先頭に戻る
掲載日:2020/11/23
■ 足指、甲、踵、足首、・・・黒幕は土踏まず? <2>

  (※ この記事は「足指、甲、踵、足首、・・・黒幕は土踏まず?<1>」の続きです)

 前回の「足指、甲、踵、足首、・・・黒幕は土踏まず? <1>」の記事では、ア・テール→ルルベ(ドゥミ・ポアント)、ルルベ→ポアント立ちへと動く際、足裏と足指をどのように使うと良いかを説明しました。今回は、足首と足指を伸ばした時(=爪先を伸ばした時)の足裏の使い方について考えて行きたいと思っています。

<爪先を伸ばすまでの過程>

「足首と足指が伸ばされた状態の足は、足裏や足指の動作の“結果”である」
 まず、覚えていて欲しいことは、足首と足指が伸びた状態の足とは、ア・テールから足裏や足指の腹を床の上で滑らせタンデュを通って動かした結果、あるいはア・テールから爪先をくるぶしの方へ引き寄せてクドゥピエを作った結果、または足指の腹で床を蹴った結果、作られている足の状態だということです。ア・テールから突然あの形にはならないの。ちゃんと途中の形を経過してあの形になっているんです。

伸ばした足指の腹で床を舐めるように滑らせて爪先を伸ばすから指が縮まらないし、伸びた足指の腹で床を蹴ってクドゥピエやルティレを作るから足指が伸びている状態がそのままキープされます。

ですのでね、バレエでは何事も「経過」あるいは「通過」の動作がとってもとっても大切だという事です。


タンデュでもクドゥピエでも、基本的な足の意識は一緒です。土踏まずのテント(<1>の記事に記載)を作ったア・テールの状態から、踵を前に出しつつ、テントを保ちながら足裏3点や足指の腹で床を舐めるように滑らせて足の形を作る、あるいは指の腹で床を小さく蹴って指先を伸ばして足の形を作ります。


<伸ばした時の足の形>

「ア・テールでの使い方」
 <1>の記事を復習しますが、ア・テールの時は足裏3点で床を押して土踏まずのテントを作って足指は伸ばす、ルルベになるには重心を爪先の方へ移動させながら(座骨を上へ押し上げながら)引き続き足裏3点でテントをキープして(=踵が床から離れても踵はヒールを押すように床を押す感覚を保つ) テントの中心を上へ引き上げながらルルベの形を作り、足指・指の付け根(MP関節)・土踏まずのテントで体重を支えます。

「足が床から離れた時の使い方」
 上記のように、ア・テールでは足裏3点で床を押す事で土踏まずのテントを作りましたが、足が床から離れた後は床がありません。床がなくても押している感覚を持続させなくてはならないのですが、空中で足裏3点を押す事が難しい方は、「足裏3点を真ん中へ集めるように」あるいは「テントの真ん中を甲側へ押し出すように」して土踏まずのテントを作ってみて下さい。但し、踵はヒールを押すように足先に向って押しますので、アキレス腱は縮まりません。踵を引いてアキレス腱を縮めない様に注意して下さい。
指先は先へ先へと伸ばします。


「足のライン」
<1>の記事では軸足にした時の足のラインの理想は、爪先から足首までが床から垂直線上にあるライン、つまり爪先から足首までが一直線になるラインが理想であると書きました。足指を握ってしまったり、足首を押し出してしまってはいけません。


ただ、現実を言うと、写真のように甲が盛り上がる足の場合は爪先から足首までが一直線のラインでも美しいのですが、甲のあまり出ない足の場合は、軸足ではなく動足として使った時の足のラインは爪先をもう少し湾曲させた方がきれいに見えます。

爪先を湾曲させる時は、足首は直線のまま甲より先の部分を先へ伸ばしながら湾曲させるイメージで足を伸ばします。
下図はかなり極端な例ですが、足の伸ばし方としては下記の写真のラインをイメージして下さい。軸足として使う場合は左の赤いライン、動足として爪先を湾曲させたい時は右の青ラインのイメージで足を伸ばします。

