【 足指は伸ばして使う 】 (2020.09.11 修正) 

 足の爪先を延ばす時、足の指をギュッと握ってしまってはいませんか?
子供の頃に先生から「爪先を伸ばしなさい!」と言われ、私は一生懸命ギュッと握って足首を伸ばしていました。しかしこれはバレエでは厳禁である!と知ったのはごく最近のことです。

足指を強く握るとふくらはぎや前腿の筋肉(大腿四頭筋)が反応して、大変たくましい太腿やふくらはぎが育ちます。

試しに床の上で脚を前へ伸ばして座り、足首を伸ばして足の指をギューっとどんどん強く握ってみて下さい。足首が伸びて、膝が伸びて、 前腿が硬くなって疲れていくのが解ります。この前腿が一旦育ちますと脚が太くなるばかりか、この筋肉ばかり使って内腿(裏腿)の筋肉が鍛えられなくなってしまうのです。前腿も裏腿もふくらはぎも、鍛えなければならない筋肉ですが、バランスよく鍛える事が大切です。

ではどうすれば良いのか?簡単に言うと足指は「伸ばして」使うのです。

爪先を伸ばした時の写真です。左の写真のように足指は握らずに伸ばして使います。



ア・テールの時は足指は適度に広げて指先へ向かって伸ばし、親指と小指の付け根+踵の3点(左図:赤い丸)で床を押し、土踏まずの真ん中を引き上げます。足裏の3点はできるだけ均等の力で床を押さなければなりません。踵は真上から押すのではなく土踏まず側から少し斜めに床へ突き刺す感覚で、足裏を吸盤のようにして使うのです。

(時々「足指をいっぱいに開いて」と指導される先生がいらっしゃいますが、あまり足指を常に広げ過ぎると足の甲が横に広がり横のアーチが失われる“開張足”になる危険性があります。足指は適度に広げて、力は指先へ向かって伸ばし、土踏まずをしっかり上げて立つことを意識して下さい。)

また、ポアント・シューズで立つ時も靴の中では決して指を握ってはいけません。ポアントで立つ時は、シューズのボックス(爪先の周り)と土踏まずで体重を支え、足指を床に向かって伸ばして立ちます。足指で床を押して立てる事が理想ですが、足指が靴の爪先平面部(プラットフォーム部分)に突き指状態で当たることは“潰れているポアント・シューズ”でない限りはありません。
(足指の力が十分に強くなれば指先で強く床を押すことも可能ですが、足指の力がまだ弱い=足指を強く伸ばして床を押せない 間はシューズ全体で床を押していれば指先で床を強く押せなくても大丈夫です。また、指の長さによっては詰め物で短い指の不足分を補ったりしましょう。 )

足指・足裏の使い方はとても難しい感覚ですが、足の指でも「指」ですので訓練によって発達させますと手のように細々と動き、感じる事が出来るようになって来ます。特に感覚が強くなるのは足指の腹と足裏3点の部分です。
「足の指の腹で床を舐めるように使え」と先生方はよく言われます。
脚が床から離れる時、足裏がどのように使われて、どのような形で床から離れたかによって、上げた脚の筋肉の使い方は変わります。足の裏をもっともっと感じてみて下さい。

「でもプロのダンサーの写真を見ると爪先もカーブを描いている」と思いますよね?
あの爪先カーブのコントロールは実は指関節ではなく、土踏まずや足の甲でコントロールされているのです。
ある先生は脚をつかんでターンアウトさせ、土踏まずに拳を当ててから、甲の部分に別の手を当てて足の指先に掛けて「こう押す!」と、まるで足裏でボールを包み込むように押して下さいました。土踏まずを甲側へ押すことによって足指を伸ばす、あるいは足裏3点を中央に寄せて甲を出し指はその延長線に向かって伸ばす、そんな感覚です!但し、足首裏側のアキレス腱は決して縮めてはいけません。縮めないで使うためには踵を遠くへ押してみて下さい。アキレス腱を縮めずに爪先を伸ばす(甲を出す)方法は大変難しいのでここでは記述しませんが、とても大切な技術だということを覚えていて下さい。




足指の腹はルルベの時、脚を上げる時、ジャンプの時に使う大切な部分です。ルルベでは下の左側の図の様に体重の多くを指の腹に掛け、指の腹と指の付け根で床を押しています。そして足裏3点を寄せるようにして甲を出し、更にそのまま土踏まずを上へ押し続ける。こうすることによってポワントで立っている時と同じような筋肉の使い方になります。

右側の図は足裏の図です。オレンジの部分は“ボール”と呼ばれ、バレエ以外のダンス等で回転や爪先立ちの時に重心の乗る部分ですが、バレエでのドュミ・ポアントは足指の腹指の付け根(緑の部分)に体重を乗せます。


脚を上げている間は足指を先へ先へと伸ばす事によって脚の重さを軽減させ、ジャンプでは最後の一押し!をこの指の腹が行い、それによってジャンプの高さ・距離、空中での足の形に大きな違いが出てきます。膨大な着地のエネルギーも、まず足指から受け取らなくてはなりません。
このように、足の指はとても重要なアイテムなのです。


