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掲載日:2019/12/26
■ 「ピルエットについての私のうんちく」 
 
 あと数日で令和元年が終わり、新しい令和2年がやってきますね!皆様にはどんな一年だったでしょう?  つい先日同じセリフを書いて2019年を迎えた気がするのですが、1年は本当に早いですね!私も歳を経て環境が変わり、このサイトを継続できるのもあと何年?という単位ではなくてあと何か月?という感じになって来ています…まだ頑張りますが o(^^;)o

今年最後の記事は「ピルエットについての私のうんちく」という内容で、ピルエットについて常々私が思っていることを記事にしてみました。この内容は“ピルエットのまわり方”でもなければ“ピルエットをまわるコツ!”でもないので、ご注意下さい。それらについては偉大な先生方が本や雑誌に書かれていますので、そちらを参考にして下さいね。

 さて、私は回転がとても苦手な(素人)ダンサーです。いつから回転が苦手だったのかは記憶がないのですが、10代のジュニアの時にはすでに大っ嫌いだった記憶がありますし、先生も私には回転技ではなくジャンプ技のバリエーションばかりを配役していました。私はプロ候補でもなく、跳ぶことは大好きで誰にも負けない自信があったので、そんな跳ぶ踊りを嬉々として踊っていたんですね。でも回れないコンプレックスはしっかりあって、それをどうにか「いきおい回転」で誤魔化して過ごしていました。

そのツケが来たのがバレエを再開した30代。若い筋力も細い体も無かったので、どうにもキレイに回転技が出来ないんです。さすがにシングルは廻れたのですが、ダブルとなると“偶然の成功を待つ神頼み!”という感じになって、そこからが“私とピルエットの戦い”になったと思います。

<回転する才能>
 「廻れているヤツには手を出すな」これはバレエ教師の間で囁かれることわざみないな物なのですが、回転に才能のある人間って結構な確率でいて、彼女達には廻る事が苦ではないらしいんです。私の友人は「くるくるくるくる楽しいよ〜」と言いながら回転します(~o~;)! 生まれた時から廻る感覚が身に付いているので、「下手に注意するとその感覚を狂わせてしまい廻れなくなる事がある」のだそうです。

「廻れる」「廻れない」をどう見るか、ですが、好みの問題もあるでしょうが、とにもかくにも「しっかりとした垂直軸を持ち、水平にスピード・コントロールして回転できること!」これが私のピルエットについての定義です。

レッスンビデオなどを見ていると、時々本当にきれいなピルエットを廻れる人がいます。それは才能かもしれないし努力の賜物かも知れませんが、私にとっては憧れのピルエットです。でもプロのレッスン・ビデオであっても一人か二人いるかいないか?という感じ。

(ビデオで思い出しましたが、今年永眠された偉大なバレリーナのアリシア・アロンソさんはものすご〜〜〜〜い!!回転技の持ち主でした。5回転くらい軽く廻れますからね。彼女が指導するキューバのバレエ団員はやはり回転が得意なダンサーが多いです。ちょっとやり過ぎか?と思うくらいの強い体幹でゆるぎない回転をします!キューバ・バレエ団はドンキのビデオが発売されていますのでご興味があったら見てみて下さい。

キューバ国立バレエ『ドンキホーテ』DVD

<立ったルティレで終わる>
 ピルエットで大事なことの1つは「爪先立した状態のルティレのポーズで終われること」。この形で廻り続けるのですから、この形を最後まで保ち続けられることが理想なんです。(ピタリと止まらなくても良いのですが)この形で終わる事ができれば、その後に4番に降りようが5番に降りようがアラベスクに降りようが、なんにでもつなげられる訳です。

<いきおいダブル>
よく「いきおいダブル」と私達が呼ぶ廻り方があります。これは私が若い頃に廻っていた廻り方。ぎゅっと溜めて勢いで廻って降りる廻り方です。回転速度が速い方が求心力が強くなり軸がぶれ難くなります。でもこの廻り方ですと安定感はないですし、スローで廻れないし、美しくもない。初級者さんには“いきおいダブル”で廻る人がとてもとても多いです。自分が“いきおいダブル”で廻っていることに気付かない人はいつまで経ってもそこから抜け出せずに終わってしまいます。もちろん“いきおいシングル”だってありますよ!

物理的な原理として、回転は軸が出来ていて体を固定すれば廻る事が出来ます。ですから肩が上がっていようと、膝が閉じていようと、バランスが取れていれば回転はできるんです。スケートでは肩を上げて回転するし、新体操ではパラレルで回転するでしょう? 初級者さんの中には肩を上げる力で身体を固める人、少し猫背で腹筋の力で身体を固める人、出っ尻でも廻る人、色々います。初めは仕方ないですが、まずは正しい姿勢を身に付けないと正しいバレエはいつまで経っても踊れるようになりません。
実は“いきおいピルエット”を廻るのは初心者さんに限らないんですよね。ベテランでもそんな廻り方の人がいます。

<ひねりダブル>
もう一つ「ひねりダブル」と呼ぶ廻り方もあって、これは正しい廻り方の範疇内です。少し立つタイミングを遅らせることによって身体に捻りを加え力を中心へ集めやすくする廻り方です。速いスピードで回転したり何回転も回転する時にはとても役に立つ廻り方ですが、垂直と水平が正しく出来ていない所へ捻りを加えると回転が崩壊しますから注意が必要です。

<スロウ・シングル>
 私の師匠と、師匠の師匠である大御所先生は時々センター・アダージォで「スロウ・シングルで!」という指定を入れてシングル・ピルエットの練習をさせます。これがまた難しい(T_T)。音が余るので最後はなるべくきれいにルティレで終わって次のポーズへ移らねばなりませんし、やれ「腰が落ちてる」だの「軸脚が緩んでいる」だの「傾いている」だの、バシバシ!注意が飛んできます。大御所先生たるや「美しくない」の一言でバッサリ・・・。でもとても勉強になる訓練ですよ!

