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掲載日:2020/04/02
■ 「ポアントを履くといつもより下手くそに見えてしまう!」

 本格的な春の訪れの季節となりましたが、ウィルス騒ぎや関東地方は季節外れの積雪などで全く実感が湧いて来ませんね。春はウキウキの良い季節なのに残念です。

<ビデオは良い教師の1人>
 そろそろ夏に開催の多い発表会に向けてのリハーサルが始まっている方も多いのではないでしょうか?最近はリハーサルの前や後に、予習や復習の為の動画がスマホ経由で先生から送られて来たりして、便利な時代になっているようです。

ところで、おさらいや確認の為に自分が踊っている姿をビデオに撮る(または撮られる)事があると思います。後から自分が踊っている姿を見るのは本当に驚愕モノ!に辛いものだったりします (ToT)。平気な方もいらっしゃるとは思いますが、私は毎度本気でバレエを止めたくなる気分になります。「自分がこんなに醜いなんてっ!もっと踊れていると思ってた!」なんてね?

某名バレリーナの方が「私は必要な時にしか自分のビデオは落ち込むから見ません!基本的に悪い所は先生に見て直して頂いています。」とおっしゃっていました。どんな熟練者も自分の姿をビデオで見ると悪く思えるものなのですね。逆にシルヴィ・ギエムさんなどは「ビデオが教師」などともおっしゃっていたそうですよ。

<自分のビデオは繰り返し見ましょう>
 自分のビデオはね、1回観ただけじゃ絶対ダメなの。2度、3度と我慢して見ている内に段々と正視出来るようになって、「こんなものよねぇ」と受け入れられるようになって、「じゃ、どこが悪いのか、どこを直そうか」に変わって行くことが必要なんです。だから我慢して何度か見てみて、“凝視して、注視して、発見!”して下さい。

<お手本との違いを見つけるべし!>
 さて、自分でビデオを見ていて「こんなはずじゃなかったのに!」「どうしてこんなにも下手くそなんだろう」と思う事も多いと思います。何故でしょう?何故こんなにもお手本のビデオの人の動きと違うの?

理由は凄まじく沢山ありますが、そもそもド素人がプロの、それも販売されているようなビデオに映るレベルの人達と、同じ動きが出来る訳がない!それが現実。しかしそう言って諦めてしまっては1歩の進歩もありません。絵の勉強だって模写から始めるように、美しいバレリーナ達の姿と自分の違いを埋める努力をすることが確実に上達へ導いてくれる手段の一つになるはずです。美しく見えるようになるまでの過程はかなり遠いですが、出来る所から1歩づつ直して行きましょう。

<ポアントの訓練での不足分は自分で追加>
 よくある傾向に、ポアントを履いて踊ってみると、履いていない時の数倍は下手くそに見えたりします。 これはね、ポアントを履く事に慣れていないから。

現実に大人バレエのレッスンでは(特に大手のスクールでは)、通常のクラス・レッスンではポアントを履かせて貰えません。「ポアントはポアント・クラスで履いて下さい」と言われてしまいます。仕方ない事なのだとは思いますが、実は私はこれは「とてもヘン!」だと思っています。だって古典バレエの多くがポアントを履いて踊る訳ですから、クラス・レッスンで動く動きはポアントを履いても出来なくてはならないはずです。

お教室によっては通常のレッスンからポアントを履いて練習させる先生もいます。児童の場合はポアント・レッスン自体がなくて、いつものレッスンの中にポアントの訓練が組み込まれています。最初はレッスンの最後にポアントを履いて練習するとか、バーだけポアントを履いて練習するとかして段々センターレッスンでも履けるようにして行きます。

しかしそれはまだ体重の軽い子供の頃から少しづつポアントの技術を積み重ねて来たから出来ることで、これを大人からバレエを始めた方に適用するのは故障する確率が高く、また人数の点からも教師が細かいサポートができませんから、大人数のクラスでは難しいという事なのだと思います。「大人は自己責任」とはいえ、転倒1つしてもダメージが若い子とは大分違いますので。

だからと言ってポアント・レッスンの時間って大体30分前後、殆どが「ポアントで立つ」訓練に終始してしまうことが多いので、ポアント・クラスだけ出ていてもポアントを履きならして踊れるようには中々なりません。なので自分で工夫して訓練を増やさなければならないのです。