【パラレル・カーフレイズ】 (2018/07/12 追記)
必ず鏡の前で行いましょう!できれば裸足で行うことをお勧めします。

姿勢を正し鏡に対して正面を向きます。最初は両手バーの状態でもかまいません。慣れてきたら片手バーの状態か、壁に手をつきながら行います。
  1. パラレルの状態で両脚を付けて下さい。膝は前から押し込まずに、膝の両側で膝のお皿(膝蓋骨)を引き上げるようにして膝裏が直線になるように立って下さい。
  2. 足指の第2指→足首の中心→膝の中心が、出来るだけ垂直な直線(青い線)を描くようにします。
  3. 重心は土踏まずの中心くらい。足指は伸ばして床に付け、親指と小指の付け根、踵(足裏3点)をしっかりと床に付けて下さい。
  4. 脚の付け根(座骨)を上へ引き上げながら、足裏3点で床を押し、そのまま真っ直ぐに土踏まずを上へ引き上げ(押し上げ)ます。踵が左右に大きく揺れないように上げ、一番高い位置まで爪先立ちします。踵は床から離れていても床に向かって押しつづけます。座骨はなるべく指の付け根の垂直上に乗せられるようにして下さい(出来なくても大丈夫です)。
  5. 次は、一番高い爪先立ちから、座骨は上へ引き上げながら、土踏まずをなるべく上げたままで、踵が左右に揺れないようにゆっくりと踵を床へ下します。この時も足指と足裏3点でしっかりと床を押して下さい。踵で床を押していても土踏まずは上げている感覚のままです。
  6. 以上の事を繰り返して行います。この動きが“踵を上げる”という動作の基本となります。しっかりとまずは両足で出来るようになりましょう。
両足で行った後は片足でも行います。バーや壁に手を当てて(壁の場合はできるだけ上げた脚側に壁があるように。片手バーの場合はどちら側でつかまっても構いません。)、両足の時と同じ感覚でゆっくりと座骨と土踏まずを上げてから踵を上げて行って下さい。片足で20回以上が目標です。
両足でも片足でも、骨盤が正しい角度と位置にあり、脚裏側(ハムストリング側)を意識して踵を上げるようにしましょう。脚の付け根(座骨)をしっかり引き上げながら行わないと脚が太くなりますのでご注意!

最終的にはターンアウトをして一番ポジションやクドゥピエの状態でも行いますが、ターンアウトで行う時はバー等にはつかまっていない“感覚”で行って下さい。すなわちクドゥピエで一番高いドゥミ・ポアントになった時には、足指や指の付け根の真上に座骨や下腹の丹田が来るライン(バランスがとれるライン)で行います。

 以上がバレエでのカーフレイズの基本です。ターンアウトでの踵上げに慣れてしまうとパラレルで行うことがとても難しかったりします。しかし、踵を揺らさず土踏まずを傾けずに真っ直ぐ上がる(足首がフラつかずに踵を上げる)ことがパラレルで出来なければ、ターンアウトでも正確に立つ事は出来ません。偏った悪い癖は一刻も早く修正してしまわないと故障の原因になります。ちゃんと出来るようになりましょうね。

※ 足指を鍛えるには平ゴムに指を引っ掛けて引っ張る訓練も有効ですが、一歩間違うと外腿を鍛えるので気をつけて下さい。 平ゴムの訓練は内腿の筋肉をきちんと感じることが出来るようになっている方にお奨めします。


<ジャンプでのひと押し!>
レッスンでのジャンプでは、最後にきちんと指で床を押して跳び、着地では指から降りる、この意識を徹底して下さい!但し移動するジャンプでは、着地の際の腰や重心が適切な位置にないまま爪先が床についてしまうと、爪先や指を床に打ち付けてしまうような危険な状態を生みますので、ジャンプは必ず真上から降りるという感覚を意識して訓練して下さい。

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時々、小指側を強く床に押すあまり土踏まずの内側が上がってしまったり、外反母趾の原因となるように足が親指側へ傾いてしまって土踏まずの内側が潰れてしまっている方がいらっしゃいます。これは大いなる誤りですので、すぐに直して下さい。土踏まずは常に足の両側面の真ん中近くを引き上げ(押し上げ)ます。もし既に足裏のアーチがくずれてしまっている方は、まずは非伸縮性のテープ等で痛くない程度に足の土踏まずを巻いて足の形を整えてから訓練をしてみて下さい。アーチが開いたままですと足裏3点に力が入り難くなります。


足指は身体の土台です。足指や足裏の使い方が動きの全てを支配するとも言えます。
足指や足裏の力をつける訓練は時間が掛りますが、しっかりとマスターして下さい。


<小股歩きのススメ!> (追記 2015.03.18)
 ダイエットや下半身の訓練などでは大股で歩くことをよく推奨されます。バレエにおいても脚の筋肉や下腹の筋肉を鍛えるために大股で歩くことは大変良い事です(自然と大股歩きになってしまう場合が多いですが)。
これに反して、小さい歩幅で小さく歩くこともまた足指の力を強化するにはとても良いエクササイズになります。小さい歩幅で歩くと、足指で地面を強く押し易くなり、指先で「床を蹴る」力を強化することが出来るのです。
もちろん、ダラダラと歩いては効果はありません。姿勢を正して目線を上げ、なるべく下腹の上に頭が来るように意識して、下腹(丹田)に軽く力を入れて、速い速度で歩きましょう。指先で地面や床を蹴る意識を大切にして下さい。
めざせ!ムチのような足の裏

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