先頭に戻る
掲載日:2019/11/29
■ 「大人バレエでのライバルは自分自身!」 
 
 “隣の芝生”は青く見えるもので、お稽古場に行けば自分が一番下手くそに思えたり、ビデオを観れば自分が一番汚く見えたり、 友達を見ればどんどん上達していて自分は置いて行かれるような気がする・・・、そんな気分になることがあります。

プロ・ダンサーとプロ志望のジュニアについては、ライバルは一緒に練習している人達です。なぜなら配役や就職という数少ない席を奪い合う訳ですから。もちろん他人を意識せずに上達する人もいるとは思いますが、客観的に見られて比べられてしまう世界に身を置いているのは事実です。

でも私達のような素人の大人バレエ族はそうではない。「私のライバルは私!」自分自身です。そうじゃないですか?

 他人をライバル視してモチベーションを上げる事が自分に向いている方は別ですが、そうでない方では他人を意識し過ぎるのは単なる時間の無駄だと私は思います。

「Aさんはもう2回転が出来るようになっているから私も出来るようにならなきゃ!」「Bさんはアレグロにバッチュを入れているから私も入れる!」「Cさんよりも絶対長く止まる!」etc…。そんな意識の先にあるのは、「私の方がAさんより上手なはず」「私の方がBさんよりきれいなはず」「Cさんよりも私の方が経験が長いから豊かな表現が出来るはず」等々につながり、更にその先にあるのは「なのになぜ発表会ではAさんの方が前に並ぶの?」「なぜBさんの方が踊るパートが多いの?」「どうしてCさんばかり先生から注意を貰えるの?」等々の感情に振り回されることになります。

そんな感情は持って当たり前、だって人間なんですから。
一生懸命頑張ってるからこそ対価が欲しくなりますよね?上達する為に努力しているんですもの。

でも、そんな感情に振り回されるのって辛くないですか?最初は気にならない程度の感情でもやがて自分のイライラの原因になって来たり…。

幾度も書きますが、「人生はとっても短い!!!」。そんな気持ちの良くない感情に時間を取られたくないですよね?限りのある人生なんだから1秒でも多く笑っていたいと私は思います。

 あのね、素人のバレエって殆どは“どんぐりの背比べ”程度なんだと私は思います。子供の時からバレエをならっている人は確かに大人から始めた人より上手に見えるかもしれないですが、プロのレベルと比較すれば両者そんなに変わらない程度だったりするものですよ。「まあマシかな?」程度。時にはプロ級レベルの素人もいるでしょうけれど。発表会を観に行って、大人で本当に上手な人って1人か2人いるかいないかでしょ?

人間の能力や魅力って、人それぞれなんですよ。技術だと、回転が得意な人、バランスが得意な人、ジャンプが得意な人がいて、表現力だと、エレガントな人、シャープな人、ダイナミックな人がいる。そんな違う凸凹を持つ存在を比べる方が難しいと私は思うのです。

ダンサーの評価ってね、好みもあるし、適材適所の問題もあるし、将来性とか、その他の大人の事情とかもあったりするものです。ディレクターの好みに合わないダンサーはずっと良い役が付かないし、どんなに上手なダンサーでも向かない役はあまり配役されない。レベルが上がれば上がるほど魅力的に踊れる役は増えるようですが、「今回の役より前回の役の方が良かったね」とか言われちゃったりします。パーフェクトなダンサーなんて居ない。

プロの世界だってそうなんだから、素人の発表会なんてその配役や配置は必ずしも実力通りという訳でもないです。(まあポアントを履けない人にポアント・ワークが特徴のバリエーションを配役したりする先生はいないでしょうが。)特に最近の先生方は大人の生徒には公平性を考えて配置しますからね。だって昔のように“物言わぬ生徒”ではないですから今時の生徒さんは。掃いて捨てるほどに増えたバレエ教室ですから、移る先は(地域にもよりますが)いくらでもある訳で、つまらなかったら他の教室へ行ってしまうでしょ?生徒が減ってしまっては困る訳ですよ。(まあ、趣味でお教室をやっている先生は別ですが)

だから、そんな不確実な事に気を取られて過ごすのはバカバカしく思いませんか?

今どき、素人の大人にもソロ・バリエーションを踊らせてくれる先生はいっぱいいるでしょ?ソロを踊りたければ、そういうお教室に通えば良いでんす。

他人と競って“小山の大将”になれたとしても、もっと遥かに上手な生徒さんが入会して来たら?また競争の渦中?趣味なのに? 趣味って「楽しい時間を過ごすこと」でしょ?それって楽しい?…楽しいならば良いですが。舞踊ってそういう物だっけ?