<ポアントでのア・テールの動きを強化する>
“ポアントで立つ”訓練は危険性もあるので先生の指導のもとポアント・クラスで行えば良いです。追加で訓練すべきなのは、ポアントを履いてのア・テールでの動き!です。

ポアントを履いて速いタンジュがアンクロワで前横後と出来ますか? ア・テールでのデベロッペやプロムナードは出来る? アントルシャをロワイヤル、トロワ、カトル、サンク、シスと打てますか?(ま、シスはちょっと難しい)。アッサンブレも脚を揃えて降りられますか? これらはポアントを履いていても出来なくてはなりません。

ポアント慣れしている人とポアント慣れしていない人のア・テールでの大きな違いは、脚の上にドンと座って立っている事(骨盤を引き上げて立っていない)、足首がちゃんと伸びない事、きちんと足裏で床を蹴れない事、床を滑らせられない事。

 実際の踊りって、爪先で立っている瞬間の方がずっと短いんです。だからア・テールがとても大事なの! でも(足裏含め)足や脚の力が弱いからバレエシューズで動くように動けない。

<ポアント・ワークは降りる時が大事>
 ポアントの練習をしていると、つい立つ事にばかり気を取られますが、本当に大事なのはポアントからア・テールへ降りる時!骨盤を引き上げたまま、座骨は土踏まずの上に、膝はターンアウトをして、しっかりドゥミ・ポアントを通ってア・テールまで降ります。これを片脚でやるって凄く大変です!!でもちゃんと降りられないと正しく次に動けないですからね!ポアントを履いて動くってとっても足と脚の筋力が必要なの。また体幹の筋力もポアント履いた時の方がずっと必要です!
ポアントを履きこなせるまでの道のりは遠い!でも努力で確実に前へ進める訓練でもあります。

<ピケでの膝曲げは下手くそのアピール>
 他にも例えばピケ・ターンで膝を曲げて立つクセが出たりする人もいるでしょう?これもポアントを履いた時に下手くそに見える原因のひとつ。ピケに乗る時に膝が曲がるのは、脚の裏側つまりハムストリング側で立っていない証拠です。前腿で立ってしまっているはず。しっかりターンアウトをして、ハムストリング側を棒のように伸ばして(固定して)、ポアントの上に突き刺して立てば膝は曲がりません。座骨を爪先の垂直線上まで一気に持っていくの。爪先で床を押して座骨を引き上げて立つのも忘れずに!体を軸足のはるか上に乗せるのは床を蹴る側の足の役割ですよ。

<足首を伸ばす、床を蹴る、体幹を正しくキープする>
 更に下手くそに見える原因は、ポアントを履くと足先が目立つことに起因して、ターンアウトの不足、足首は伸ばしていても爪先まで伸びていない、アラベスク等で足先がぶら下がっている、こと等がビデオでは目についてしまうのです。

ターンアウト不足については、私は、あまり追及すると故障につながるので素人はほどほどで良いと思っていますが、それ以外はみ〜んな自分で直せる部分ばかりです。ア・テールでの話ですからね。ア・テールで出来なきゃポアントで立ったらもっと出来ません。

もう一度じっくり自分の動きをビデオで見てみて下さい。パからパへ移る時、出した足の爪先や足首はちゃんと伸びている?走る時にはちゃんと腰が上がっている? 例えば後ろタンジュでポーズしている時、軸脚の上にリラックスして体重を預けていない?

少なくとも、ポアント・レッスン後に、ポアントを履いたままでの速いタンジュやジャンプ、きれいなグリッサード、デベロッペなどは、自分でも少しの時間で訓練が出来ますよ。毎週しっかりと行なえば、大分変化するはずです!

プロの人の動きと自分の動きとどう違う?それを一生懸命見つけましょう!私もまだまだ年齢に負けずに頑張ります!
o(^^)o

※ 時節柄外出すら難しく、レッスン環境も様々です。私達素人は無理はせず、自宅でのエクササイズ等を行っていればしばらくお休みをしても復帰し易いと思います。くれぐれも自己防衛を優先させて下さいね!