[掲載日 2017/09/15]

 肩甲骨は下を引っ張ってキープ


 “「肩をさげる」ということ”、という記事で、「肩を下げるには僧帽筋と肩甲骨を垂直に下げる」という主旨の内容を記述しました。肩甲骨は下図のように、背中にポケットがあるように想像して、その中に肩甲骨を収めて自由に動かし、ポケットからは出さないようにする、そんな意識で保つと上手に肩を下げていられると思ったのですが、それでも肩が上がってしまうという方が多々いらっしゃるようです。このような方はおそらく背中のポケット自体が上部に上がってしまって肩甲骨が上がってしまっているのだと思います。
 

肩の上がり方は人それぞれです。「バーの時には下がっているのに」「プレパレーションの時には下がっているのに」「鏡を見ている時は下がっているのに」、一旦動き出して他に意識が移ってしまうと無意識に上がってしまって、先生から「肩を下げて!」と叫ばれてしまう、そんな現象は皆さん経験があるのではないでしょうか?

以前の記事では“肩を上げてしまうと、背骨周りのインナーマッスルや下腹の腸腰筋等が充分に機能しなくなる”という書き方をしましたが、それが原因で、「肩が上がっているから必要な筋肉が育たない」→「必要な筋肉が育ってない(弱い)から肩が上がってしまう」魔の悪循環に陥ってしまっているのです。ですので肩を下げる事は“骨盤を傾けない”事の次くらいに大切な大切な意識だと思うのです。(脚を高く上げる時は骨盤は傾けますよ。)

 誰しも鏡を見てスタンバイしている時はきちんと肩は下げているはずです。(ここで肩が上がってしまっている人の問題は、テクニック以前に「正しい形を知らない」という知識の不足です。このような方はプロの方が演技しているレッスンビデオ等を沢山観たりして、立ち姿のイメージを目に刻み込まなくてはなりません。鏡はぼーっと見ている物ではなくて、常に自分をチェックする為にあるのです。)動き始めると肩が上がってしまう=肩甲骨が上がってしまうのは、僧帽筋や肩甲骨等から意識が離れてしまう事が原因のようです。

それでは意識の続きやすい感覚をひとつご紹介します。それは「肩甲骨は下側を下へ引っ張ってキープする」という意識です。


ここで少し肩甲骨のおさらいをしましょう。下の図を見て下さい。


 肩甲骨という骨は、背中の肋骨の上に乗っている、あるいは浮いているように配置されています。関節や他の骨と結合していない為、とても自由に動きます。そして腕を上げたり、背中を丸めると、この肩甲骨は上に上がってきます。この肩甲骨に大きく影響を及ぼすのが“僧帽筋”(上右図:ピンクの部分)という背中の上部についている筋肉です。この筋肉の上部が緊張していると肩甲骨も上がってしまいます。その為私はやたらと「僧帽筋を下げて!」と繰り返し記述しているのです。

 肩を下げておく意識の主なものとしては下記のようなものがあります。
・肩甲骨を下げる
・僧帽筋を下げる
・鎖骨を下げる

どれもとても良い意識の仕方なのですが、私の意識としては「肩甲骨を(垂直に)下げる事で背骨あるいは芯を(垂直に)上げる」という感覚がとても大事なので、中心に近い僧帽筋を下げる意識を強く持っています。しかし「肩甲骨の下側を下へ引っ張ってキープ」という意識の方が長続きする方もいらっしゃるかもしれません。その方が“胸を広く使う”(胸筋を横へ引き合う)意識にもつながる気もします。

 ここで、“引っ張る”と書いてあっても強く引っ張ってはいけませんよ。下の図のように、腕を高く上げると肩甲骨は大きく傾きます。強く引っ張り過ぎて肩甲骨の傾きの邪魔をしてはならないからです。この動きの悪い方は優雅に腕を使う事ができません。

更に、“傾いたとしても低い位置に留め置く”、この意識もとても大切なのです。この使い方が出来ないとアン・オー等の腕を高く上げた時に肩が上がってしまう結果になってしまうのです。

ところで、通常では肩甲骨は2枚を横に並べて垂直に立てておきます。羽根のようにハの字に縮めたり、背中を丸めた逆ハの字のように弛め過ぎてもいけません。時々、肩甲骨周りの筋肉が凝って硬くなってしまい、肩甲骨がこれらのようなハの字になってしまっている方がいます。このように自分の肩甲骨の動きが悪い、あるいは動きが疲れているなぁ、と思ったら、治療院へ行ったり、マッサージボールやスーパーボール等を使って床の上で肩甲骨周りの筋肉をゴリゴリと軽くほぐしてみて下さい(素人は強く長くはやらないこと。ゴルフボールのように硬い物はお勧めしません。テニスボールやラクロスボールくらいの硬さが理想)。

「肩甲骨の下側を下へ引っ張りながら、自在に腕を大きく動かす!」こんな意識で練習してみて下さい。美しい背中を手に入れしょう!


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