■ バレエ・レッスンでのマナーについて

 さて、このページでは私の感覚でのバレエでのマナーについてお話をしたいと思います。何と言っても、もう数十年も素人バレエの波に乗っておりますので色々なものを見聞きして参りました。若い頃の私でしたら「これがバレエのマナーだっ!!」と言い切ったかもしれませんが、今や多種多様なお稽古場で、実に様々な考え方の方々がレッスンをなさる時代、私の感覚が必ずしも正しい常識とは言えないかも知れません。ここでお話するマナーは標準的な気遣いを中心にお話するつもりですが、何事も場所によって方言・流儀・価値観がございます。もちろん、書いてあることすべてを守る必要はありません。「まあ、こんな意識もあるのだなぁ」程度で読んで見て下さい。

 どこの世界でも必ず厳守しなければならないのは「人の迷惑にはならない!」という点です。これだけ守っていれば、大抵はどこでも乗り切れますので安心して下さい。但し!バレエの世界はロマンティック時代の西洋文化です。品位のある行動をとって下さいね。

* ご挨拶
 バレエの世界はもともとは芸事の世界です。本来は挨拶には大変厳しい世界!子供の頃から挨拶は徹底してしつけられました。バレエの舞台は基本的には午後の開演ですが、どの時間帯でも基本の挨拶は「おはようございます」になります。
お稽古場に入った時、更衣室に入った時、人とお会いした時に忘れずにご挨拶します。そして帰る時は「お疲れ様でした」や「お先に失礼します」と言って帰ります。人として最低限のマナーなのですが、最近は年配の方でも挨拶一つしない方がいらっしゃるので驚きます。
特に気を付けなくてはならないのは発表会などで舞台スタッフの方とお会いした時。舞台スタッフの方の胸先三寸で舞台が良い物にも悪い物にもなってしまいます。楽屋や舞台裏で舞台スタッフの方とお会いした時は「おはようございます」や「よろしくお願いします」を、相手に聞こえる声の大きさで言いましょう!
終了後はもちろん「ありがとうございました。」と「お疲れさまでした。」です。ピアニストさんや助手の先生がいらっしゃる場合はその方々にもご挨拶して下さい。

* 更衣室
 最近は更衣室でのマナーが大変に悪く感じます。更衣室はとてもせまくて全員が一緒に着替えを出来ないことも多々あります。おしゃべりに興じていないで、“早く入った人から早く出る!”これが原則です。広〜い更衣室なら椅子があれば座ってもかまいませんが、棚やロッカーの前に大きく自分の荷物を広げたり、床に座って着替えをするなんて、許されるのは小さい児童だけです。他人を思いやったら決して出来ませんよね?もちろんゴミを床に落として帰るなんてありえません。

* 服装
 成人クラスのウェアは基本的には自由です。但し、人とぶつかった時に相手に怪我をさせるような形の指輪類などは厳禁です!お教室によっては先生の意向がある場合がありますので、個人のお教室の場合は先生に伺ってみて下さい。本来は体のラインのわかる物。それが先生に対するエチケットです。先生に自分を直して頂きたかったら、ある程度は身体のラインのわかるウェアを着用しましょう。大判Tシャツなどは事情がある場合を除き、あまり感心できません。

* スタジオ
 スタジオでの並び方などは他のページで書きますが、とにかく「人の動きの邪魔にならないこと!」が鉄則です。

バーの位置は基本的には「スタジオに早く入った順」です。(お教室によっては大先輩等の“マイ・バー”の位置が決まっている事も実はあります。最初は知らないのですから構いませんが、通う内に空気を読み取っておくのも不愉快な目に合わなコツでもあります。もちろんそれは個人の考え方次第ですから、自分の意思で行動して構いませんよ。)時々“なりふり構わず”ダッシュしてバー位置を取りに行く方がいらっしゃいますが、大変に下品なことです。
後からバーのあまり空いていない場所に割り込む時は「すみません、こちらよろしいですか?」と周りに声をかけて入ると良いです。中には断る方もいますので、入る場所がなかったら先生に話して空けて頂きましょう。レッスン代をお支払いしているのですから使用する権利はあるのです!断わられた時は大抵は他に空いている場所があることが多いので探してみて下さい。(私もあまりに非常識な方には断った経験があります。先生から「適当に入って」と言われてしまったら、お墨付きを頂いたのですから「失礼します」と言って入り易い場所に入ってしまって構いませんよ。)