但し!ですね、軸足と動足で使い方が変わるのでかなりの熟練度が必要となりますよ。ここまで意識すると少々マニアックな領域にまで行ってしまいそうなので、大人素人の私達は「爪先から足首までを一直線上になるように指先を伸ばす」で良いと思います。足の形は持って生まれた個人差が大きく影響しますし、筋力がないままストレッチだけしても怪我の元を作っているようなもの。それよりも意識しなければならないもっと大切なことがバレエでは沢山ありますので。


<フィッシュの形>

「偽物フィッシュにならないように!」
 アラベスクやタンデュ・デリエールなどでよく見る下記の写真のような足先、爪先より踵が前に出ているような足のラインを「フィッシュ」と呼びます。(私も最近になって“フィッシュ”と呼ぶことを知りました。バレエでは昔からある形ですが昔は呼び名はあまり耳にしなかったんですヨ。)

私はまずは児童や初級者さんにはフィッシュは不要と考えておりますが(その段階では百害あって一利なし)、やはり憧れのラインらしく鏡の前で練習している姿も見かけたりします。フィッシュは足首の柔軟性や足裏の使い方も含めてかなり高度なテクニックなので、間違ったやり方をすると“下駄履き”や“逆カマ足”と呼ばれる形を作ったりしてしまいます。ですので知識だけはここで説明しておこうと思いますので、間違ったやり方を覚えないようにして下さいね!

フィッシュを間違わないようにするには、とにもかくにも「足首をきちんと直線に伸ばして行うこと」この一言に尽きます。フィッシュは足を小指側に傾けて尚かつ踵を前に出して足を捩じるようにして実現させます。足首を曲げるとこの小指側へ傾けるようなラインが出易くなるので、いわゆる“下駄履き”と呼ばれる「足首を曲げて足を小指側に傾ける間違い」を犯し易くなるのです。(後ろから見ると下駄を履いたような足に見えるから“下駄履き”)

「フィッシュの訓練の基本はターンアウトとタンデュ」
 フィッシュはデリエール(後)に足を上げる時だけではなく、ドゥバン(前)の時もアラスゴンンド(横)の時も必要です。(アラスゴンドの時はタンデュの時よりも足を高く上げた時に必要。) 但し、きちんと膝が横に回されてターンアウトをしっかり行わないと、いくら足先だけをフィッシュにしてもきれいなラインには見えません。 まずはしっかりと膝を横に向けましょう!

膝を限界までターンアウトした状態から、ドゥバン(前)に足を出す時は踵が優先、デリエール(後)に出す時は爪先が優先、アラスゴンド(横)に出す時あるいはクドゥピエにする時も踵を前に押し出しながら行います。この時も足裏のテントをしっかり作り足指も先へ先へと伸ばします。足裏のテントが作れないと甲もきれいに出て来ませんし、足首を直線以上に押し出し過ぎると逆に甲は盛り上がり難くなります。

5番ポジションから上記の要領でタンデュを行うことがフィッシュの足を作る訓練となります。つまり、しっかりとバレエのレッスンをしていれば、おのずとフィッシュの足は作られて行くのです!

「ポアントで立つ時のフィッシュ」
 このフィッシュの足の使い方はポアントでドゥバン(前)にピケ立ちをする時にも必要となります。

足首を少し傾けて踵を押し出しながらピケ立ちする(赤い線)方が、足首を直線にしてピケ立ちする(青い線)よりも、靴先の面(プラットフォーム)がより床に立ち易い角度になってくれますので立つ時に安定度が増してくれるのです。

但し、デリエールの時は逆にプラットフォームの角度がより立ちづらい角度になりますので、デリエールにピケ立ちする時は少しだけ上から靴に跳び乗るような意識(ホントに跳んではいけませんよ)で一気に高い位置まで身体を持って行きます。
アラスゴンドの時はフィッシュの足にピケ立ちするより足首を直線にして出した足の上に立った方が安定しますので、横にピケ立ちする時は(踵は前へ出しますが)フィッシュをして立つ事は避けた方が良いと思います。(悪い癖が付きやすいです)

タンデュでフィッシュの形で足を出したとしても、その出した足に乗ってピケ立ちをした時には足首は真っ直ぐで立たなくてはなりません。軸足となっている時の足首は曲がっていてはいけないのです。必ず真っ直ぐの足首で立ちましょう!
下記の図は水色のラインが正解で、ピンクのラインは誤りです。


