【 美しい爪先 】 (2020.10.16 修正) 

この項は「足指は伸ばして使う」「甲は大人からでも変化する」の2つの項に関連する内容となります。
(※ この記述はかなり解り難い文章になってしまっているので、いづれ再編集の必要があると思っています。「フィッシュ」を作るにはその前に出来ていなくてはならない技術が沢山あり、1つの記事で説明するのはとても困難なのです。スミマセン(--;)。)

 前へ伸ばした足もそうですが、特に後ろへ美しく伸ばされた足の爪先は熟練したアンドゥオールから生み出される大変美しいラインを描きます。現代では“踵が爪先より前に出るライン”、“踵より爪先が上にあるライン”(「フィッシュ」)が好まれる様子で、よく若いジュニアや大人の初級者の方が鏡の前で研究されている姿を目にします。

あのラインは正しくターンアウトを追及して行けば、ある程度は自然に発生するラインですので特にその研究をする必要はないのですが、時々あのラインを欲するあまり間違った足の使い方をしてしまい脚の筋肉に悪い影響を及ぼしたりもしますので、ここで爪先の伸ばし方について“踵が爪先より前に出るライン”、"踵より爪先が上にあるライン"をどうやって作るか、その注意を書いて行きたいと思います。

ここではまず、デリエール、後ろへ脚を伸ばした時の“踵より爪先が上にあるライン”について考えてみましょう。


図(1)

【ターンアウトの意識】
 まずはごく簡単にターンアウトについて考えましょう。姿勢を正し、骨盤を立てて、お尻下の外旋六筋を寄せて集めるようにして太腿を外側へ回します(外旋します)。膝が限界まで外へ向いたら、次は踵を出来るだけ前に向けます(プリエをしたら膝と爪先の方向が一致する程度に)。
軸足の場合は足裏3点(親指&小指の指の付け根+踵)で床を押して土踏まずの真ん中を押し上げます。動脚の場合は、足裏3点を真ん中に寄せる感覚で土踏まずの真ん中を甲側へ押し出して、指先を伸ばし、更にその指先を床の中に長く差し込んで行くように意識します。

後ろから見たタンデュ(横)


【どうやってあの形を作るの?】
 足首から下の「足」の訓練の基本はやはり(バットマン・)タンデュです。前にタンデュを出す際、足裏で床を舐めながら、 ひたすら踵を先行させて、土踏まずの真ん中を上げて指先を伸ばして前タンデュを作ります。その結果の形が「フィッシュ」の形になっているはずなのです。どこまでも踵を先行させて、足首を伸ばすと同時に足を小指側へ少し傾けて(“外返し”)、あの形を作ります。デリエール(後)に出す場合は爪先を先導させて、最後に足首を伸ばすと同時に小指側へ足を少し傾けて“外返し”の形を作ります。

【小指を押す意識】
 足首を伸ばす際、ただ真っ直ぐに伸ばしただけだと“踵が爪先より前に出る”ラインは得られません(図(4)ピンクの線)。ターンアウトを行いながら、踵を前へ出し、踵の内側(あるいは土踏まず)から出て甲の上を斜めにカーブして小指を先へ伸ばす力(図(4)水色の線)を加えて初めてあのラインが造り出されるのです。つまり「ピンクの線の力を加えつつ水色の線の力で爪先を造る」ということです。水色の線の力はなるべく長く伸ばす意識で使って下さい。

図(4)

図(5)
甲を出すのは、足指をぎゅっと握る力ではなく、踵を遠くへ押す力(図(5)青い点線)&土踏まずを甲側へ押し出す力(図(5)赤い点線)&足指を伸ばして押す力(図(5))緑の点線)、これらの力で成り立っていなくてはなりません。これらを意識しつつ、図(4)の力を加えるのです。

・・・すさまじく面倒な使い方ですよね? でも大丈夫!これは結果的に分析するとこの様な説明になるだけで、使い方を習得してしまえば「甲を出しつつ踵を出す」意識でちゃんとあの形になりますので。動かすたびにそんな複雑な意識はしてられませんからね!

