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掲載日:2020/09/12
■ ポジションに戻すということ

 バレエの動きの殆どは1番〜6番までの“ポジション”を通って行われます。
(6番のポジションの出番は少ないですが、例えば“中国の踊り”や“ウィリーの退場シーン”などで使用しますので、6番ポジションでもしっかり立てる訓練はしなくてはなりません。)

先生方からは毎度のように「5番に戻して!」「1番を通って!」と注意されますね。皆さんは「ポジションに戻す」って、“足の置き場所をポジションの形に戻す事”だと思っていませんか?

バーでのタンデュでは「正確に5番に重ねて」とか、ロンデ・ジャンブの時にも「きちんと1番を通って」と注意されますが、ポジションに戻す(あるいは通過する)際に一番重要なのは足の置き場所ではなくて、“骨盤の修正”からの“姿勢の修正”なのです!


 各ポジションでの姿勢を思い浮かべて下さい。足の上に身体が垂直に立っているでしょう?つまり足の上に骨盤が垂直に収まっていて、その上に上半身が垂直に収まっている、これがバレエ・スタンス(姿勢)の基本。

この垂直な姿勢の時が一番重心が安定して、全身の力を発揮できるし、床を強く押す事も出来るのです。これはプリエをしていても同じ。だから、「この垂直な姿勢を出来る限り使いたい!」、この気持ちが動いている中での姿勢を修正する源になるのです。


「バレエ・スタンスではまずは骨盤を立てる!」これは最近のバレエ教育の基本で、私の持論でもあります。骨盤を立てるということは、その骨盤の下に足が収まり易くなることですから、動いた後ポジションに戻る時には、まずは骨盤を立てて戻すことが足を戻すより先の動作となります。


 骨盤を立てる意識は、骨盤前面にある両腰骨(上前腸骨棘:じょうぜんちょうこつきょく)と恥骨を結んだ骨盤前面の三角形を垂直に立てる意識だったり、尾骨を床へ向かわせる意識で行うとやり易いと思います。また、骨盤が立つ為には骨盤を立てられるスペースが必要ですので、上半身はしっかりと上へ引き上げて(押し上げて)、骨盤のスペースを確保して下さい。立て過ぎて“タックイン”にはならないように!

<骨盤を立てられるチャンスをさぐる>
 さあ、それでは色々な動きをしている時に“骨盤を立てられるチャンス!”を考えてみて下さい。

例えばグリッサードは骨盤を立てたままの動きですよね? アラベスクは骨盤が前傾しますので、脚を下す時には骨盤を先導させて脚を閉じて来ます(骨盤が立つから脚が下りて来るのですよ!)。

前後に移動するジャンプの踏み切りは4番や5番ポジションの通過となり、踏み切りの瞬間ではほぼ骨盤は立っています。空中での姿勢によって骨盤は傾斜しますが、両足での着地の際には骨盤を先に戻しての着地となるはずです。
但し!ウーベルトなどのように脚を上げたままの片足着地では骨盤は倒した状態での着地になります。グラン・ジュテなどは片足着地なのでやはり骨盤が少し傾斜した着地となりますが、次の動きの為にすぐに骨盤を立てて姿勢を戻します。

また、速いスピードでのシソンヌ・フェルメ等の時は着地の時に骨盤を一々立てていては間に合わないので、骨盤を傾斜させたまま行いますが、その為強い力で骨盤を下から支え続けなければなりません。ゆっくりしたスピードで繰り返す時は骨盤は一々立てて戻します、立てることによってジャンプ力が増すからです。

そしてピルエット等の回転の際も、踏み切る瞬間はきちんと骨盤を立てて軸脚に乗ります。(アラベスク・ターン等の回転は別。)

如何でしょう、骨盤を立てるチャンス!、沢山ありますね。
今までは無意識に動いていた方も多いのではないでしょうか?一々考えるのは面倒ですものね。しかし骨盤に意識を持って動く方がはるかに速く上達しますし、動きもきれいに整います。

表現力豊かなベテランダンサーを見ると、上半身は沢山動いているように見えますが、骨盤にフォーカスして見ると意外と骨盤はしっかり戻しながら踊っています。表現が豊かなのは主に胸から上なのです。

<まとめ>
今回のテーマは「ポジションに戻る時は骨盤を戻す!」 この一言です。

簡単な一言だし、“耳にタコ”な言葉ですが、非常に重要なポイントです! ぜひしっかり探求して下さいね!

また、ポジションに戻すことが大切なのは足だけではなく腕についても大切です。アン・バー、アン・ナバン、アン・オーを通る事でやはり姿勢を修正しています。ここら辺のお話はまたいつか。

それでは、また! 楽しいレッスンを。(^^)/