<余談>「ラップ・ポジションについて一言」
 クドゥピエの形を作る時に、動足の足裏で軸足の足首を巻き込むような形があります。

「ラップ・ポジション」と呼ぶクドゥピエでの形の1つで、美しくバッチュをしたり、クドゥピエを美しく見せる為に必要とされる形ではありますが、これこそかなりの膝のターンアウトと足首の柔軟性を必要とします。これを形づくる為に少し足首を緩めたりするダンサーもいるくらいです(足首は伸ばさなきゃダメ)。上級者には身に付けるべきラインだとは思いますが、私達には不要だと私は考えています。

時々、まだ足首を伸ばし切れないような初級者さんにもレッスンでこのラップの形を要求される先生がいらっしゃいますが、先生にはそれなりのお考えがあるにしろ、それよりもお尻の外旋筋で膝を開く方が先ですし、足首を直線まで伸ばす事の方が先!
ラップよりも通常の爪先を足首につけるクドゥピエの練習をしっかりして下さい。



<プリエやジャンプの時の足の裏>

 ここまで「ア・テールでも爪先を伸ばした時でも足裏のテントをしっかり作れ」と書いてきました。しかし、プリエをする時やジャンプの踏切りや着地の時など、テントを作る力を緩める必要がある時が出て来ます。足裏に力が入り過ぎているとプリエが深く出来ませんし、ジャンプでも上手に跳べなくなってしまいます。難しいのはこの「テントを作る力のコントロールをしながら足や脚を動かす」という事です。とはいえ、足のアーチは生まれつき殆どの人が持っている構造で、ジャンプは子供の頃から自然と跳んでいますので、私達は本能でこの足裏のコントロールをしているはずなのです。

しかし、ア・テールでテントを作る事に夢中であったり、爪先から着地をする事に夢中であったりすると、足裏の力を抜くという事を忘れてしまうことがよくあります。足裏の力は動きに合わせて次第に抜いていくことが必要なのです。

プリエでは腰を落として行くのに合わせて次第に足裏の力を抜いて行きます。足裏を少しづつ広げて行くような感覚を試してみて下さい。

ジャンプでの足の使い方は、私の感覚では、床を蹴る時には足裏を鞭のようにしならせて最後に指先で床を蹴って、指先は先へ向けたまま伸ばし続けて跳んでいます。空中では爪先を伸ばしていますので足裏にも“そこそこ”力が入っています。着地をする時は指先から着地をして足指と足裏の力で柔らかく降りる意識をします。この時に上手に足裏の力が抜けないと怪我をしますので気をつけて下さい。(現実に私は着地の失敗でバキバキっと中足骨周辺を痛めました。気をつけてね (T_T)b )

<余談>「ジャンプの練習」
 余談ですが、私は子供の頃からジャンプだけは大得意で、かなり長く高く空中に居続けることが出来ました。ジャンプを高く跳べるようになる為には足腰のバネの力が必要なので、スクワットや空気椅子のような下半身を鍛える訓練が有効ですが、それだけでは上手く跳べるようにはなりません。ジャンプを上手にする為には深いプリエはむしろあまり必要なくて、空中で身体を上に引っ張る意識だとか、膝から下で床からの反発を上手に使うだとか、そんなコツの中に「上手に床を蹴る」という意識があります。“足裏を鞭のようにしならせて、指先で床を蹴って指先を伸ばし続ける”、そんな意識です。
その意識を磨く為にいつも行う練習があります。いわゆる“スキップ”の練習です。片足で床を蹴って前へ進むのですが、前へ進むよりも出来るだけ高く上へ上がるようにします。私は子供の頃からこの練習が大好きでした。年齢が上がってしまい以前のようには跳べなくなりましたが、それでもスタジオで自習をする際にはランニングなどのウォーミングアップの後に必ずこの練習を取り入れています。床を蹴る感覚を身に付けるには最適な訓練だと思います。よろしかったらお試しあれ!


 さて、2回に渡って「足の使い方」についての記述をして来ました。書きたいことを全て書けたわけではありませんが、主な注意については記述できたと思います。かなり細かい意識なので、身に付けるまでには長く時間が掛かると思いますし、これはあくまでも長年のレッスンから得た知識と私の感覚を元にした使い方です。この使い方を参考に自分の使い方を研究して頂けたらと思います。頑張りましょう! o(^^)o

「足の裏」はやっぱり奥が深い・・・。