【 足指に画鋲、踵にヒール 】(安定した「足」を得る為に)
(2020.10.17 修正) 

 様々なアンシェヌマンを行う際、よく“足の指を床から離してしまう”方がいます。バレエの基本では足の指の腹を床から離して動く事は、足を床から上げる(離す)時とジャンプの時以外、決してありません。「ア・テールで足の指が床から浮いてしまう」ことはバレエにとっては致命的なミス!なのです。

足の指は足裏3点(親指と小指の付け根+踵)と共に床を押すことによって土踏まずが上がり、ハムストリング(内腿)の引き上げの始点になっています。足指が浮いているということは床を正しく押せていない為、足裏の安定性が悪く、ハムストリング(内腿)もきちんと使えていないことになります。特にバーに頼って立っている時や、アダージォのプロムナードで軸と重心がきちんと足裏に乗っていない時になど発生しやすい現象です。
“足指は伸ばして床からは離さない!” 強く意識してレッスンをしましょう。

【ア・テールでの意識】
 まずバレエで床に立つ時は、下左図の足裏の赤い点と足指の青い点で床を押して立っていることが理想です。
足裏3点(赤い点)で床を押し、足指を伸ばして床を押さえることによって、土踏まずのアーチが上に押し上がります。。


 ここで、足指を床から離さない為に、足の指の腹に画びょうが付いていると想像してみて下さい(下図)。“画びょう”ではなく“スパイクの刃”でも“けん山の針”でも構いません。そのびょうや針を床に垂直に差し込んで立っている感覚で、先へ伸ばした足指の腹で床を垂直に押して立ちます。びょうが床に刺さっているのですから、易々とは足指は床から離れません。上から押しているのですから離れようがないのです。またびょうは5本の指すべてに付いていますから、親指や小指だけが床から離れることもありません。但し、足指を強く押し過ぎると膝から下にある筋肉に過剰に力が入ってしまいますので、足指はほどほどの力で床を押して下さい。
指の腹のびょうは垂直に上から刺しているイメージが大切です!斜めに刺している感覚だと足指を縮めて使ってしまっているからです。足の指は必ず伸ばして使いましょう。


足指と足裏3点で床を押すことを利用して、土踏まずの真ん中(下図ピンクの丸)を“付け根ポイント”(座骨=ハムストリングの付け根)へ向かって引き上げます(下右図の赤い矢印)。



【ルルベでの意識】
 次にルルベで立った時のことを考えます。ルルベの時に床と接しているのは、下左図の足指と指の付け根の緑の部分です。この緑の部分を出来るだけ「垂直」に上から押して(下右図の緑の矢印)、土踏まずは“付け根ポイント”(座骨)に向かって引き上げます(下右図の青い矢印)。
足指は5本すべてで床を押せることが理想ですが、小指が床につきずらい方も多いですので床から小指が浮いていても大丈夫です。床に付いている指でしっかりと押して下さい。

しかし、これではまだ踵が不安定で足首から下がグラつきます。このグラつきを押さえる為に、まず踵を正面に向かって押し出してアンドゥオールを促します。そして、ハイヒールを履いているように踵の下に高いヒールが付いていると想像して、踵でヒールを上から垂直に軽く押して下さい。踵を押す事により土踏まずが甲側へ押し出され、これで足首から下はより安定するはずです。更に感覚の解っている人は、足裏3点の収縮で土踏まずを甲側へ押し出してみて下さい。

この感覚は片脚で立った時でも両脚で立った時でも同じです。たとえ2番ルルベで立っていても、踵を上から垂直に押す感覚、踵を前に出す感覚を忘れないで下さい。
お尻の筋肉は強く締めないように!締める(閉じる、引上げる)のはお尻下の“付け根ポイント”(座骨)です。

まとめると、
  1. 伸ばした足指の腹には画びょうが付いていて、びょうは床に垂直に差し込む。
  2. 足裏3点を使って上げた土踏まずは“付け根ポイント”に向かって引き上げる。
  3. ルルベの時には足指に加えて指の付け根にも画びょうを付け、同じく垂直に差し込む。
  4. ルルベの時には踵を前へ出し、更に踵下に高いヒールが付いていると想像してヒールを上から垂直に軽く押す。
以上で安定した「足」を得ることが出来ます。
足指には本当に様々な役割があり、足指を最大限に利用できるようにすることが上達へ近道です。足指の神経をドンドン!発達させましょう。

(※ ここでご紹介した使い方は一例に過ぎません。意識の仕方は人によりそれぞれです。自分の足について深く探求して使い易い安定した足を手に入れて下さい。
また、足首や足指の関節が硬く、足が床に対して上図のような垂直にはならない方も多くいらっしゃいますが、自分の可能な範囲で身体を使い切ることが大切です。「踊り」は身体全体で表現するもので、足で全てが決まる訳ではありません。自分なりの使い方を研究して下さい。足首が伸びなくてもきれいに踊る方は沢山いらっしゃいますよ。)


<余談>
 「ア・テールの時に重心や芯を足裏のどの位置の上に置くか」という意識は、以前は「爪先や指の付け根の上」と言われて来ました。しかし現在では、「踵の前寄り(踵と土踏まずの間)」(下図ピンクの丸)であるという説が定説になっています。この位置に重心を置くと脚の骨を床に対して垂直に置くことが出来、骨が垂直になるということは体重を骨で支える事が出来るので、少ない筋力で身体を安定させることが出来ます。ア・テールからルルベへ移動する場合は、その重心を指先へ移動させて爪先立ちになります。
重心を移動させると同時に、土踏まずも付け根ポイント(座骨)へ向けて更に引き上げて行くことで、力でコントロールされたルルベ・アップができるようになります (つまり“ゆっくり”としたルルベ・アップ&ダウンが出来るということです)。




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