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掲載日:2017/8/9
■ 怠け者でも筋トレはできる!

<やっぱり不足してしまうバレエ筋>
 バレエのパで失敗する時、その原因の半分は筋力不足にあります。脚を上げる時も回転をする時も、そして上半身の美しい表現をする時でさえ正しい筋肉の土台があって美しく成功するのです。
バレエの技って見た目は優雅でも実は大変筋力を必要とするという事は、バレエのレッスン経験のある方なら誰でも感じている事実ですよね? 本来バレエで使う筋肉はバレエのレッスンで養いたいものなのですが、大人素人の場合たった1時間30分の運動を週に数回行うだけ。これでは踊る為に充分な筋肉は養えません。安定して動くにはやはりレッスンとは別途、簡単な筋肉トレーニングを行うことをお勧めします。

最近はプロを目指して毎日レッスンするジュニアにも、ストレッチやマッサージと共にインナーマッスル(深層筋)のトレーニングを日々の生活に取り入れさせるようになって来ています。毎日レッスンするジュニアでさえ、レッスンだけでは偏りがあり不足しているのが現実です。

<鍛えるべきはやはりインナーマッスル!>
 昔のバレエの先生の中には筋トレを禁止される先生もいらっしゃいました。昔の筋トレの多くは表層筋であるアウターマッスルを鍛えてしまう運動が多かったからです。筋肉ムキムキのアウターマッスル・バレリーナなんて誰も見たくありません。しかし、最近はピラティスやジャイロキネシス、フロアーバー、バーアスティエ等のインナーマッスルを育てるエクササイズも研究されるようになって来ました。それらを上手く取り入れて体を作る事はバレエを踊る上でとても有用なことだと思います。

<怠け者でも筋トレは出来る>
 さて、「筋トレのススメ〜」なんて聞くと裸足で逃げ出したくなるような“苦しいことは嫌い!”な方もいらっしゃるとは思います。実は運動が苦手な私も筋トレが大っ嫌いで、部活でもいつも味噌っかすのヘタレ扱いをされていました。
私は何もシルヴィ・ギエムさんのようなあんな立派な筋肉になれ!と言っている訳でも、プロの先生方のような微動だにしないほどの筋肉を作れ!と言っている訳ではありません。大人素人には大人素人がバレエを楽しめる程度の筋肉があれば、まずは良いと私は思っています。もちろんその上を目指せたら更に素敵ですけれどね。残念ながらバレエ中心の生活が出来る大人は少ないと思いますので。

 筋トレって、別に毎日行わなくても良いんです!私達はマッスル・ボディになりたい訳ではありませんから。例えば、たった週1回行うだけでも効果があるのが筋トレなんです。一度身に付けた筋肉は少しの刺激(動け!という信号)を与えていれば1週間くらいはほぼその強度を保つのだそうです。ですので「週1,2回、レッスンのない日に少しだけ行ってからお風呂に入る」なんて習慣をつけられればとても良いと思います。

<筋トレは徐々に慣らせば怖くない>
 「さて筋トレするぞ!」と構えて、いきなり何十回も数百回も繰り返すのは長続きしません。こんな怠け者の私が筋トレが出来るようになったのは実はホンの少しづつの運動を徐々に徐々に増やして行ったからなのです。この方法は大っ嫌いだったジョギングが出来るようになった経験から、同じ要領で筋トレを始めてみたところ成功した経験に基づいて私がお勧めしている方法です。

 まずは下腹筋トレ等で良いので、シンプルな運動を、自分がある程度出来る回数から始めます。無理は絶対にいけません。大切な鉄則は「できるだけ前回の回数よりは1回以上増やす!」こと。ある程度出来るようになるまでは、これだけは守るようにします。最初はたった3回からでも良いのです。1週間後には4回行って、翌週には5回にします。段々身体が慣れて行くと、プラス2回、プラス3回と増やす回数を徐々に大きくすることが出来るようになって行きます。そうすると気が付いたら100回を超えていたなんて事に、本当になるのです。

ここで大切なのは“1回以上増やす”ことは鉄則ではあっても、それに縛られ過ぎないという事です。人間は毎日身体の調子が変わります。仕事を抱える大人はなおさらです。筋トレを始めてから「今日は体調があまり良くないな」と思ったら、その日は苦しくなった時点で終了させます。そのような事が続き過ぎては意味がないですが、翌日か翌々日にもう一度チャレンジすると今度は出来たりすることが多いです。大切なことは無理をしないこと諦めないこと。

