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掲載日:2019/06/07
■ 「代講レッスンには参加すべし!」

 レッスンの楽しみ方は人によって千差万別で、趣味でバレエを習っている以上、他人に迷惑を掛けないのであれば「こうしなくていけない」ということはあまりありません。これから書く内容はあくまでも私個人の考え方としてお読み下さいね。

 時々、人気の先生がお休みされるとその代講の先生のクラスは生徒さんが激減する、などという現象を目にします。お休みになる方にはそれぞれの考え方があるのでしょうが、私としてはとっても「もったいないなぁ〜」という気持ちになります。

「知らない先生のレッスンは不安」「いつもの先生でなくては嫌!」「ちょうどいいから他の予定を入れちゃう」等々、様々理由はあるのでしょう。自分に合う先生って中々見つからないものですからね、そのお気持ちはよく解ります。

でもね、せーっかくの「貴重な機会」なんですよ!普段では経験しないアンシェヌマンやアドバイス等、興味はありませんか?もちろん代講される先生によっては無難なパで終わらせてしまう先生も中にはいらっしゃるかも知れませんが、殆どの先生は「一期一会の機会を生徒さん方に楽しんでもらいたい」と思って代講を引き受けます。

その先生が普段どんな内容でレッスンをされるかは、実は1回受講しただけではハッキリしないことが多いんです。特に代講や初めてのクラスの場合は、教師にとっても未知の生徒さんをどのレベルで指導するかは様子を見ながら行うしかありませんから。2回目、3回目でほぼ同じ顔ぶれの生徒さんであれば、どんどん本領を発揮して行ける状態になります。ですので、本来は知らない先生のレッスンは3回くらい受講して自分に合うかどうかの判断をすると良いのではないかと、私は思っています。1回目と2回目でレベルが少し変わる事も多々ありますから。

 同じ先生ばかりに習っているとどうしても多かれ少なかれ練習するパや動きに偏りは生じます。ですのでプロを育てる先生方は、時々ゲスト・ティーチャーをお呼びしたり、生徒を余所のサマースクールへ参加させたりと、慣れないレッスンを受講させることに熱心です。なぜならコンクールやオーディションでは、初めての組み合わせのアンシェヌマンをその場で覚えて自由に表現出来なくてはなりませんから。慣れていないアームスや慣れていないパの組み合わせに対応出来ないのであればプロにはなれませんし、プロとして通用しません。

しかし、大人バレエの私達にはそのように瞬時に対応できる能力は必ずしも必須ではありませんので、ご自分の考え方によって受講するスタイルを決めて構わないとは思います。大人バレエにとって一番大切な要素は「自分が楽しめるかどうか」ですから。

でもね、例えば自分が苦手なパについてのアドバイスも、いつもとは違う言葉でアドバイスされるとふとコツがつかめる事もあったりしますし、いつもの先生がスルーしている欠点もズバリと指摘してもらえる事もあるんです。もちろんいつもの先生にもその欠点は見えているのですが、いつもの先生は他の欠点を修正させる方を優先してその欠点にはまだ触れないなんてこともあるんです。

 子供って刺激を受けて成長するでしょう?大人も一緒で、普段受けない刺激を受ける事は大きな成長につながることが多いのです!代講に限らず、余所のオープン・クラスにもぜひ参加してみて下さい。(但し、バレエ経験があまりない方は、まだ多くの先生に習うことはしない方が良いと私は考えています。最初はあまり色々なアドバイスを聞き過ぎても混乱しますので。)

先日、代講クラスに来なかった生徒さんにそれとなく理由を聞いたところ、「普段上級クラスを教えている先生だからついて行けるか不安だった。」とおっしゃっていました。これはね、大きな誤解!!たとえ普段上級クラスを教えていらしても、そのクラスが初級であれば初級の内容でクラスを指導するのは教師の義務です。もしかしたら多少いつもの先生より難易度が上がる事はあるかも知れませんが、素人の場合、代講のクラスの時は完璧を目指さなくても良いんですよ! ってな事を書くと、「レッスンはいつでも真剣勝負!」と反対される方もいらっしゃるかも知れませんが、私はいつも、「普段の先生のクラスでないからこそリラックスして受けるべき」と思っています。間違っちゃってもいいんだってば!(^o^)b

とってもシンプルな基礎レッスンならともかく、ある程度のコンビネーションが入ったクラスになれば先生毎の特徴があります。私達は「○○先生節」なんて呼び方をしていますが、「この動きの時はこの腕の形か別のこの腕の形〜」なんてパターンが結構あります。もちろん時々全然変わることもありますから臨機応変に出来なければなりませんが、大人バレリーナにとってはこの臨機応変ばかりに気を取られると、しなければいけない“身体のコントロール”という本質を見失いかねません。

慣れない先生のレッスンで一番大切な事は「先生のアドバイスを聞き漏らさないこと」なの!自分にとっての新しい“刺激”かも知れないし、もう2度と聞けないかも知れないアドバイスだから。 次には「自分の身体のコントロール」、そしてその後に「完璧を目指す!」という順番なんです。先生の動きのコピーばかりに気を取られ、全く筋肉が使えず、先生のアドバイスすら聞き漏らすならば、そのクラスに出ている意味がないです。

初めての先生ですから、先生のアンシェヌマンがあまり好きでないこともあるかも知れません。しかしアンシェヌマンを楽しむばかりがバレエ・レッスンではありません。楽しめない(ノッて行けない)アンシェヌマンだったら、そこでフテくされずに、自分の身体の動かし方を追求して楽しみましょう!より美しく!より完璧に!

 素人に向かって、初めてのクラスなのに完璧を要求する教師はまずいません。もし居たら良い教師ではないと思う。普段から教えている生徒に対してはそれは「完璧を目指せ!」と言いますよ、特にプロ志望のジュニアにはね。でも先生ご自身だって真の“完璧”なんて出来ないんですよ。振付け通りばかりを追求して、生徒がどう身体を使っているかに注目しない先生は、私は良い先生だとは思いません。こういう教師は基礎がお粗末な“なんちゃってバレリーナ”を作り出す!

 余談ですが、昔、某バレエ団で主役を踊っていたような友人が、私のA師匠の素人クラスへ初めて一緒に参加した時に、(A師匠のそのクラスのアンシェヌマンはかなり長くて複雑なんですが)、やっぱり完璧コピーはしなかったんです。間の取り方とか上半身のエッセンスが師匠とは違っていましたけれど、アンシェヌマンを自分のものにしていてそれは綺麗でした。(先生によっては完全コピーを望む先生もいらっしゃいますが)、上級者になればなるほど結構マイペースなんですよね。(素人の私達は先生の振付けを大きく逸脱してはいけませんよ!)

 ですからね、いつもの先生のレッスンも大事ですが、普段教わらない先生のレッスンに出るのもとっても大事なんです。もし代講が入ったなら、ぜひ参加してみて下さいね。もちろん相性が合わないと判っている先生のレッスンに出る必要はありませんが、最近の先生方は結構良いアドバイスを下さいますから。その先生のレッスンを有益なものにするかどうかは自分の意識次第でもあるんです。 但し!あくまでこれは“まともな教師”相手のお話です。日本のバレエ教師は資格制ではないのでとんでもないド素人教師や、教えるのが下手なダメ教師もいますのでご注意を!

貴重な一期一会はぜひ楽しむべし! 知らない先生のクラスには積極的に参加してみましょう。