[掲載日 2017/05/01]

 わきをしめるってどういうこと?


「脇をしめなさい!」先生から言われてイマイチ感覚が実感出来なかったのがこの言葉。「脇をしめる」というコントロールは舞踊に限らずほぼ全てのスポーツや武道に共通して必要とされる意識です。

「脇をしめる」と何か良い事でもあるの? 当然あります!簡単に言うと、脇をしめると体幹と言われる部分が無駄に動かなくなり重心が安定するのです。なのでバランスも取り易くなるし、回転も安定します。

では、脇ってどうやって締めるの?
既に筋肉がついて使い方を習得している先生方には、なぜ脇をしめられないのか?が分からないのだそうで、なんとか脇をしめられるように色々な方向からアプローチをさせています。

よく簡単な体操などで「肘を下げて脇をしめましょう!」と言いますよね?脇をしめる第一歩はまさにそこから!と私は思うのです。
理想はみぞおち前で作る正しいアンナヴァン、最終目標は両腕を上げたアンオーでもしめている感覚を得られることです。

バレエでの脇の使い方につながる「肘を押して脇をしめる」という感覚は、脇と二の腕の距離を近くすることではありません。肘をわずかに押す事で脇が上に上がる感覚を感じる事が脇使いのまず第一歩なの。 当然肩が上がっていては台無し!僧帽筋や肩甲骨の下側を下に下ろし、肩は下げておきましょう。

 ホイ!ここで一発、肘を身体の脇にくっ付けて身体の腋の下のラインを上に上げてみて下さい。上がった感覚を得られましたか?なんとなく二の腕も少し上がる感じですよね。肩が上がっていると脇は上がりませんので胸筋を横に張って肩は下げてね!

 次は肘を身体から離して脇の真横におき、肘を張ります。今度は二の腕の下(あるいは肘の下)に板があると思って二の腕で(肘で)板を上から押してみて下さい。二の腕で押して這い上がる様にね。先程より強く脇の下が上がりましたか?この感覚の時は両方の腋の下のラインが上がって更にお互いのラインが少し近づいた感じがしませんか?これで脇が上がったことになります。




 少しの間のバランスを取るくらいならこの感覚でもまあまあ止まれるようにはなります。でもこれではまだ回転する時には強度が足りない。
回転をする時には基本的には強い遠心力が働いて身体が外側へ引っ張られます。その力に対抗する為にみぞおちを閉じたり回転開始時に捻りを加えてみたりするのですが、脇のラインもそのひとつで、外側に引っ張られて身体がバラバラにならないように両脇のラインを寄せて閉じて回転します。

よくフィギュアスケートでは両腕を寄せ両肩を上げて身体を閉じて回転していますが、見た目重視のバレエでは肩を上げたり両腕を閉じたりは原則では出来ません。回転を水平に保つ為に胸筋も横に引っ張っていなくてはなりませんしね。
アン・ナヴァンはそんな脇の使い方を導いてくれる本当にすぐれた腕の形なのです!クラシックバレエってホントによく考えられています、歴史的知恵ですね〜。

 では回転に耐えるアン・ナヴァンを作ってみましょう! 詳細に説明するとアン・ナヴァンは下記の身体の使い方で作ります。しかし、これではややこしいし、ベテランには一瞬で作れても、これから身体を作る人には不向きな意識です。

<アン・ナヴァンの作り方>
※ 右側と左側はわざと異なる使い方で矢印を書いています。どちらでもかまいません。
 1 胸筋を両側へ張ります(紫)
 2 肩は外回し(赤)
 3 上腕は内回しと外回しの両方のやり方があります(青)
 4 肘は内回し、又は少し下に押しつつ横に張ります
 5 下腕は外回し(緑)
 6 脇の下のラインを上へ上げます

 

 上腕を内回しにするか、外回し&肘を張る、かは先生によって異なるようです。どちらでも脇のラインや背中の肩甲骨下のラインが使えれば良い事なのだと思います。上腕はそんなに強く意識が必要な部分でもありません。

<わかりやすいアン・ナヴァンの作り方>
大人初級者さんは下記のイメージでアン・ナヴァンを作ってみて下さい。
まず正しバレエ姿勢を作ります。 (背中の僧帽筋は下ろしてね!)
胸筋を横に引き、肩を赤い矢印のように少しだけ外へ回して下さい。(胃はみぞおちの中に仕舞って下さい)

その状態で左図のようなお盆や器(水色の線)を持つと想像して下さい。

肘は横に張った状態で両手で下側から赤い点線矢印のように器を支えて持って下さい。

お盆を上側から持つと脇の緊張は感じられませんが、下側から持つと脇の下に力が入いるはずです。更にとても重たいお盆だと思って、みぞおちを少しだけ手前側に引き両手に力を入れて支えてみて下さい。胸筋は横に引き続けて下さいね。みぞおちが閉じて脇が上がり、両脇がわずかに近づく感覚が感じられませんか?その感覚がバレエでの脇を締める感覚に近いです。
実際にはお盆は持っておりませんし、腕の形も美しくしなくてはなりません。また重いお盆を持つように力んでも美しい見た目にはなりませんので注意して下さいね。

 筋肉は身につけるまでは意識して力まないと育ちませんが、一旦身に付いて使い方をマスターした後は力一杯力まなくても身体を支えていられるようになります。8割の力で身体を支える、これがバレエでの力の出し方です。本当は力まない程度の力で何度も繰り返し練習した方が良い筋肉の作り方になるのですが、大人は毎日レッスン出来る訳ではないので時に初級者さんが力むのは仕方ないと思っています。しかし長時間力むと筋肉は無駄に太くなりますから気をつけて!


上手に使うことが出来るようになると左図の赤丸のように背中の肩甲骨周りにくぼみやエクボなどが出来て来ます。


 さて、この「脇をしめる」という使い方の効果はありとあらゆる時に発揮されます。回転時はもちろんのこと、バランスを取る時、アレグロで速く動く時、更にはパートナーに支えられて踊る時など、とても力強い味方となります。

但し、先に述べたように力み過ぎて固めてもいけませんし、アロンジェなど脇を使いながらも少し緩めて胸や腕をオープンにするテクニックも必要となります。

<おまけ>
 脇をしめる感覚が身に付いたら、今度はその上げる脇のラインを左図のように脇から骨盤下までの長さで感じてみて下さい。そして矢印のようにライン一番下のポイントを真上に、脇を上げることと一緒に上げてみて下さい。まるで両脇2本のラインで、ゲームのUFOキャッチャーみたいに骨盤を挟み上げる感じです。
この意識で身体で一番重い骨盤部分を上に上げる手助けになり、また横ブレを防いでくれます。
但し、この意識も強過ぎず八分目の感覚で。



“脇をしめる”感覚、なんとなく感じられるようになりましたか?基本的には脇はしめ続けていますので、脇の筋肉だけで身体を支えるのは大変です。肩甲骨下のラインなど、背筋も上手に使って疲れない身体の使い方を身に付けましょう!但し土台となる下腹筋が緩んでいると脇も使えませんので下腹も忘れずに!

ピルエット等で両脇がしっかり立つ感覚が得られたら、そして更にみぞおちを両脇で閉める感覚が得られたら、それが「脇をしめる」感覚です。あとはその感覚を自分で育てて研ぎ澄ませて行って下さい。


ガンバ!! o(^O^)o


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