【 肩を下げるということ 】
(2020.08.17 修正)
「肩を下げて!」、先生方によく言われる言葉です。
私達は何か力を入れて動作を行う際によく肩に力を入れて行いがちです。
しかしバレエでは、肩を上げていては正確に立つ事すら出来ません。バレエで上に上げたい筋肉は背骨周りの筋肉や、おヘソより下の腸腰筋などであって、肩を上げてしまうとそれらの筋肉は十分に機能しない状態になって
しまうからです。もちろん!見た目に悪いことは言うまでもありません。
「肩を下げて」と言われて、肩を上から押さえるように下げてしまうのは良くないやり方です。
この下げ方をすると、背中にある肩甲骨の下を前へ押し出してしまい、横隔膜が開いてしまうクセが付きやすいからです。
まずは肩と背中の構造を図で見てみましょう。
図1.<背中の肩甲骨>
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図2.<肩甲骨のポケット>
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図1.は肩甲骨の図です。肩甲骨というのは肋骨等の他の骨と接着しておらず、常に“浮いて”いるような状態であるので、上半身で一番自由に動かせる部分です。腕をコントロールする意識はすべてこの肩甲骨、あるいは背中の中心から始まります。
肩甲骨は軽く下げておくのが基本ですが、コツとしては
「背中のポケットにしまう感覚」
で意識すると便利です。
まず肩甲骨の置き場所
(プレイスメント)ですが、肋骨と肩甲骨の間には
薄い板(図2の灰色の四角い部分)が1枚あると思って(実際にはないです)、
その板に肩甲骨を
“引っ掛けて下げている”感じで置いてみて下さい。
灰色の板は上へ向かおうとしますが、
肩甲骨は逆に軽く下へ下げる感じです。左右の肩甲骨の間は広く余裕をもって保ちますが、
肩甲骨同士を結んだ直線が前や後に湾曲してはいけません。(肩甲骨が蝶の羽根のように後ろへ飛び出さない。)
時々、肩甲骨を灰色の板にめり込む様に前へ押してしまう人がいますが、これは誤りで
肩甲骨はあくまでも垂直に下へ降ろします。
イメージとしては例えば、図2のように灰色の板には
ポケットが付いていると仮定して、
そのポケットの中に肩甲骨をしまいます。
そして(踊りの表現などの特別な必要が無い限りは)バレエのどの動きの時も
出来るだけその
ポケットから肩甲骨を出さないように意識して下さい。
何も意識しないで腕を上げると、自然と肩が上がり肩甲骨も傾いて上へ上がります。
ここで肩が上がらないようにする為には、
肩甲骨をポケットから出ないように意識して腕を上げます。
但し、肩甲骨をあまり強く下に引くと関節が固まってしまいますので、力を入れ過ぎてはいけません。
ポケットから出さない意識は必要ですが、肩甲骨自体はポケットの中で自由に動かせなければ
柔らかな動きができません。
アン・オーとは、腕をひねりながら肘と肩甲骨を引っ張りあって造る、
とても大変な形なのです。美しいアン・オーは上腕と肩甲骨の間の十分なストレッチの上に成り立ちます。
図3.<背中の筋肉>
さて
「肩甲骨は下げているのに肩が上がっていると注意される」という方がいらっしゃるかも知れません。私も長年これで苦しみました。
これは図3にあります
”僧帽筋:ソウボウキン”(ピンクの部分)が緊張して上へ上がっている為、
肩甲骨が下がるのを邪魔してしまっている現象です。“僧帽筋”は首や肩を支えるとても強い筋肉ですが、
上位部分がすぐに緊張して肩凝り等を発生させてしまう厄介者でもあります。オフィスワークや力仕事が多い方は
、この“僧帽筋”がバレエにとってはよくない状態の方が多くいらっしゃいます。また、下を向いて歩くクセの
ある方も背中が曲がり僧帽筋が上がる傾向があります。普段から姿勢良く正面を向いて歩くよう心がけましょう!
まずは、図3の赤い
●部分を下へゆったりと降ろして下さい。
そして
鎖骨も降ろします。そうすれば肩甲骨はきちんと下へ降りるはずです。
肩は肩甲骨と僧帽筋で下ろすということをよく覚えていて下さい。そして、
下ろしている肩甲骨が上がらないようにキープする意識もとても大切です。
「足の運びが忙しくてそれどころじゃない!」という方は、とりあえず
“肩甲骨と僧帽筋は下の部分を下へ「軽く」引っ張り続ける(下ろし続ける)”とだけ意識してみて下さい。
肩が上がっていると首が伸びないため、よく「カメさん!」と子供の頃に言われました。バレリーナの首って
とても長くかんじますよね?しかし骨格的な長さは一般人と全く変わらないそうです。ようは僧帽筋がスッキリ
降りて首の後ろ側のラインがまっすぐ伸びていること!これが首が「カメ」から「ツル」へ変身するコツなのです。