[掲載日 2018/10/19]

 身体のひねりは植木鉢付きの焼き鳥


 バレエではポーズや動きの美しさ、表現を高める為に、下半身に対して上半身を“ひねる(ねじる)”事がよくあります。「ひねり」と言われてまず頭に浮かぶのは、第2アラベスクや、ドン・キなどのキャラクター色の強い踊りでしょうか?もちろんジゼル等、他の踊りでも身体をひねる動きは多く出て来ますが、同じ“ひねる”でも表現によって全く違う印象を作り出します。“ひねり”はバレエを美しく深く表現して魅せる為の必須のテクニックであることは間違いありませんね。


※ 画像を無断拝借の為、元のサイトのページへリンクしてあります、スミマセン。

 例えば、第2アラベスク、難しいですよね!第4も難しいのですが、私は第2の方が苦手です。先生からはいつも「ひねりが足りない!」と言われ、「もっと背中を見せて!」と言われますが、上半身を強く捻ると下半身が引きずられ、下半身を頑張ると上半身のひねりが足りなくなります。歳を取って身体の柔軟性が失われて来ると特に辛いです(T_T)。
(ちなみに、基本形の第2や第4アラベスクって、“ひねり”は加えません。両肩と両腰骨が身体の正面に向いているのが基本。それにエッセンスを加える為に“ひねり”加えるので、ひねっている印象が強いのですね。)

 身体のひねりにはコツがあって、更に美しく見せたいならば意識するパーツがあります。 私が身体をひねる時にイメージするのはいつも「植木鉢の付いた焼き鳥!」。この焼き鳥の意識について説明させて下さいね。

私のイメージはこんな感じ。

身体をひねる時は骨盤に対してやみくもに上半身をねじってみても安定したひねりを得ることは出来ません。何か物を捩じろうとする時には、力の基点となる“土台”と、形を維持する“支え”が必要だからです。


<まずはひねってみる>
 皆さん、まずは試しに鏡の前で第5番ポジションに立ち、上半身はリラックスさせて両脇を左右どちらかへひねってみて下さい。次に下腹の丹田(おへその少し下の奥)に力を入れて、体の芯を上へ伸ばしながら同じように両脇をひねってみて下さい。上半身をリラックスしている時よりも、丹田を基点に芯を上に伸ばした状態でひねった方がより力が入って大きくひねれる感覚を実感できますか?私がお伝えしたい事とはまさにその感覚なのです!

<各ポーズで分析してみる>


タンデュ、アチチュード、第2アラベスク を例に考えてみましょう。

まず共通して意識するのは、丹田(赤い丸)から上へ伸びる“芯”(赤い矢印)
この丹田を植木鉢、芯を焼き鳥の串だと考えて下さい。
焼き鳥と違ってダンサーのポーズは“芯”が直線とは限らず湾曲した線になることが多いのですが、(基本的には)意識の中では丹田からみぞおちまでは直線、胸から上が湾曲するイメージで“芯”を作ってみて下さい。

その芯に対して両脇を出来るだけ“水平”に廻します(青い矢印)。上半身をひねる時は「両肩をまわす」と指導する先生も多いですが、私の師匠達は「脇をまわす」と言います。肩や脇をひねる時は、前へ出す肩や脇を強く押しがちですが、それよりも後ろへ引く肩や脇を強く引いた方が楽にひねれるので試してみて下さい。

さてここで注意したいのは骨盤の向きなのですが、上半身を右へひねる時は対抗して骨盤は左へ、逆に上半身を左へひねる時は骨盤を右へひねりがちです。特に第2アラベスク等で後ろ足を遠くへ引っ張る必要がある時などは上げた脚側の骨盤を後ろへ強く引き気味です。しかし、骨盤(=丹田)は植木鉢である土台ですので「出来るだけ」どちらの方向にも向けてはいけません。つまり骨盤は両側に引っ張って身体の正面に向ける意識が骨盤を安定させる大切な要素なのです。

しかし現実的には後ろへ脚を高く上げる場合はどうしても骨盤は前傾して上げた脚の方へ回転します。その為出来るだけ脚に骨盤が引きずられないように軸脚側の骨盤を前へ向ける意識が必要となって来ます。コツとしては「骨盤は両側へ真横に引っ張り、両脚は大腿骨(腿)から外旋させる」という意識で行うとターンアウトが上手く行きます。(骨盤は真横に引っ張っても、座骨(付け根ポイント)は中央へ寄せていなくてはダメですよ。)
それもこれも、下腹筋がしっかり使えて丹田が安定しているからこそ可能となるのです!

