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■ ウォーミング・アップのススメ! & ストレッチについて

 どのようなスポーツにおいても、実際の競技や演技の前に身体のコンディションを整えておくことはとても大切な事ですよね?バレエでもレッスン前にはストレッチ等をよく行います。しかし“ウォーミング・アップ”とは文字通り“warm-up”、すなわち「身体を温める」ことで「身体を伸ばす」ストレッチとは厳密には違うものなのです。筋肉は温めることで柔らかくなります。ストレッチとは筋肉を温めた後で行うことが理想なのです。

<ウォーミング・アップのススメ!>
 身体が硬くなっている多くの原因は身体の組織が疲れていたり冷えている事に起因します。ですので運動前にはストレッチより何より身体の芯を温めるウォーミング・アップが大切という事になります。組織を温めることによってストレッチの効率もはるかに上昇し、演技のパフォーマンスも向上、故障の予防にもつながります。
「そんな事知ってるけど時間がないの」。大人は仕事や用事の合間にレッスンに通われる方が殆どですよね?確かに中々時間のない中でジョギングやステップ運動を長く続ける時間をレッスン前に取ることは難しいかも知れません。以前は私もこの感覚でした。しかし本当に大切なのはストレッチよりウォーミング・アップなのです。ストレッチにさく時間があるならウォーミング・アップの時間を優先させるべきです。「運動前にストレッチは必要ない」という意見の専門家がいらっしゃいますが、その方々もウォーミング・アップは行うべきというお考えの方が殆どです。

<バレエのウォーミング・アップは簡単でOK>
 サッカーやテニスなど、いきなり全力疾走を要求される運動とは違い、バレエのウォーミング・アップって実は結構簡単でも大丈夫なのです。レッスンはまずはプリエから始まりますから。例えば最寄駅から軽いジョギングでスタジオまで来るだけでも、何も行わないよりはずーっと効果があります。(但し全力疾走は表層筋肉が先に反応仕易く故障にもなり易いので全力疾走はお勧めしません。)レッスン前のウォーミング・アップにはターンアウトも大きく手足を動かす必要もありません。ひたすら身体を温めれば良いのです。また、人間の体というのは体温を一定に保とうとしますので、体の表面温度と筋肉の深部の温度は同じではありません。夏でも軽いウォーミング・アップは必要です。

ご参考までにですが、私はスタジオに入ると軽くアキレス腱を伸ばした後、その場で小さい足踏みを5分程度行います。(踵を交互に上げる程度。両手でバーにつかまって行っても良いですね。5分って結構長いですよ。膝に問題のある方は短めに、冷え症の方は長めで。)それだけでも良いのですが、その後小さいジャンプや横のタンジュを繰り返し行っています。足裏でしっかり床を擦って行うタンジュは脚の深い部分の筋肉を温めてくれます。そしてそれから床でストレッチを始めます。足踏みを行う方がストレッチの時間はずっと短くて済み気持ち良く出来るようになります。その後最後に少しの筋トレを行います。準備の所要時間はストレッチも含め全部で大体15〜30分くらいです。
身体は各自で異なりますのでご自分のメニューを研究してみては如何でしょう?まずはレッスン前に5分の足踏みなどをやってみて下さい。5分では不充分かも知れませんが、効果が感じられたなら続ける事が出来るようになりますよ!

<レッスン前のストレッチは必要か?>
 “バレエ上達への道” のページにも書きましたが、運動前のストレッチについては現在論争が盛んなようで、「運動前にはストレッチをしてはいけない」「運動前は静的ストレッチではなく動的ストレッチを行うべき」という専門家の意見がよく聞かれます。
「運動前にストレッチをしてはいけない」という理論は、筋肉はストレッチをするとその後に収縮しようとする(ちぢもうとする)性質があったり、筋肉によっては伸ばし過ぎると一時的にあるいは継続的に弱くなってしまう筋肉がある(内腿の内転筋などらしいです)ということのようです。
“静的ストレッチ”というのは私達がよく行う、「ゆっくり時間をかけて関節を動かさずに呼吸をしながら身体を伸ばすこと」。“動的ストレッチ”というのは「関節を動かしながら(手足を動かしながら)多少の反動をつけて体を伸ばして行く」というストレッチのことを指します。運動前に静的ストレッチを行うと筋肉を必要以上に伸ばしてしまうという理論のようです。

 私はもちろん専門家ではありませんので、皆さんに「レッスン前にストレッチを行うべきか行わないべきか」を強く説くことはできません。専門知識に反論するつもりもありませんが、ただ私は自分の経験上レッスン前にストレッチをしないとかなりの確率で腱や靭帯を痛めてしまって来ました。これは私のやり方の問題もあったかも知れませんが、今はたとえどんな偉大な先生に「レッスン前にはストレッチをするな」と言われてもおそらく身体を温めた後軽いストレッチを行ってからレッスンに入ると思います。私の関節はかなり広い可動域があり、筋肉や腱等が柔らかくなっていないと大きく動かした瞬間にそれらがピン!と強く引っ張られてしまって傷めてしまうのです。これは若い頃より中年を迎えてから顕著に感じるようになりました。温めただけでは私はダメなのです。

