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■ 自己満足ちゃんは上達しない

 「自己満足ちゃんは上達しない」…ちょっと厳しい響きのタイトルになってしまいました。お仲間を上から目線的な意見で書くのは気が引けるのですが、油断すると私自身にも当てはまる危険があるので皆様にも「ご注意を!」という気持ちを込めて書きますね。

長年同じクラスで同じ仲間とレッスンをしていると、時々本当に変化しない人がいます。慣れてくるとバレエの技術なんて本当に微々たる変化しかしてくれないので目に見えての上達などしなくても仕方ないのですが、それにしても技術とは言えない部分でまで全く先生のアドバイスを実行しない人が現れるのです。

勝手に考察すると大きく3パターンの性格が見えてくるようです。A子ちゃん→天然イノセント・タイプ、B子ちゃん→ご意見無用タイプ、C子ちゃん→ベテランの欲張りさんタイプ。

 まず“ご意見無用タイプ”のB子ちゃんは自分でも自覚していて、スタジオにただ「踊り」に「エクササイズ」に来ているので、これはもう先生と彼女の問題なので他人が口を出せる問題ではありません。先生としてもクラスの邪魔になる訳ではないので文句も言いずらいでしょう。しかし、本来は技術を習いに来ているのですから先生のアドバイスを無視するのは大変失礼な態度です。先生は料金を頂いている以上は彼女にも注意をされますが、時間の無駄になるので誰にとってももったいない事ですよね。まあ露骨に注意を無視する強者はめったにいませんが。

 “欲張りさんタイプ”C子ちゃんは比較的ベテランの方に多いタイプに思えます。ご自分のスタイルを崩されたくないのですよね。先生に注意された時だけは直しますが、すぐに元に戻すタイプ。直そうとしても戻ってしまうというのなら仕方ないですが、このレベルの生徒で注意されて直したばかりなのにそこまでコントロールできないとは考え難い…。彼女は多分、自分の更なるアップを目指して受講しているのだと思いますが、新しい何かを手に入れる時には自分の今までのクセややり方を変えなくてはならない時があります、その結果、一時的に技術が落ちたり踊り難かったりしますが、それは技術が習得できればまた元に戻せる事が殆どです。

例えば力でジャンプをしている生徒に、“芯”以外の上半身の力を抜いてしっかり腰でプリエをするようアドバイスをすると、最初はジャンプの高さは低くなります。その代り肩の上がっていた上半身は美しくなり、ゆったりとした余裕のあるジャンプを手に入れられるようになって行きます。他の例ですと、アラベスクの体幹がイマイチ悪い生徒に、腕と脚の高さを下げさせて脇と下腹を上げる感覚を身に付けさせると体幹と腰の安定が手に入ったりします。筋肉がついてから腕と脚の高さを戻せば、以前よりずっと安定した美しいアラベスクが出来るようになるのです。

たとえ一部でも自分を変えたいと思うなら、まずその先生のアドバイスを受け入れてみる事です。せめてその先生のクラスに出ている間は先生のスタイルを受け入れましょう。ベテランならクラスごとに多少のスタイルを変えることは出来るはず。踊りだってロマンティック時代のアームスは丸く作って踊りますでしょう?それと同じことです。自分を何も変えず不足している部分だけ上達させるなんて事は天才でもない限り出来ることではありません。

 さて、私達が一番おちいり易いのが“天然イノセント・タイプ”のA子ちゃんかも知れません(私は天然ドジではありますがイノセント(無罪)タイプではありません…どちらかというと“腹黒オディール”系の毒女タイプ?もちろん人様に危害は加えませんが)。

バレエの先生って何故か結構このイノセントお嬢様タイプが好きです。人柄もふんわり柔らかく口答えなどせず、いつもニコニコ笑っていて、発言が少し天然系。
で、この天然系のA子ちゃん、ものすごーく!レッスンには熱心で、遠くから毎日通って何クラスも受講するタイプ。しかし何故か全く上達しない。先生に直されるとなんとかその場では直ることもあるのですが、次のレッスンでは完全にリセットしてしまうんですね。

ごく簡単なこと、例えば「アン・ナヴァンの時の指先はもっと近づけなさい」とか「シュスの5番では両足に乗りなさい」とか、毎レッスンのたびに注意されるのに結局10年以上彼女は直りませんでした。私と友人Naccoちゃんは「彼女は直す気がないんだよねー、きっと」と話していたのですが、ある時A子ちゃんとお茶をしていたら「私は10年以上先生に習ったのに全然上手にならなかったし、ソリストにも上げてもらえなかった。」と彼女が発言したことに私とNaccoちゃんは絶句!「おいおい、上達したかったんかい?!」と驚きました。もちろん彼女に「貴女は自分から直さなかったでしょう?」とは言えませんでしたけれどね。A(^^;)

結局、彼女はバレエが好きで好きで踊っているだけで幸せなタイプ、レッスンに出てさえいれば上達すると思っていたのかも知れません。でも悪気はないのでしょうが、レッスンが終わると全て忘れてしまって、また真っさらな気持ちでレッスンを開始してしまうんですね。これでは上達はしません。

通常のバレエのクラスは大体1時間30分です。一つのパって何回練習できると思います?多くてもせいぜい数回ですよ。先生に注意を受けてから直すとすれば、正しい形で動けるのはその半分以下。そんな回数で身体が覚える訳ないですよね。毎レッスン毎に練習できるパは変わってしまいますし。つまり、あるパをレッスンで練習できる機会って本当に少なくて貴重なのです。まあピルエットくらいは毎回練習できますが、それでもレッスンを毎日受けられる大人なんて中々いません。

レッスンが終わった後では毎回先生の注意を頭で反復イメージし、レッスン開始前では前回の注意をテーマとし、パを与えられたら過去の注意の記憶を総動員して1回目の練習をする。レッスンは実験場であり修練場です!そのくらいの気負いがないと、週に数回しかレッスンしない大人が上達なんてしませんよ。注意の数が大雪のように自分を押しつぶしそうですが、その注意すべてが自分の財産なのです。忘れたらもったいない!お金出して買っているんですよ、その注意。そして大人素人には時間がないの!

と言っても、我も人の子、毎日が多忙な大人ではつい気が散って「あ〜帰りにアレ買って帰らなきゃ〜」とか「今夜のおかずは何にしよう〜」なんて、つい頭に走ってしまう事が少なくはないです。人様のことを偉そうに批判できないんですよね。しかしとにかく!レッスンとその行き帰りくらいは、なるべく意識してバレエ漬けを心掛けましょう!

 皆さんは自己満足ちゃんになっていませんか?「自分はこれは出来ている」とか思い込んでいませんか? バレエに“完璧”はありません。
今の自分に満足しない!踊る楽しみだけに満足しない!上達の一歩はそこからです。
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