【足首を伸ばす意識】 (“下駄ばき”にしない)
 よく行われる間違いで、爪先を踵より上にする為に足首を少し曲げて爪先の形を造る方がいます。子供によくある間違いなのですが、足首は必ず伸ばし切って使わなくてはなりません。足首を緩めると脚全体の力が緩まるからです。これは足首が真っ直ぐにならない方でも同じです。足首は可能な限り先へ先へと伸ばします。但し、それは足首の関節を前へ押し出す力ではありません。 足首を直線的に先へ伸ばす事と、足首を前へ押し出して湾曲させる事は違うのです。

下の図を見て下さい。(よく見えない場合は画面を拡大して下さいね。)

図(6) ×

図(7) 〇

図(8) 〇

図(9) 〇
一番左の図(6)は足首の緩んでいる時の写真(児童)、他の(7)〜(9)はプロの大変美しく足首が伸び切っている写真です。角度の違いはありますが右の3枚はとてもしっかり足首が伸びているのが判ります。このように足首はしっかり伸ばして使うのです。

足首を緩めた足の使い方は「下駄履き」「逆カマ足」と呼ばれ、先生方からはとても嫌がられる使い方です。(足首を曲げているのでアラベスクを後ろから見ると下駄を履いているように見えるのです。)こんな足の使い方をしても「百害あって一利なし」です。

足首を伸ばし切ればターンアウトの助けにもなり、ふくらはぎ周辺の筋肉も締まって来ます。良い事づくめなのです!きちんと足首は伸ばしましょうね。それに、脚も腕もラインは真っ直ぐに伸ばした方が長く見えるものです。欧米人のように長くて真っ直ぐな手足なら良いのですが、短くて曲がりがちな手足を持つ日本人は「フィッシュ」などせず、真っ直ぐな足首でも美しいと私は思います。(最近の若い方は真っ直ぐで長い手足をお持ちですけれどね、羨ましい〜。)

この使い方は、前(ドゥ・バン)や横(アラスゴンド)に脚を出した時にも同じ使い方をします。
ページ先頭へ

【軸足の時の注意】
 さてもう一つ注意が必要なのは、軸足の足首の伸ばし方についての注意です。
タンジュやデガジェ、アラベスク等で脚が動脚になっている側の足首は先程のラインが美しいですが、軸足とした場合はこの使い方をしてはいけません。
1本の軸足で立つ時は、足首は内側と外側のどちらにも屈曲せずにまっすぐなラインで体重を支えます。

図(10)

図(11)
図(10)はルルベをした時の図、図(11)はポアントで立った時の図です。水色の線のように足首のラインが直線になる使い方が正解です。1本の軸脚で立つ場合は、脚の芯のラインが床から垂直でなければバランスが取れません。バランスを取る時の理想は、爪先(プラットフォーム)の真上に足首、足首の真上に付け根ポイント(座骨)や丹田(下腹部の中心)が来ることです。
タンデュなどに足を差し出した瞬間はわずかに踵が爪先より前に出る傾向ですが、軸足に体重を乗せたら必ず足首は直線にして下さい。土踏まずをしっかりと上へ引き下れば真っ直ぐに立つ事が出来るはずです。

大変美しい軸足ですね!理想はこの形です。踊っていると中々この形にはならず、親指側に重心をおいて立ってしまいがちですが、この形を目指しましょう!


<エクササイズ>
 あまりこのエクササイズはお勧めしたくはないのですが、足首関節をやわらかくする為に行うエクササイズをご紹介します。やり過ぎないで下さいね。

 床に座り、脚を前へ出して長座や、ひし形の脚にします。脚をターンアウトさせて、長座の場合は両足の踵、ひし形の場合は爪先を合わせます。
踵の下に柔らかいタオル等を自分の好みの高さにして置き、足首を伸ばしながら爪先を床の方へ手や自分の力で押して行きます。 小指を押す意識も忘れないで下さい。
足首の柔軟性は伸ばし過ぎてもいけませんし、ターンアウトを伴わない足首の使い方も良くありません。
様々な注意をしてこのエクササイズを行って下さい。


<余談>
 ポアントやルルベでの立ち方を「内くるぶしの上に立つ」という考え方の人がいますが、私はこのような立ち方は親指側に負担を掛け、外反母趾を増長するだけだと思っています。ポアントやルルベで立つ時の重心(丹田)は必ず床と接触している指やプラットフォーム(爪先の平らな面)の真上に置く感覚で立ちましょう。物理的にも物体のバランスは重心が床からの垂線の上にあることで維持することが出来るからです。

 また、素晴らしく美しい足首で有名なパリ・オペラ座エトワールのイザベル・シアラヴォラさんの足首はすごい曲がり方をしていますが、あれは彼女特有の足首ですのであの足首を目指してレッスンをする事はおススメしません。実際にあのあの角度にまでなると通常人では足首の靭帯が伸びてしまう恐れがあります。ただでさえポアントを履く人は捻挫などで足首の靭帯が伸びがちですので、しっかりと土踏まずを引き上げて、足首に負担を掛けない立ち方を目指しましょう。

ページ先頭へ