■ お教室選び

 最近は空前のダンスブームに乗って、バレエ教室も星の数ほど増えて来ました。昔は現役バレリーナのレッスンなんて素人の成人では中々受講出来ませんでしたが、最近では調べると結構頻繁に現役プロのオーブン・クラスが開催されていたりします。

また、レッスンのニーズも大変多様化して来ている様子で、以前の様にひたすら「上達したい、上達しなければ」という考え方から、「楽しむ為に」「楽しく運動を得る為に」という考え方が増えて来ており、今では素人の成人では「楽しむ」を優先している方が殆どです。世の中には未だにプロ以外のバレエを否定する方もいらっしゃいますが、“一般の観客がバレエ芸術を支えている”ということを考えれば、“趣味としてのバレエ”が発展することはバレエ界にとってとても良いことだと思います。

従ってニーズも様々ですので、適するクラスも講師も様々です。また、バレエのクラスは指導する担当教師によって内容が大きく変わります。生徒と教師の相性も長く受講する上ではとても大切な要素のひとつです。

<とにかく上達する為には>
 まず「とにかく上達したい!」と願う方に私がお勧めするのは、少人数のクラスで先生が個人個人の形や動きを手直ししてくれるクラスです。大人数のクラスではそれは望めませんし、ある意味“監視されながらのレッスン”になるので、先生との相性や、先生の技術、先生の考え方も大きく影響します。
バレエはコツさえ教えてもらえれば上達するものでは決してありません。コツの伝授だけで技術が上がるなら、誰もがプロになれますから。目と耳で動き方を教わり、身体の形と動きを修正してもらいながら繰り返し練習することで、バレエの技術は向上するのです。
成人のクラスでそれを実現させるのは、個人の先生のお教室が一番可能性が高いと私は思っています。但し、そのように生徒の個人個人の技術を上げようと思っている先生であることが前提です。大人には「楽しむ場を提供する」という考えの先生もいらっしゃいますし、それは間違った考え方ではありません。生徒のニーズもそれぞれなのですから。

しかし個人のお教室というものは、規模が小さい分だけ、人間関係や場所、舞台での配役・配置等で、ストレスやトラブルが発生しやすいのも事実です。それらの面倒が嫌だという方にはお勧めしづらい場所かも知れません。また先生の数にも限りがありますので、先生を選ぶということも出来ません。

それでも、良い「師匠」に巡り合えれば、バレエや身体の疑問や問題が発生した時にとても心強い助け手になって頂けます。私の場合ですと、他の先生の大人数のクラスで出来なかった動きを師匠に細かく指導して頂いたり、余所の舞台に出演する時に個人レッスンをみっちりして頂いたりして、師匠は今や自分にとっての大切なバレエの主治医のような存在です。「師匠」と出会いそんな関係を築けるまでに大変な年月が必要でしたが、そんな相談が出来る方が私の場合は2人いらっしゃいます。自分にとっての良い「師匠」は根気よく求めれば案外見つかるものなのです!(もちろん師匠も人間ですから期待のし過ぎは禁物ですが・・・)勇気と根気をもって探してみて下さい。

また、個人の先生のクラスではお教室の他に、貸しスタジオ等を利用した各先生の「プライベートクラス」等もありますが、こちらは大抵どなたかの紹介などが必要となります。(貸しスタジオ利用のクラスでも、どなたでも受講できる「オープンクラス」も沢山あります。)


<ストレス少なくバレエを楽しむ為には>
 一方、「楽しく」レッスンするには大きなバレエ・スタジオが良いと思います。施設も整っておりますし、大手ならばクラスも様々ですので担当講師を選ぶことも出来ます。講師も優しく穏やかな対応で、一流バレエ団で活躍した方々が殆どです。
但し、大きいスタジオで大人数のクラスでも、コアな「ぬし(主)」の様な常連さん達は結構いらっしゃいます。ストレスやトラブルが発生しない訳でもありません。ただ、大人数のクラスですと、自分とは相性の合わないような人達との接触を避けて受講することが出来るので、比較的気楽に通うことが出来ます。

大きいスタジオ・大人数クラスの弊害は、個人的に直して頂く機会が少ないことと、経営者側は万人受けを狙いますので比較的クラスの技術レベルが低めになること、様々なレベルの方と一緒にレッスンを受けなければならない点です。

どの先生も出来るだけ全ての生徒さんに楽しんで頂けることを考えてアンシェヌマンを組みますが、大人からバレエを始めた方が圧倒的に多い中で、クラスの名称通りのレベルのアンシェヌマンを組んでも、ついて来れる人の方が少ないという現実になります。教師にとって一番怖い事は生徒さんの故障と、レベルに合わない動きをさせることによる悪影響です。ですので、あくまでも傾向ですが、例えば大きいスタジオでの「初級」レベルの技術は、一般の(老舗の)個人教室では「基礎」以下のレベルであることが多いです。スタジオにもよりますが、年々その傾向が強くなる気がします。

<児童と成人は大きく違う>
 また児童と成人のクラス・レベルもまったく違います。児童の人間としての成長に合わせて考えられる訓練内容と、既に心も身体も出来上がった成人の技術向上に合わせた訓練内容が同じであるはずがないのです。児童の高等科のクラスとは、バレエの基本のパの殆どがマスター出来ることを目標とするクラスです。残念ながら成人が10年経験しても、成長期の児童の数年には匹敵できません。それほど成長期の児童の変化には驚かされるものがあります。