ここからが本題!!

だから私は「自分のライバルは自分自身」を標語にしています。超えるべきは“今の自分”でしょ?

そんなこと当たり前? では、本当に今の自分を超える努力を貴女はしていますか?

ただダラダラとレッスンを受けているだけでは上達なんてしませんよ。だって同じことを繰り返しているだけですもの。バレエを習い始めて数年は初めての事だらけだからどんどん上達するんです。でもある程度慣れた所からは多くの人が足踏み状態を続けるの。だってレッスンに出てるだけで満足なんですもん。

あのね、自分を超えるには、「自分を分析する能力」、「自分に必要なものをみつける能力」、そして「努力する能力」「身に付ける能力」が必要なの。分析・手段・実行・センス、それらが必要なんです。おバカさんではバレエは上達しないの。

人に目標を聞くと「ピルエットをダブルで廻りたい!」「イタリアン・フェッテが出来るようになりたい」「グラン・フェッテが廻れるようになりたい!」などの目標が出て来ます。それは素敵な目標。でもそれって!“いつか”の意識ですよね?その実現の為に今何をしているかを言えますか? 漠然と「エクササイズしてます」とか「レッスンを毎日やってます」とか?・・・効果あった?できるようになった?

 私はよくビデオで自分を撮って研究するのですが、ビデオだからと言って必ずしも真実を映していないことも多いです。角度によって違って見えるもあるので。鏡なんて更に自分の正面からしか見えませんからね、よく「鏡は嘘をつく」って先生方言いませんか?

それでもビデオで自分を撮るのって上達への第1歩の気がしています。今自分がどうなっていて、どうするべきかを知り、その為に必要な訓練を重ねて、そして最後にその感覚を身に付ける。私の場合はそれが上達への道順になっています。簡単に出来るようにはなりませんけれどね。結構色々な先生からアドバイスは頂きますよ。

今は簡単にスマホで自分が撮れるでしょ? レッスン後にお友達にお願いして、たった数回、最後にやったアンシェヌマンでもいいから動いてみて撮るんですよ。(自分で見るのはかなりつらいけど)そうすると自分が今どうなっているのかが解る。 そして研究して努力を繰り返し、あまりにも変わらないようなら違う方法や感覚で練習するんです。出来ない事を繰り返してばかりでは、出来ない事を体に教え込んでいるようなものだから。根性バレエでは美しくはなれません。

いつかの大技を目標にするのも良いですが、その前に超えるべきハードルが山のようにあるでしょ?グリッサード、完璧に出来てますか? パドブレは? ソッテは? これらの小さなパを完璧に出来るように努力することで、色々な事が身に付くんですよ。

例えばグリッサード、空中で爪先がしっかり伸びれば床を蹴る力が強くなる、空中できれいなハの字が作れれば脚と体幹の力が強くなる、肩がきちんと降りて跳べていれば腹筋が使えている証拠、高さとスピードのコントロールが自在に出来ているか、きれいな5番プリエを使えているか、床をきちんと足裏で舐めているか、胴と骨盤は水平になっているか、ターンアウトは自分の最大限に開いているか、チェックする所は沢山あります! それらの小さい努力が自分の身体を変えて行くんです。細かい部分を大切にする人は、上達も早いし、確実に綺麗に踊れるようになる!

いつかの憧ればかりを見ないで、手前のハードルをよく見て下さい! 今超えるべきは何?

基礎の積み重ねの上に正しい大技の成功があるんです。基礎が出来ていないのに大技ばかりを力や勢いでこなしていたら、ただの猿真似ですよ。ちっとも美しくなくてただの自己満足。

きちんとシングル・ピルエットを廻れても、ダブルが廻れるとは限りません。シングルからダブルへ進む為には強化しなければならない筋力が沢山あるの。遠心力に負けない筋力、力を中心に集めてくる感覚、上に伸び続ける筋力など。でもシングルを正しく廻れない人には美しいコントロールされたダブルは廻れません。

今の自分で満足ですか?今の自分を超えたくない?小さな努力を沢山寄せ集めて使い続ける事で、確実にバレエは上達します!
早く今目の前にあるハードルを確認して超える努力をしましょうよ!

 大人バレエのライバルは自分自身! 自分を超える努力を繰り返すことが明日の美しい自分を作るのだと思います。