シングルだろうがダブルだろうが、本来は音に合わせたスピードで回転は出来なくてはなりません。素人だから勝手なスピードで廻って良いということはないのです。

 私の師匠は私達には美しいシングルを要求した方なので私もシングルは速くても遅くてもそれなりに廻れるようにはなりました。でもちゃんとシングルが廻れるようになっても、そのまますぐにダブルが廻れる訳ではないんです。「シングルとダブルは別物」という先生もいるくらい。2回転するという事は遠心力がつくという事なので、その遠心力に負けない求心力=中心に集めてくる力が必要になり、また遠心力に引きずられな強い軸が必要になるんです。余裕を持って美しく立ち続けて廻るにはやはり筋力も必要になって来るんです。才能だけでもダメなの。

<私の開眼>
 私が回転について、いえバレエの全てにおいて感覚が変化したのは、軸の感じ方が変わったタイミングでした。私の場合は「背中の表面が邪魔をして背骨が上がりきっていなかった」という感じ。それまでも背中の僧帽筋は下ろしていたのですが、更に「背中のたてがみを尾骨まで下すように」して初めて「背骨の軸が垂直に強く安定して伸びた」という感覚になりました。その軸を脚の軸とつなげることによって、片足立ちも安定するようになりましたし、回転軸も爪先で床を押して伸びあがるという感じ方を得る事が出来ました。もちろん失敗する時もありますが(「私、失敗するんで」)、“軸を手放さない”感覚で失敗出来ると、大きく崩れることはありません。例えばポアントでのピルエットも、もしポアントから落ちてしまってもドゥミ・ポアントの状態に降りられれば継続して廻り続けることが出来るんです。

そして十字架の意識。胸筋と肘をしっかり横に張って水平を保つこともとても大切です。
(手の指先も落とさないで、みぞおちの前で水平に)

<ピルエットは自分で育てるもの>
 残念ながらピルエットの回転のコツについては絶対のものはありません。人によって本当に感覚が異なるからです。Aさんで効果のあったアドバイスが同じような失敗をするBさんに必ずしも役に立つ訳でもないのです。ですから私は色々な先生のピルエットのアドバイスを聞きに行きました。同じ失敗をただただ練習するよりも、試行錯誤して色々な失敗をした方が、自分でコツをつかめるようになると私は思っています。

ピルエットの廻り方も、4番から始めたり、5番から、2番から、グラン・プリエから、と始め方も色々あります。メソッドによって後ろ足を伸ばして構えたり、前脚に重心を乗せて構えたり、真ん中に近い位置に重心を置いて始めたり、色々です。廻り方も私はコマのような感覚で廻りますが、の感覚で廻る人もいるようです(特にアンデ・ダンは)。
素人はどの廻り方でも私は構わないと思っています。ただ、美しく垂直に伸びて水平に廻ること!それに尽きます。

 私がピルエットに執着したきっかけは、すっごく気持ち良く完璧?に廻れた!瞬間を経験した時があったからです。同じ感覚をどうしてもまた得たくて試行錯誤が始まりました。いくら廻れても「この感覚じゃない」という不満足が私を走らせていたように思います。

<忘れられないアドバイス>
 色々な先生からアドバイスを頂いて来ましたが、忘れられないアドバイスを下さった先生がいらっしゃいました。私がアドバイスを求めに行くと「ピルエットのアドバイスって正直なかなか難しいんですよね、自分の感覚で得て行くしかないんです。でも1度でもこれだ!と思える感覚を経験すれば、その感覚の再現を目標に研究して行けますよ。Ruccaさんはその感覚を何度か得ているのですから、大丈夫!廻れるようになりますよ。」と言われました。聞いた時は「なーんだ、それじゃあ何の参考にもならない」と思ったのですが、今ならその先生のアドバイスがよ〜く解ります。

まぐれの1回が、100回に1回、50回に1回、20回に1回・・・、今はまあまあ満足に近い感覚で廻れるようになり失敗の方が少なくなりました。もちろん完璧ではないのでしょうが、先生からの「よし!」という掛け声が快感(^^)v

どうしたら軸の上に立っていられるのか、どうしたら脇をしめる事が出来るのか、どうしたらスムーズに首が振れるのか、何年も何年も追及して来ました。いまでも追及していますが、残念ながら力と胆力は弱まるばかり(T_T)、本当に若さが欲しいです。

ピルエットには人それぞれのピルエットがあります。みなさんも探求して練習して、気持ち良い回転を手に入れて下さい。


<今年の最後に・・・>
 今年は多くの方々にとって大変な一年だったと思います。私もプライベートではしんどい1年でした。しかし、なんとかバレエを続けられたこと、おかげさまでこのサイトをご覧になって下さった方がゼロではなかったこと、この貴重な事実に深く感謝しています。
来年は皆様にとっても私にとっても良い1年になることを心から願っています。今年も私の駄文を読んで下さって、本当にありがとうございました。皆様のバレエ技術がバレエ生活がより素晴らしいものになりますように!

よいお年を! m(_ _)m


<ピルエットについての本>

 ピルエット! (クロワゼ・バレエレッスン・シリーズ(1))

 クロワゼ(74) 2019年 4 月号

 Clara (クララ) 2019年 9月号