 身体には個人差がありますので、ストレッチを行わなくても大丈夫な方ももちろんいらっしゃるでしょう。行わない方が良い方もいらっしゃるかも知れない。そもそもバレエのレッスンはバーにつかまってゆっくりと身体を伸ばして行くエクササイズですので、ストレッチも兼ねていると言えると思います。しかし45〜60分程度のバーレッスンだけで完全に身体の芯まで柔らかくなっているかというと、季節や体調もあるでしょうが、難しい時もあるように思えます。素人は毎日レッスンしている訳ではありませんし、ウォーミング・アップが不充分ということもありますので。(温まっていない身体でストレッチを行うのも問題ですが。)
また、バレエは通常の論争に出てくるサッカーやランニング、テニスや短距離走等の競技とは、基本的に身体の動かし方が違うはずです。これほど前後左右に大きく手足を動かす運動をストレッチなしで行うことに私は不安を感じるのです。やはり行う運動に合わせた“準備”というものが必要なのだと思います。やるかやらないかという極端な識別だけではなく、ストレッチを上手にレッスン前に取り入れるということが一番良いのではないかと私は思っています。本当にレッスン前のストレッチ全てが「悪」ならば、ストレッチをやり続けてきたバレリーナ達は故障だらけで長く踊り続けて来れたバレリーナは存在しない事になりますよね?(極論ではありますが)

<レッスン前のストレッチはどのように行うべきか?>
 運動前のストレッチで問題にされているのは「身体の組織の伸ばし過ぎ」ということのようです。この意見には私も同意見です。強いストレッチはレッスン前に行うべきではありません、レッスン後あるいはお風呂上りなどの身体が温まっている時に行うべきです(短時間の入浴では芯まで温まっていないこともあります)。レッスンでもリンバリング(ストレッチ)はバーレッスンとセンターレッスンの間に行います。他のページでも書きましたが、自分の可動域を広げるストレッチはレッスン前に行うべきではありません。ではどの程度行うのかといえば、理想は身体を適度に温めた後に「自分の関節が気持ち良く回る程度」。これは慣れてくれば自分で解ってくるようになります。硬くなった筋肉を伸ばすにはどうしても「イタ気持ち良い」程度の多少の違和感を感じて伸ばさなければなりません。このあんばいで自分の稼働域まで伸ばすにはそれなりの時間が必要なのです。但し、同じ姿勢で長く伸ばし続けると伸ばされている筋肉は疲れて負担が掛かってしまうので、数秒〜数十秒毎に緩めて繰り返す、あるいは数十秒で止めておくという方が良いと思います。完全に伸ばされていなくてもレッスンで身体が温まって行けばやがて伸びて行きますので大丈夫です。

ここで注意が必要なのは、身体は各個人で違うという事です。可動域の広さ、筋肉の柔らかさ、どこが硬いか等は各人で異なりますので、本来はストレッチは各個人毎のメニューが必要です。初心者の方はストレッチの方法自体をご存じない方が多いので基礎や初級クラスではストレッチの指導も行いますが、慣れてきたら自宅で入浴後等にご自分で研究されることをお勧めします。(例えば膝裏のハムストリングの硬い方は長座屈伸よりもバーなどに片足を上げて伸ばすストレッチの方が有効です。書籍やインターネット等でも情報は得られますので参考にされても良いと思われます。但し合う合わないもありますので慎重に取り入れて下さい。)

<レッスン後のストレッチも大切に>
 レッスン後のストレッチは身体が温まっている分、少し負担を掛けて行うことが出来ます。但し“痛い”ストレッチは筋肉を緊張させて硬くしますので、“イタ気持ち良い”程度を少し長めに繰り返します。また、かなり疲れた状態の場合は筋肉が硬くなっていますのでその日は強いストレッチではなく優しいストレッチに切り替えましょう。優しいストレッチは筋肉を伸ばし血流を良くしますので、疲労回復を早めます。特に背中や腰はとても疲れますので、ゆっくりと伸ばしてレッスンを終えて下さい。

私は自分で必要だと思う為このサイトでレッスン前のストレッチを奨励していますが、大人の場合レッスン前にどのように準備を行うかは自由であり自己責任(先生の管理外)です。ストレッチを行っても行わなくても人それぞれですが、どちらにも有効な(必要な)準備は体を温めるウォーミング・アップだと私は感じています。歳をとる毎に故障の発生率は上がります。私も若い頃はピンと来ませんでしたが今ではウォーミング・アップの大切さが身に染みています。十分に準備をしてレッスンに臨んで下さい。皆様、末永くバレエを楽しみましょう!
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