<初めてバレエを始めるならどこ?>
 大人になってからバレエを始めることに躊躇される方がいらっしゃるようですが、バレエを始めることに“遅すぎる”ということは決してありません。思い立ったらとにかく入門クラスを体験してみること!これが一番です。ぜひドンドン始めて下さい。なかには60代から始めて楽しんでいる方もいらっしゃいます。「無理をしない」という鉄則を守れば、レベルは落ちますが、かなりの高齢まで楽しむことが出来ると思います。どちらかと言うと身体より脳の方がついて行けなくなる感じです。

但し、まずお断りしておきますが、成長期を過ぎてからバレエを始めた方は残念ながらプロのバレリーナにはなれません。奇跡が起きれば別ですが、プロで通用する身体と技術と感性を身に着けるには、成長期での変化が必要不可欠だからです。
しかし「踊る」という行為は人間にとって最古の楽しむ本能です。身体に良いだけではなく、精神的にも人生の良い道連れになりますので、沢山の方にたとえバレエ以外のダンスであっても踊る楽しみを生活に取り入れて欲しいと思います。(但し、私は学校の必須科目にダンスを取り入れるのには反対ですが…(--;) フォークダンスや盆踊りなど皆が上手に踊れるものなら良いと思います。)

 初めてのバレエの第一歩を始めるならば、私は他人を気にしなくて済む大手のスタジオを実はお勧めします。一番良いのは季節ごとに10回程度コースで入門の講習会をしてくれるクラスの方が、他の受講者との足並みが揃っていて良いのではないかと思っています。その後に、速く上達したい方は個人教室などの入門クラスへ、あるいはマイペースで上達したい方はそのまま大手のスタジオの入門クラスに通うというのが、一番スムーズな気がします。しかしこればかりは各人の性格や事情にもよりますので、一番はっきりと言えることは「自分と相性が良いと思われるクラス」にまず通うことです。この時点での相性とは、「通っていて楽しいかどうか」ということです。他の要因については成人の場合は後で対処が出来ますので、とにかく貴重な時間とお金を費やす先を間違わないようにして下さい。


<スクールのかけもち>
 私はスクールや先生のかけもちという問題には肯定的な立場です。但し、まだ中等科くらいまでの児童と、経験3年以下(経験年数は目安に過ぎませんが)の成人の方には、かけもちはお勧め出来ません。サマースクールなどの一期一会の機会は別ですが、継続的に複数の先生に指導を受けるというのは、アドバイスの相違に直面することがあるからです。

クラシック・バレエでは理想とされる形が結構厳密に決まっていますので、様々なアドバイスが同じ1点を目指していることが殆どではあるのですが、それでも使う言葉やアプローチによって同じ欠点に対して相反する言葉で注意を受けることがあります。例えば「お尻をしめる、しめない」とか「重心を押し上げる、吊り下げる」など。言葉によるアドバイスというものは表現がとても難しく、また各個人は骨格から筋肉までそれぞれ異なるのですから、同じアドバイスが当てはまる方とそうではない方(それよりも異なる方へ注意を向けた方が良い方)がいらっしゃいます。
異なるアドバイスに対処するにはある程度の経験が(できれば10年以上の経験が)必要です。何を実践し何を留め置くのか、どのように異なるアドバイスを融合させるのか、自分の体の探求・分析・実践が充分にできないうちは、一本の道の上を歩いて行く方が早道だと思います。

しかし、教師も人間である以上、片寄りが多分に発生します。知性で教える教師、感性で教える教師、どちらの先生も貴重な影響を与えて下さいます。また受講する側もいつもの内容ですと、つい退屈して手を抜くことも発生して来てしまいます。
私は、長期にわたって様々なクラスをふらつく「レッスン・ジプシー」は勧めませんが、ある先生やある系列の先生のレッスンを軸として、他の先生のクラスをバランスよく受けることは、とても良いと思っています。色々な先生と出会ってどんどん自分の幅を広げて下さい。


 どのような技術や芸術も、自分にとっての出来るだけ良い「師匠」を見つけられることが、上達や充実への一番大切な要素です。しかしその「師匠」に出会うのは中々大変なことであり、また長い人生で「師匠」が変わることも多々あります。自分が冷静な目をもって、自分が何を欲しているのかをしっかり意識して、自分にとって良いバレエ・クラスを見つけて下さい。


<バレエ・スタジオ ご紹介>
東京中心となりますが、大手のバレエスタジオの一部をご紹介します。

【チャコット・カルチャースタジオ】(http://www.chacott-jp.com/j/studio/)
(東京・横浜・大阪・神戸・福岡)
一番ポピュラーでカルチャースクール的な気楽さで通えます。

【K-Ballet GATE】 (http://k-balletgate.com/) (東京:恵比寿・吉祥寺・横浜・福岡・大宮)
入会金は少しお高いですが、施設は充実しています。上級・プロクラスはビジターOK。

【メゾン・ドゥ・バレエ南青山】(http://mbma.jp/) (東京:表参道)
元「青山バレエハウス」がリニューアルされました。名門「橘バレエ学校」「牧阿佐美バレエ団」の系列です。

【Angel-R】(http://www.angel-r.jp/ )) (渋谷・表参道)
クラスが充実!さまざまな講師とクラスを受講でき、発表会も開催されています。

【アーキタンツ】(http://www.a-tanz.com/)(東京:田町)
少し駅から遠いのですが、プロ・レベルのクラスが受講できます。海外からの一流バレエ講師を招聘しています。


個人のお教室の情報は下記のサイトで紹介しています。

[Ballet Space](http://www.123ballet.com/バレエ教室ガイド/)(全国)

[バレエ教室.com](http://www.ballet-lesson.com/)(全国)

[Ballet Navi](http://balletnavi.jp/)(全国)