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掲載日:2021/04/29
■ 肋骨の下側を水平にする

 “身体のどこか一か所の部分だけ注意すれば全ての動きが上手くいく”、そんなコツがあれば喉から手が出ますよね?

もちろんそんな物は世界中をさがしてもありません。
しかし意識として、私達は常に注意している点はいくつもあります。軸を垂直に、骨盤を立てる、土踏まずを上げる、etc…。 解剖学的な実際の身体の動きとは多少違っていても、「意識」としてイメージして身体を動かす事はよくあることです。今回は私がよく意識しているイメージの中から、「肋骨の下側を水平に保つ」という注意をお伝えしたいと思います。

肋骨に対しての先生の注意は様々あります。技術の習得は険しい山に登るようなもので、登り方はルートがいくつもあります。自分にあったルートを発見して習得という頂上までたどり着いて下さい。私のルートがどなたかのお役に立てば幸いです。


<肋骨下側のベルトを水平に保つ>
 バレエでの基本の姿勢は、足の上に骨盤があり、肋骨があり、頭部がある。これが正しい姿勢です。動き始めると動きによってこれらの位置関係は変わりますが、バランスを保つ為にはなるべくこの位置を必要最低限で動かさなくてはなりません。

今回のテーマは肋骨について。
肋骨ってこんな形をしています。右は正面の図(肋骨以外も描かれています)、左は横から見た図になります。肋骨前面の真ん中は軟骨になっていて少しだけ開く事が出来るようになっています。


図のように肋骨の輪は水平ではありません。しかし“イメージ”として肋骨の胸から下の部分を出来るだけ水平に保つ意識で身体を動かすと、バランスを取り易くなります。

例えば、ルティレの時、骨盤は少し横に傾きますが足→骨盤→肋骨→頭のラインはほぼ垂直ですから肋骨を水平に保つ事は容易に出来ますね。しかしアラベスクではどうでしょう?

アラベスクでは骨盤が大きく前傾しますから、肋骨の位置は骨盤より大分前になります。しかし胸から上はなるべく起こさなくてはなりません。この時に肋骨の下側を水平にするように意識すると胸を起こし易くなる為バランスが取り易くなります。


意識としては、左図のように肋骨の下の方にベルトを1本締めていると感じて下さい。このベルトをなるべく水平に保つような感覚で身体を使うのです。

必ずしもこのベルトはきっちり水平を保てる訳ではなく、現実の身体の方はかなり傾いていることもあります。しかし感覚の中ではこのベルトをなるべく水平に維持するように注意してみて下さい。



アラベスクや高い角度のアラスゴンド等では肋骨の位置は骨盤の上から外れます。肋骨の水平を保つ為にこのベルトの意識を利用してみて下さい。
但し、このベルトの水平を実現させる為にはみぞおち付近の胸椎が柔らかく使えなくてはなりません。いくら胸から上を起こしたくてもそれを実現する柔軟性と筋力がなくては出来ませんから。
オフ・バランスでない限り、基本的には骨盤は傾いてはいても垂直な軸脚の線上にあります。しかし肋骨は必ずしも軸脚上にはありません。肋骨は(必要でない限りは)なるべく傾けないような努力をしながら、前や横にスライドして全体のバランスを取らなくてはなりません。そのバランスを取る為に肋骨下側のベルトを水平に保つ意識が役に立つのです。
(実際の肋骨は水平を保っていられない事も多いですが、意識として行って下さい。)


<肩を下すには肋骨を下す>
 「バレエの姿勢でただ立っている時にはきちんと肩は下がっているのに動き出した途端に肩が上がってしまう。」このような悩みはよくあることです。頑張ろうと力んでしまうとつい肩で胴体のバランスを取ろうとしてしまうからではないでしょうか?

肩が上がってしまう時には多くの場合肋骨も上にあがってしまったりします。ジャンプの時、肩と一緒に肋骨が丸ごと上がってしまっていたり、高く脚を上げる為に肋骨が大きく傾いてしまったり。そんな時にもこの“肋骨を下げて、下側を水平に保つ”という意識がとても役に立ちます。

肩を下げるには「肩甲骨を下げる」「鎖骨を下げる」「背中の僧帽筋(背中の上側)を下げる」等と様々な注意がありますが、この「肋骨を下げる」という注意も加えて下さい。但し、どの注意も上半身に力が入り過ぎていてはどの部位も動かすことは出来ません。バレエは力んで踊るものではありません。肩が上がってしまう方は肩より背骨を上げる意識で力んでいる力を少し抜いてみて下さい。

<やはり体幹の力が大事>
 “肋骨下側のベルト”を有効に活用する為には、やはり“脇をしめる”とうい感覚がとても大切になって来ます。「肋骨のベルトをしめる」とは「脇をしめる」という感覚とほぼ一緒だからです。

「脇をしめる」為には私はよく「両手で重い壺を両側から持ち、横に張った肘を下に下げながら壺を持ち上げる感覚」と説明することがあります。これでとりあえずは先生方の言う“側筋”というものを感じられるようになるはずです。(実際には“側筋”という筋肉はありませんが、脇の感覚を感じる為に使われる言葉だと思って下さい。)

しかし肋骨のベルトを100%感じるには、立体的に肋骨を感じるような「肋骨の下側を後ろからホールドする」という感覚が必要です。肋骨に限らず、バレエでは身体のすべてを“立体的”に感じることがとても大切なのです。

その為には肋骨を含む体幹の筋肉を感じる必要があります。
しかし筋肉はある程度発達していないとその存在や力を感じられないので、バレエのレッスンで発達させる事が理想ではありますが、大人初級者の方はまず筋トレ等のエクササイズで「腹横筋」「内腹斜筋」「外腹斜筋」辺りを鍛えて、「ベルトをしめる」「肋骨をしめる」感覚を得て、それをバレエに活用してみましょう!


<まとめ>
さて、今回のテーマである「肋骨の下側を水平にする」という意識はご理解頂けましたでしょうか? まとめると
「肋骨の下側」にベルトを感じる
「肋骨の下側のベルト」をしめる
「肋骨の下側のベルト」を水平に感じて、必要に応じて前や横にスライドさせる
「肋骨の下側のベルト」を有効に活用する為には、「腹横筋」「内腹斜筋」「外腹斜筋」等を鍛える

という事になります。

 私はこの意識をすることで大分身体を安定して使うことが出来るようになりました。皆さんにもこの意識がお役立ちすることを願っています。文章で上手く伝わると良いのですが…。


(余談ですが、水平を感じてもらうために子供達のウエストにベルトをつけてもらう事があります。同じようにゴムをベルトのようにして肋骨の下側に付けて頂けると良いのですが、あまり見た目が良くないのと、動くとベルトの位置がズレてしまいます。そこでスポーツ・ブラのアンダーバストについているゴムをベルトのように感じて動いてみて頂くのも良いと思います。実際に感じて欲しいのはアンダーバストより下のみぞおち付近なのですが、それが解っていれば問題ありません。肋骨をホールドするベルトを感じてみて下さい。)


では、良い休日?をステイ・ホームでお過ごし下さい。自宅でも色々と身体の訓練はできますよ〜。(^^)b