<効果を実感したらヤミツキになる!>
 そしてある時にレッスンで、楽にアダージォが出来るようになっていたり、安定して回転が廻れるようになったり、バランスが長く続く様になっている事に気づくと、その感覚は病み付きになります!少しでも自分がふらつき気味になると帰宅してから慌てて筋トレをやったりしてしまうのです。もちろん、ふらつく原因は筋肉不足だけとは限らないのですが、せっかく身に付けた筋肉が減ることが怖くなるんですね。

<どんな筋トレをしたら良いのか>
 バレエ筋トレについても私は専門家ではないので「このトレーニングをしなさい!」とは書けません。バレエの筋力アップについての本は沢山出ているのでそれらの本等を参考にして欲しいと思います。一つご注意頂きたいのは、「真面目な方はやり過ぎる」という事です。間違った筋トレを猛烈に続けて大腿四頭筋等の大きな筋肉を必要以上に育ててしまい、それを使うようになってしまっては大ダメージで、修正することは容易ではありません。もちろん大腿四頭筋等の表層筋も鍛える必要はあるのですが、それは主に正しいレッスンで自然と身に付けるようにして、筋トレで鍛えるのは、下腹、体幹、内転筋、背筋、辺り。これらの自分で効果を感じられ易い筋肉を鍛えるようにします。(ダンス・トレーナー等がいてくれるとより細かい筋肉のトレーニングも可能ですが、そう簡単に見てはもらえませんので)

<表層筋肉に頼った踊りは美しくない>
 レッスンでは、表層筋が強すぎて表層筋に頼って踊ってしまっている人を少なからずお見受けします。筋肉が強いので技はこなせていますが美しさがありません。伸びやかに見えなかったり、力みが見えてしまったりするからです。大変なのは、こういう現象は本人が意識しないと中々気づき難いという事です。先生から注意されても、何がいけないのか実感として感じられないので中々直せません。自分が意識して深層筋を鍛えて、使い方を切り替えることが出来て初めて自分で実感することが出来るのです。使う感覚としてはとても異なる感覚です。
自分がどちらの筋肉で動いているかの実感を得る為にも、インナーマッスルの筋トレはぜひお勧めしたいと思います。

<私が行う主な筋トレ>
 あくまでご参考程度ですが、私が週1〜2回程度行うトレーニングを下記に記載しておきます。ごく一般的なエクササイズばかりですが、大体30分程度お風呂に入る前に行って、お風呂から出た後にストレッチをしています。筋トレの良い所は、ストレッチをしなくても始められるところですね。

【下腹筋】
 ※この方法の運動は腰痛を引き起こすという説があります。個人差があるようですが、腰痛を抱えている方は下記の【下腹筋&側筋】の運動の方が適しているかも知れません。(2017.12.14 追記)
 まずはシンプルに下腹(腸腰筋など)を鍛えましょう。下腹を意識しながら、図のように背中を丸めて上半身を床ギリギリまで倒し、自分のペースで起こして来ます。よく手を頭の後ろに組んで行うやり方がありますが、それだとみぞおちの腹直筋ばかりを鍛えてしまうことが多いので、私のお勧めでは腕を前へ伸ばして、下腹を床に押し付けるような感覚で行います。手の平は上でも下でも構いません。速度は自分のペースで始めて少しづつ回数を増やして行きます。ゆっくりも効果的です。両膝は慣れるまでは開いていて良いですが、慣れてきたらクッションを挟んだり、両膝を閉じたりして行ないます。尾骨が出ている方はお尻に薄手の座布団等を敷いて行ってみて下さい。
充分に慣れてきたら背中を伸ばして行っても良いですが、腰に負担が掛かるので、腰に問題がある場合は必ず背中を丸めてロールアップ&ロールダウンの感覚で行って下さい。
更に慣れたら腕をアン・ナヴァンの形にして、側筋等の体幹も意識して鍛えると効果的です。45度くらいの位置で停止して、両脇を左右に捻ったりすると更に良いです。

このエクササイズ、もしご自宅にストレッチポールをお持ちの方がいれば、ストレッチポールの上でも行ってみて下さい。背骨の下に沿わせる方向でポールを置いて両足を床に置いてトレーニングをすると、一緒に体幹も鍛えられバランス感覚が良くなります。

【側筋(体幹プランク)】
 「プランク」と呼ばれるポピュラーな体幹エクササイズです。床に伏せて肘と爪先で身体を支えます。腕と足は肩幅に広げ、出来るだけ床と垂直にして下さい。手の平は床に伏せていて結構です。 踵から頭上までのライン(黄緑の矢印)がなるべく一直線になるように、お尻が上がったり下がったりしないようにしましょう。意識するのは下腹と脇の下や肋骨周りの筋肉です。
このままの状態をまずは10秒キープから始めましょう。少しづつ長くして、小休止を入れて3分を3セットできるようになると、大分鍛えられて来ますよ。

