先頭に戻る
■ 順番を覚えるのが苦手

 「私はアンシェヌマンの順番を覚えるのが苦手〜」と言うと、バレエを学んでいる多くの方が「私も!」と答える気がします。でも「私も!」と答えながらも彼女らは自分の番が来るとしっかりとこなしているように見えるのは…私のヒガミなのでしょうねぇ。とにかく私は子供の頃から「暗記」という作業が苦手です。ですので「出来るだけ先頭ではやらない」という根性が染み付いているのですが、いかにせん年季が入ってくれば嫌でも先頭で動かねばならず、自分が間違えば後ろの人も総て間違え、先生からカミナリが落ちるなんてことばかりでした。

「順番を覚えること」これもバレエの技術の一つ!出来るようにならなくてはなりません。児童の高等クラスになれば、長〜いアンシェヌマンを1回で記憶させ、覚えていなくても適当に埋めて継続して動くことを学ばせます。例えばコンクールやオーディションで順番が覚えられなければ審査すらして貰えませんので。(例え一部間違えてしまっても堂々と動き続けていれば、審査員の先生方には継続して見てもらます。)まあ仕方なくカンニングもありですけれど、カンニングは遅れますのでやはり良くはない。まずはしっかり覚える事がプロ志望には必須!です。

 幸いクラシックバレエの世界はパの動きが決まっていますので、他のコンテンポラリー等のクラスよりとっても楽なのです。ですので続けて行けば必ず段々と大体覚えられるようになりますので、深刻に心配しないで下さいね!(私が言っても説得力はない気もしますが (^^;))

 バレエのアンシェヌマンを覚えるのは(才能もありますが)ひたすら「慣れ」です。何年も習っている先生の組むアンシェヌマンですとセオリーが大体決まって来るので予想が付きますし、大人のオープンクラスではほぼ2回程度は繰り返し説明して貰えます。
初めてのクラスで自分独りが覚えられなくてパニックになったことはありませんか?でも心配ご無用です!他の方々はその先生に慣れているから長いアンシェヌマンもこなせているのだし、皆さん最初は同じ経験を経ていますので誰も笑いません。例外はあまりにも動きの邪魔になってしまった時だけは冷たい視線にさらされるかも知れませんが、一緒に移動していればそんなことも滅多にないので、バレエでのレッスンは開き直りが大切!

ベテランだって初めての先生のクラスで完璧に覚えられる事ってあまりありません。あるバレエ団でプリンパルをしていた友人がたまたま私の受講する素人クラスに参加して、「アレンジしてるな〜」と思って見ていたら本人は「忘れちゃったので腕は適当」なんて答えていました。長〜いアンシェヌマンを組む先生のクラスだったのですけどね。
もちろん!先生は腕の動きもお考えがあって付けているのですから、アレンジの仕過ぎは失礼ですからしてはいけませんよ。
日本人は真面目なのでキッチリとコピーするのですが、外国人は結構自由にアピールしますよね。まあ自信のある人が難易度を上げて行うので認められるのですが。

 あまり頼りにならないかも知れませんが、一応私の覚え方を書いておきますね。ご参考になれば幸いですが、大したコツはありません。

<音楽とイメージで覚える>
 音楽と共にまずはイメージで覚えましょう。長いアンシェヌマンは大抵前半と後半に分かれていたり、最後に山場があったりしますので、音楽が最初に戻るあるいは切り替えしになったら、そこからまた新しく覚えて行くのです。細かい所や不安な所は(あれば)2回目の説明で確認しましょう。
また方向もとても良いキーです。バレエは結構右や左に方向を切り替えて動きますので、身体のイメージで覚えるのに効果的。
頭の中に、パを覚える自分と、位置と方向を覚える自分が2人存在するみたいな感覚で先生の説明を聞きます。

<先生と一緒に動く>
 覚えられない内は必ず先生と一緒に動きましょう。アンシェヌマンは大体定番になっているパのかたまり、例えば“ドンべ→パドブレ→グリッサード”や“トンべ→パドブレ→4番→ピルエット”など、お馴染みの動きをベースにして先生がアレンジを入れて行きます。どれだけ沢山組み合わせが身体に染み込んでいるかが“年季”の一部なんですが、その動き方の細かい部分は基礎や初級クラス等で身体に覚えさせるしか出来ません。慣れてくれば初めてでの組み合わせでもすんなり行えるようになりますので焦らないこと。

<移動と位置はしっかり覚える>
 ワルツなど移動の多いアンシェヌマンでは、移動のタイミングと位置だけはイメージして覚えておくようにしましょう。パを忘れてしまっても皆さんと一緒に移動していれば邪魔にはなりません。カンニングしながらでも移動だけはしっかりと。