<プラス・アルファ>
更に注意したいポイントを書き加えておきますが、

 まず左図のタンデュ・デリエールでは両肩が軸脚側に傾いているように見えます。このように肩を傾ける場合は、脇まではしっかり両脇を立てておく必要があります。基本としては脇より上の部分を傾けるのです。傾ける側が潰れないようにしっかり傾ける側の脇を上へ引き上げましょう(ピンクの矢印)

 真ん中のアチチュードではついお腹から上半身をひねるたくなるのですが、それでは美しいポーズとなりません。肋骨の下側まではしっかりと前を向けるイメージで、「脇は前へ肩は後ろへ」の法則を実践してみ下さい。
また、(メソッドのスタイルにも寄るのですが、)アチチュードの後ろ足を軸脚側へひねり過ぎる人がいます。ひねり過ぎると骨盤がつられて安定しないので、初級者の基本としては、上げた足が背中の真ん中に位置するようにアチチュードを上げて下さい。

 右図の第2アラベスクでは、両腕を出来るだけ遠くへ引っ張って腕を長く見せましょう。両腕を引っ張る事によって更なる安定が得られるはずです。

先程、私の師匠達は肩ではなく脇をまわせ、と指導されるというお話をしましたが、これには訳があります。“肩はまわした脇に上からふわりと掛ける感覚で使う”からです。別の先生からは「肩は肩甲骨の上に掛けて下さい。但し、肩甲骨を前へ押してはいけません。」と指導されました。この使い方は体幹が安定して肩を柔らかく動かせないと中々美しく出来ない使い方です。
肩に関連した内容で「肩を下げる、ということ」「肩甲骨は下を引っ張ってキープ」という記事がありますので、合わせて参考にしてみて下さい。

<首の角度は自然に決まる>
 最後に首についてのお話です。よくバレエ初級者さんから「バレエの首の角度って難しい。きれいに決まらない。」という悩みを聞きます。そう!バレエの一番難しい部分が正しいポーズに加えられるエッセンスの部分。首の角度はそれに含まれるのでとても難しいパーツなのです。鏡の前で先生の真似をしてみても中々同じになりませんよね?

首の角度は表現したい形や気持ちに従って変化しますので、文章で指導することはできません。ただ、今ここで私が出来るアドバイスとしては、「ひねる時の首の角度は肩や脇を廻すことで自然と決まって来る」ということです。

 先程と同じように鏡の前で第5ポジションで立ってみて下さい。首は垂直を守って、両腕を前後に伸ばし上半身をひねるポーズを取ってみて下さい。肩や脇を限界まで回すとストップが掛かると思うのですが、ここで首を前に出した肩側に少しだけ傾けてみて下さい。更にひねれるようになったと思いませんか?そして少しだけ胸と一緒に顔も上に向けてみましょう。その角度が基本の首の角度になります。つまり、“ひねりの時の首は、肩や脇が回されることによってより回し易いように必要な角度だけ傾く”ということです。
慣れてしまうと自然な事なのですが、どうも、首を先に傾けてしまったり、傾け過ぎてしまったり、傾け無さ過ぎてしまったり、首の後ろを縮めてしまったりと、慣れない内は色々と失敗するようです。


 さて、“ひねり”について色々と述べて参りましたが、ひねりの意識が“植木鉢付きの焼き鳥”のイメージだという私めのニュアンスは上手く伝わりましたでしょうか? まずは鏡の前で研究をしてみて下さい。美しいポーズは強い筋肉と豊かな感性が作ります。更なる美の追求に勤しんで下さりませ。Let's get it!

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