【内転筋】
 床に横になり、片脚の膝を立てて、もう一方の脚は床上で伸ばします。伸ばした方の脚を床から浮かせたまま上下運動を行います。この運動は膝を前へ向けたパラレルの状態で行う場合と、ターンアウトして行う場合と、それぞれ鍛えられる筋肉が異なります。パラレルの状態では内転筋を鍛え、ターンアウトの状態ではハムストリングを鍛えます。
速度は速くても良いですが、ゆっくりでも効果的。大切なポイントは足を遠くへ引っ張りながら行うことと、きちんと使っている筋肉を意識しながら行うことです。前腿の筋肉で上げていないことを確認しながら行って下さい。


 私は腰を痛めているので行いませんが、他にも背筋のトレーニングを加えるとアラベスク等が楽になります。他にもポアント初心者さんは土踏まずをしっかり上げることを意識して、爪先立ちで歩いたり、ルルベを繰り返したりして足裏の筋肉を鍛えることも出来ます。但し!骨盤が傾いていたりパラレルでやり過ぎると違う筋肉が鍛えられてしまいますので、注意しながら行いましょう。(私はよく、姿勢を意識しながら家の中で爪先立ちで歩いています。)

<レッスン前の軽い筋トレ>
 実は、レッスン前の軽い筋トレの方が夜のコアな筋トレよりも強くお勧めしたい気持ちが私にはあります!
レッスン前に行う筋トレはかる〜く行うのが鉄則!中年以上になったらレッスン前にヘトヘトになってしまってはレッスン代が無駄になってしまいますからね。しかし、レッスン前に軽く大事な部分だけ筋トレをして、ほどよく筋肉を締める感覚を感じられるようにしてからバー・レッスンを始めた方が、「あれ?腹筋ってどこだっけ?」なんて感覚で始めるよりずっと良い効果があります。たった数十分の運動でしかないバー・レッスンなのですから、フルに鍛えれるようにしておかないと勿体ない!

 下記のエクササイズは下腹筋と脇の筋肉や体幹全体の筋肉を一緒に鍛えられる時短筋トレです!時間がないレッスン前にお勧めですぞ。この他にも上記の内転筋(特にハムストリング)の筋トレを軽〜くしておくと良いと思います。

【下腹筋&側筋】
<まずはドローイン!=下腹筋を入れる>
 仰向けに寝て、肩甲骨とお尻をしっかりと床に付けます。ウエストの後ろは少し空いていて構いません(青い丸)。両腕は体から少し離して手の平を下にして床に置きます。
骨盤の三角形(水色の三角)を意識して、三角形を少し床に向かわせながら頭の方へ引き上げます(ピンクの矢印)


<下腹筋と側筋を意識して脚を動かす>
(本来は両脚を少し浮かしたまま行いますが最初は片脚は床の上に置いていても構いません。)
ドローインを意識した状態でゆっくりと、片脚を曲げて、また両脚を揃えた状態に戻します。この動きを片脚づつ繰り返して下さい。辛い場合は両脚を伸ばさずに、曲げる脚を交互に入れ替えても良いです。
大切なポイントは下腹筋を意識すると共に、頭とお尻と肩甲骨が床から離れないようにして(ウエストの後ろは床から少し浮いています)、両脇の下の筋肉を脇に向かって上げます。但し!肩は上がってはいけません。肩甲骨は下ろしたまま、脇の下だけ上げようとします。そうすることで上半身を固定しながら下半身を動かすことが出来ます。これで下腹と脇の下の筋肉に効いているはずです。

 慣れてきたら、腕をアン・ナヴァンの形にして行ったり、脚をターンアウトしてパッセの形を作ったり、脚でデヴェロッペの動きを行ったりします。大切なことは下半身の動きに負けない側筋(体幹)を作ることにあります。

1つ注意が必要なのは、この姿勢は決してバレエでの立ち姿勢そのままではないという事です。お尻が床でつぶされている分、少しタックインの状態になっています。そのことは留意してエクササイズを行って下さい。

私からの筋トレのご紹介は以上です。おそらくより知識のある方なら、もっと良いエクササイズをご存じだと思います。先生に伺ったり、本を読んだりして自分なりのエクササイズを研究してみて下さい。まずは始めてみるのが一番!続かなかったらまた再スタートすれば良いのです。


最後に私が購入した本でエクササイズの参考になった本の一部をご紹介しておきますね。

『Miyakoレッスン 吉田都のエッセンス・バレエ・クラス』

『バレエの立ち方できてますか?』

『ダーシー・バッセルのやさしいピラティス―コアプログラム・レッスン』

『図説 ダンスの解剖・運動学大事典』