて行く感覚です。
(テント状にした土踏まずで体重を支える感じ。)

この「テント状にした土踏まず」で体重を支えることが出来ると、ア・テールからルルベ、ルルベからア・テールまでの移動をスムーズにコントロールして行うことが出来るのです。

もしここで土踏まずのテントを使わずに、土踏まずを平面のようにしてルルベをすると、ふくらはぎや前腿などの力を使って踵を上げるようになり、支える力が弱い為にルルベの状態からすぐに踵が床へ落ちてしまうようになります。「土踏まずをテントのようにして使う」、この感覚をしっかりと身に付けて立って下さい。
※ 但しこのテントはプリエやジャンプでの着地の時は力を上手に抜かなくてはなりません。この件については後述します。

(※ 片足ルルベの理想は足指の付け根(MP関節)の垂直線上に足首が乗ることですが、もしそのような形にならなくても、この土踏まずの力を使って体重を支える事が出来ると、より安定してルルベに立つ事が出来るようになります。)

[アキレス腱を縮めない]
 足首関節を前に押し出し過ぎると、アキレス腱が縮まってしまい踵が押せなくなります。“踵を押す”ということは“アキレス腱を縮めない”という事になります。アキレス腱を完全に伸ばすと足首はフレックスの状態になります。「アキレス腱を縮めない」という注意は「アキレス腱を伸ばせ」と言っているのではなく、「踵を押せ」という注意だという事を覚えていて下さい。

[踵を押す訓練]
 踵を上げる訓練はまずはバーに掴まってパラレルで行う「カーフレイズ」が有効です。パラレルで行う方が正しく筋肉を使えるのでパラレルで感覚を得てから、ターンアウトで行うことをお勧めします。

また、私が時々行う訓練をひとつご紹介します。
ちょうど良い高さになる様に本(漫画のコミックス等がおススメ)を重ねてズレない様に(少しズレた方が良い場合も) ヒモで何度も巻きます。その本を更にタオルで巻いてヒモで止め「踵の台」を作ります。
どこかに掴まって、踵の台をルルベした足の踵の下に置き、足指+足裏3点で床を押す練習をします。片足づつで大丈夫です。最初は低い高さで行い、慣れてきたら一番高い高さで訓練します。台を押したままプリエをしたりして更に押す力の訓練をして下さい。一番高い位置で充分に踵を押す力がついたら、もう片方の足を使って台を踵の下から外します。外した時でもその足の形(土踏まずの状態)をキープ出来るように、足指と足裏3点の力をつけて下さい。


<ルルベからポアントへ>

 しっかりとしたルルベで立てたならば、そこからポアントへは座骨を指先の上へ移動させながら足指の力でポアントの位置まで立つだけです。土踏まずを収縮させることにより足指にも力が入り易くなっているはずです。伸ばした足指で強く床を押してポアント・シューズの爪先を立て、足指の先で床を押し続けて下さい(あるいは足指の先を床の方へ向けて伸ばします)。5番や片足でポアント立ちした時はポアントの爪先(プラットフォーム)の垂直線上に座骨が来るように立てることが理想です。

(※ 足指の形は人によってかなり違います。親指(母指)から第3指まで殆ど同じ長さの場合が一番ポアントで立ち易いですが、そうでない方も多いので、不足している長さをパッドの中に詰め物をして補います。最近は様々な製品が出ていますので、工夫して補間して下さい。足指それぞれが伸ばせる状態でシューズを履いた方が足指をしっかり使う事が出来ます。
カスタムフィット  ポアント・ウール  アンダーラップ  シリコンパッド )

[ポアント立ちの訓練]
とはいえ、片足でプリエ無しでポアント・アップを行うのはかなり力が必要ですので、最初はバーに掴まり、両足で行いましょう。ポアントシューズでのルルベはバレエシューズの時ほど踵は上がりませんが使い方は同じです。両足でルルベ→ポアント、ポアント→ルルベを座骨を押し上げながら(引き上げながら)、行いましょう。

片足での訓練は、ア・テールのプリエから指先を自分の真下まで引いて立つ「引き立ち」で行います。引き立ちで立った後は、また爪先をもとの位置へ戻してア・テールのプリエへ戻ります(「引き降り」)。
充分に訓練が出来た状態で、片足でのプリエなしのルルベ→ポアントの訓練(ライズ・アップ&ライズ・ダウン)を行います。前腿やふくらはぎを使い過ぎないで(全く使わない訳には行きません)、座骨を引き上げるようにハムストリング側(内腿側)の力を意識して行って下さい。


 左の写真は理想的な足の形!(こんなに素晴らしい甲の持ち主は中々いません。)
どれほど甲が出ていたとしても、軸足として立つ時の指先は必ず床の方へ向けて立ちます。
(但し、2番ポジションで立つ時などはもう少しつま先の湾曲が必要となって来ます。)


 左の写真は指先の上に足首が乗っていませんね。
理想は右側の形。
足指を握ったり、足首を前に出し過ぎたり、爪先を極度に湾曲させて靴に頼って立ったりしてはいけません。



<余談>
 最近は足の甲をストレッチする器具まであるくらいに甲のストレッチが流行です。床の上に伸ばした足の指先が床になるべく近く近くと伸ばしているようです。しかし、本当にそこまで伸ばす必要があるのでしょうか? 上述した通りに軸足として使う時には指先と足首が一直線上になれば一番効率的に立つ事が出来ます。それ以上の湾曲は動脚として足を使った時の見た目の好みの問題でしかありません。あそこまでストレッチした足をコントロールできる筋力が続けば良いですが、どうでしょうか? 少なくとも素人にはあそこまでのストレッチは「百害あって一利(見た目)のみ!」と言わざる負えません。

また、足指の力をつける為に、平ゴムを足指で押す訓練や、“タオルギャザー”と呼ばれるタオルを足指で手繰り寄せる訓練などありますが、私は足指の力をつけるならやはりポアントを履いてのルルベ→ポアントの訓練が一番だと思っています。自分の体重を指先だけで持ち上げる訳ですからかなりな筋力を使います。まだポアントを履けない方でしたら、片足ルルベで指に体重を乗せて足指で床を押すようにします。もし足首がまだ固い場合は足首のストレッチや伸ばすエクササイズが先だと思います。特に“タオルギャザー”の訓練はバレエではあまり役に立ちません。足指を握ったり縮めて使う事はないからです。


 大変長い記事になってしまい、申し訳ありません。(ホントはもっと色々書きたいのですが…)
ここまでで、ア・テールからポアントまでの足の使い方はご理解頂けたでしょうか?
ここに書いた内容は「バレエに理想的な形の足」をモデルとしています。人の顔が千差万別のように人の足も本当に形が色々です。この記事はあくまで「参考」として、ご自分の使い方の研究をして下さい。

次回は<伸ばした時の足>についてと<プリエや着地の時の土踏まず>について、お話しようと考えています。 もし良かったら読んでみて下さいね!

それでは今回も “足裏フェチのRucca” でございました! m(_ _)m 。