<言葉に出して唱えながら動く>
 これは私流ですが、動きやパのかたまりに名前を付けます。パの名前を唱えることが出来るときは名前で、出来ないような時は勝手に名前を付けています。大抵は踊りや役のキーワードを付けておきます。例えば「右スドゥニュー・手はバヤデール」は、右回転のスドゥニューをして『ラ・バヤデール』のニキヤがやる片手を高く上げるアームスで止まる、という感じに心の中、あるいは口の中で唱えます。出来ればごく小さい声で言葉にする方が効果的。名前やキーワードを唱えながら動くと結構覚えます。(なるべく小さい声でですよ!私は「プレパ、右かいかい、アラベスク、蹴り上げ、シャーッセ」なんて唱えていたら、友人から「Rucca!うるさい」と叱られましたので…右かいかいは右のプチ・ロンドダブル、蹴り上げはルルベでのデベロッペ・ドゥバンなんですが、後で「ミギカイカイって何? 何でプチ・ロンドがカイカイなの?」ってしつこく聞かれて笑われました (^^;)A)

<間違ってもいいから出来る所をしっかりと>
 とにかく、まずはパニックにならない。ダメなら全部覚えるのはあきらめて、覚えられるところだけはしっかり動く。移動だけは皆さんと。2回目は出来るだけ完璧に。を目標に開き直れば怖いものは無しです。だって「練習」で「本番」ではないですからね!覚えられなくて萎縮して動いたら少しもタメになりません。練習なんですから失敗しても良いのです。
それに順番以外にも気を廻さなきゃならない所がテンコ盛りでしょう?順番ばかりに気を取られていたら、ただの順番覚えマシーンになってしまう。踊れるようになる為に、踊る為にレッスンに行っているんですよね?周りは気にしない。順番を覚えるのは各自の自己責任です。

 以上、そんなところでしょうか。ガッカリさせてゴメンナサイ。
私が一番覚えやすいのはワルツ、移動とかたまりで覚えられるので。次はアダージォで、ゆっくりしていて感情やセリフを入れて覚えられるから。最悪なのはアレグロ!思い出すヒマがないから。…バーはカンニングします。

 恐怖のアレグロ! 私の師匠はなぜかアレグロが好きな方が多いのです。それも男性並み。凄まじい速さと量のステップはとてもじゃないけど覚えられないし一度失敗したらもう戻れない!なので、出来ない部分ははしょったり、ダブルをシングルにしたりして結構勝手にやっていました。今はもうそんなクラスは受けませんし、師匠も動けなくなったのでやりませんけどね。「テクニシャン先生はアレグロがお好き。」

 また、順番は歳を取ると本当に覚えられなくなります。ですのでお若い皆さま、中高年のオバサマ方には優しく大目に見てあげて下さい。ご自分達もいずれはそうなるのです。名教師だった先生方でも右と左のアンシェヌマンが違ったり、途中で少し変わったりすることがあるのですから。但しオバサマ方!レッスン中に他の生徒さんに順番を聞いたり、都合の悪い時だけ後ろに下がったりなど、他の方の迷惑になるような振る舞いは控えましょうね。自信がないのなら最初から後ろの列でやりましょう。

 昔センターで、スタートの5番ポジションから誰一人として動けないことがありました。6人程度居たのですがアンシェヌマンが長すぎて全員忘れてしまったんですね〜。先頭は講師をやってるセミプロの娘だし、「だれか動くだろう」とお互い当てにしていたんです。音楽だけが流れて行ってたまらず先生が音を止めました。カミナリが落ちると思いきや、先生も大笑い。こんなこともあるんですね〜。

そんな感じに誰でも順番を覚えるのには四苦八苦しているのですよ。基礎クラス等ではアンシェヌマンが短いですからあまり間違えませんが、逆に私が基礎クラスを受ける時は動きの確認やクセを直している時なので、そちらに神経が行ってしまい間違えたりすることが多いです。
児童のクラスでは緊張感が必要なので間違えると叱られますが、大人の素人クラスで間違えてカミナリが落ちることはまずありません(先生次第ですが…)。 時間は掛っても次第に覚えられるようになりますし、完璧な人は殆どいませんから安心して下さい。
リラックスしてレッスンを楽しみましょうね。

ちなみにシルヴィ・ギエムさんや熊川哲也さんは、なが〜いコンテンポラリーでも一発で覚えてしまうようですよ。天才は身体で覚えることも天才ですね〜。