中高年よ、両脚を張れ!


 年齢が上がると共に誠に残念ながら身体は柔軟性を失って行き、筋力も徐々に弱くなって行きます。同じアラベスクをしても、中高年になって無意識で上げた後ろ脚は、若い頃に上げていた高さまで実は上がっていないのです。この事実、結構自分では気づき難かったりします。先生に指摘されたり、鏡を見て気づいたりするまで、自分ではいつもの通りの高さで上げているつもりなのですから。そう、中高年で高い位置に脚を上げるには若い頃より強い力と意識が必要なのです。

「中高年になったら無理をしない」そう心に言い聞かせて、無理をしないレッスンをする日々。それは故障をしない為には大切な心がけなのですが、より速く筋力を失わせて行く呪文でもあるのです。自分の技術をなるべく維持するには、“少しだけの無理”は積極的にして欲しいと思います。この“少しだけ”が難しいところではあるのですが・・・、使わないでいると筋力はどんどん低下して行きます。ただでさえ加齢で落ちて行く筋力、例え浅ましかろうと往生際悪く努力だけは致しましょう!

もちろん形を崩してまで脚を高く上げる必要はありません。「低い位置のアラベスクでも美しいラインを追求する」、この心得は大切なこと。しかし脚の低い位置でのアラベスクはやはり重心も低く、例えばピケ・アラベスクから始まるアンシェヌマンでは、最初のピケ・アラベスクで高い重心を作ってしまった方が次に続くパが軽く行える利点があります。

とにかく、アラベスクでは頑張って“両脚を張って”下さい!






まず、アラベスクでは腸腰筋を高い位置で上へ上げて(赤い矢印)、両脚を張りながら後ろ脚を高く上げます。上げる高さに従って、骨盤は前へ少しスライドさせながら前傾させて行きます。

ここで後ろ脚を支えているのは脚の下側のライン(青い線)です。このラインで後ろ脚を支えながら、太腿で両脚を離して行きます。軸足は(ピケでもア・テールでも)しっかり床に突き刺しているのですが、同時に後ろ脚と張り合うように軸足の太腿の内側も前方へ張って下さい。この軸足の張りが足りない方がとても多いのです。若い頃は後脚だけの意識で脚は軽々と上がりました。今は「よいしょ!」と上げなければならないのですから、軸足もより強く意識して使わなくてはなりません。

一気に脚を上げた後は、脚の下側の青い線や、上げた踵の下に架空の板(黄緑の線)が出現したと想像して、その線や板の上に太腿や踵を乗せて置けば脚が下がり難くなります。


後ろ脚を高く上げるには骨盤の前傾が不可欠ですが、骨盤を前傾させてバランスを取るには柔軟な背中が必要となります。腰椎・胸椎とも長く伸ばして柔らかい曲線を描いて下さい。(ピンクの線)

横隔膜は開かないように!

年齢が上がると背中はどんどん硬くなって行きますから、背中のストレッチは時間を掛けて日々しっかり行って下さい!


背中の肩甲骨(青い矢印)と僧帽筋(紫の矢印)は下げて、その力を反動に背骨を天まで伸ばして下さい(赤い矢印)。
どちらも下腹の腸腰筋に力を入れて力の起点とします。


 脚を高く上げるには他にも骨盤を重ねる意識などが必要ですが、それらの意識は「・脚を高く上げる −準備−」「・脚を高く上げる −前後−」のページで説明をしていますので参照して下さい。

誰しもいくつになっても出来るだけ美しく踊りたいもの。退化を遅らせるものは意識と努力です!
中高年の皆様、悪あがきをしましょうよ!

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