【 甲は大人からでも変化する 】
(2020.10.15 修正)
バレリーナがポワントで立った時のあの
甲の美しさは、バレエを学ぶ全ての人の憧れだと思います。私はそれを「高い甲を持つ方の羨ましい特権」と思っていました。残念ながら甲の高さは生まれ持った骨の要素が大きいので、訓練によって甲低の足が甲高に変化することはありません。しかし、いくら甲高であっても他の条件が悪かったり、訓練の出来ていない足では、ポワントになった時にはあの美しいラインを作ることは出来ないのです。反対に、ア・テールの時にはさほど高く見えない甲が、ポワントの時には美しく弧を描く足になる方もいます。
実際には甲の高い人と低い人では骨の形自体が少々異なるので、甲の低い人がア・テールの状態で甲が高く見えることはありません。しかし爪先を伸ばした時やポワントで立った時、訓練されている足であれば甲はより美しくカーブを描くことが出来るのです。もちろん中には訓練をしなくても美しく弧を描ける足もあるでしょう。しかし甲が高くても低くても、
訓練の出来ていない甲と土踏まずでは何の意味もありません。
図1は足を横から見た図ですが、私は
“甲”とは図1の
緑の線(A辺り)
の部分だと思っていました。
図1
しかし実際には
ピンクの丸でおおわれている部分が、前に押し出されて、足全体で美しい、
“孤”を描くことになります。
足裏の筋力で土踏まずの真ん中の部分を甲側へ押し出すような、そんな感覚で甲を出し、
結果的に指先も先へ伸びて行きます。
図2
くるぶしより上の部分から甲が始まっている事に注意して下さい。これは甲の弧を描くのに足首の関節をも利用できる事を表しています。甲のストレッチをする際にはその事も頭において、足首関節のストレッチも含めて行わなくてはなりません。
(※ 甲を押し出す為に、足首の関節を「前に押し出すよう」に伸ばす必要はありません。)
足の甲は足指を伸ばして足全体で大きな弧を描いて作ります。
その弧を作る力は、
決して足首の関節を前へ前へと押し出そうとする力ではなく、
土踏まずを甲の側へ押し上げる力で作らなければなりません。足首関節ばかりに力を入れ過ぎてしまうと、カマ足を招いたり、外腿を太くしてしまう原因にもなり、また甲が押し出され難くなってしまいます。
下図は足裏の図ですが、
赤い丸はそれぞれ、“親指の付け根”、“小指の付け根”、“踵”の
足裏3点と呼ばれる非常に重要な部分です。この3点を真ん中
(緑の丸)に寄せるような意識で足裏の筋肉を収縮させます。しかし、まだその感覚がつかめない方は、取りあえず
“土踏まずの真ん中”(緑の丸)の部分を甲側へ押し出すようなイメージで力を入れてみて下さい。但し、足指を握ってしまってはこの点を押し出すことは出来なくなりますので、まずは
「足指の力は抜いて土踏まずの真ん中を甲側へ押し出す!」これを試してみて下さい。
更に、
ポワントで立っている時でも足指は先に向かって伸びていなければなりません。
時々、甲のストレッチばかりを気にする方がいらっしゃいますが、足指と土踏まずの訓練が出来ておらず甲の柔軟性ばかりを高めると、ポアントで立った時に安定性を欠いてしまい、捻挫や外反母趾などのアーチのくずれ等、弊害が多く発生します。
ストレッチと足裏の訓練はバランス良く行うことがとても重要なポイントです。
ポアントを履いた場合でも、まずは土踏まずは赤い円の球体に押されるように緑の矢印の方向へ押し続け、その結果として足指が青い矢印の方向へ伸びて行きます。
更に軸足となっている足の土踏まずは、オレンジの矢印のように
内腿の付け根ポイント(座骨)へ向かっても引き上げ(押し上げ)ます。
時々、足の前部分(図1の@とAの間)がとても柔らかく、足裏側に折れてしまいそうなくらいU字に曲がる足があります。この部分が折れてしまう人は、ポワントの時にその折れた部分に乗ってしまう間違いを犯す危険があります。(私の足はこの特徴を持っていて長い間その様な立ち方をした結果、腿の前側に太い筋肉(大腿四頭筋)がついてしまいました。)足指は縮めて使わず必ず伸ばして立ちましょう!
土踏まずの訓練はタンデュ等の一連のバーレッスンが一番効果があります!
よく伸ばした足指の腹で床を舐めながら、土踏まずの中心を甲側へ押すようにタンジュを作り、指の腹から足裏全体で床を舐めるように元に戻します。
更には動脚をアンドゥオールをする際に、脚の根本から爪先に向けて骨の周りを“ら旋”の力が働いて、最後は土踏まずから甲へ抜けて小指を押す所まで達する感覚で動かします。
最初は感覚として感じられなくてもイメージし続けるとその感覚を感じる事ができるようになります。
(※ 最近はあまり螺旋のイメージは使いません。お尻の下側(外旋筋)を集めて大腿を充分に回す(外旋させる)ことで膝を外へ向け、踵は前へ出すように、そして爪先は床の中に差し込んで行くような、そんなイメージの方が良い気がします。)
爪先を踵より上げて見せる為に足首を緩めてはいけません!
時々、アラベスク等できれいな脚のラインを見せる為に、わざと足首を緩めて爪先を踵より上げる方がいますが、これは
大きな間違いです。足首が緩むという事は脚全体の筋肉に緩みが生じ、またアラベスクを後から見たときには、足は下駄を履いたように見えてしまいます。爪先が踵より上に見せるテクニック(“フィッシュ”)は、正確な訓練の結果現れる現象であって、本来は訓練が不十分な素人がテクニックとしてむやみに行うものではないのです。しかし、もし舞台上で必要にせまられて爪先を踵より上げる意識を先生に要求された時には、必ず足首と足指は伸ばし切った上で、踵を前へ押し出す意識で行います。
きちんと正確にタンデュの訓練を行っていれば出来るようになるはずです。
足首は伸ばし切ったままで踵を前へ出します!
伸ばした時の甲の形は大人になってからも充分変化します!!
前述のような間違いを犯していた私も、意識する事で大分変化して来ました。
皆さんも諦めずに頑張りましょう!
(追記:足首が真っ直ぐにならない方へ)
時折「足首が真っ直ぐならない」「爪先が伸びない」という話を聞く事があります。
不安な方はまず膝を折って自分の手で足首が真っ直ぐになるかどうか押して確かめて下さい。真っ直ぐになれば問題はありません。膝を伸ばすと足首が曲がってしまうのは、腱や筋肉が硬かったり、筋肉が弱かったりするせいですので訓練によって伸びるようになります。
膝を折ったまま足を手で押しても足首が真っ直ぐにならない方は、骨に原因がある場合もあります。
下図はAの図が正常、B・Cの図は赤い丸 の中の骨が邪魔になり足首が伸びないケースです。プロのダンサーになるならば手術で取るという手段もありますが(手術も必ずしも良い結果ばかりではありません)、趣味の範囲では大抵は必要ないと言われます。しかし残念ながらポワントを長時間履き続けると様々な所に障害が発生したり、筋肉のバランスが狂ったりしますので注意が必要です。
趣味のバレエは「楽しむ事」が一番の目的ではないでしょうか?
完璧な条件の人はプロでもごく僅かです。自分の特徴を踏まえて無理せずバレエを楽しんで下さいね。三角骨を持っていてもきれいに踊る人は沢山います。