また、遅刻は良い事ではありませんが、大人になれば諸事情が発生して遅刻することも出て来るかもしれません。レッスンが始まってから受講する場合は、必ず先生に「遅れて申し訳ございません」と謝ってから。バーに入る時も前後の方に「すみません」と挨拶して入ります。入るタイミングは必ず!1つのアンシェヌマンの曲が終わってから!曲の途中で入っては絶対にいけません。それまでは端でストレッチ等をして待ちます。

バーにおいて先生がパの説明をされる時は、先生が鏡に映るように出来るだけ鏡と先生の間には立たないようにします。また(状況にも寄りますが)、説明をされている先生のすぐ真正面には出来るだけ立たない事をお勧めします。場所の余裕があれば後ろの方が見やすいように立って差し上げることも良い行動です。

センターでは、順番を待っている間はなるべく壁に沿って立っています。順番をさらいたいのは解かりますが、その場でごく小さくしか動いてはいけません。動いている人の邪魔や、先生が見づらくならないように気を使います。対角線の角(コーナー)はワルツなどでギリギリまで使用しますので、角(コーナー)は空けるようにします。

途中で振りを忘れてしまったら!、皆さんが動く方向へ一緒に歩いたり走ったりで移動しましょう。出来るパだけ動いても構いません。場所の邪魔にさえならなければ迷惑にはなりませんので。恥ずかしいかも知れませんが、そんなことは誰にでも起こりますし、歳を取ると忘れ易くなるのも現実です。ベテランだってしょっ中やってしまいます。ベテランになると一瞬の遅れで他の皆さんの真似が出来ますので、誤魔化しているだけです。先生には注意されますが、あまり気に病まなくて良いですよ。それより次に意識を向けましょう。
バレエでは間違ってしまったのは自分の責任です。もし自分が間違えて他の方がつられて間違えてしまっても、気にする必要はありません。他の方の場所をあきらかに邪魔してしまった場合のみ、アンシェヌマンの後で小さくお詫びしておけば角も立ちません。

自分のプレパレーションは前の組の振りが終わってから。本来は軽く走り込んでポーズします。行き届く意識の先生はアンシェヌマンの最後の位置をちょうどよく終わらせて下さいますが、そうならないことも多いので、前の組が最後の位置についたのを見計らって自分の開始位置に立ちます。前の組が下がって来るのに我先にプレパレーションの位置に立つのはとても失礼な行為なのです。子供の頃から同じメンバーでレッスンをしていると、“あうん”の呼吸できれいに入れ替わる事が出来るのですが、オープン・クラスが主流の成人クラスでは後から動く方が調整をしてあげる必要があります。

自分の振りが終わったら、いつまでもポーズを取らず斜め前へ走り抜けます。その時のアンシェヌマンにも寄りますが、基本的には近い方の斜め前へ抜け出れば邪魔になりません。(お教室によっては進行方向の斜め前のこともあります。)走り抜ける時も美しいバレエ走りが鉄則!走る練習にもなりますし、スタジオに入ったら常にバレリーナである意識でいた方が絶対に上達しますよ!

他の組を見ている先生の前はなるべく横切らないようにしましょう。仕方なく横切る時は少し頭を下げて、ささっと小走りで横切ります。

レッスン中は勝手に床に座ってはいけません。順番を待っている時に床でストレッチをする方がいますが、せまい日本のスタジオでは邪魔なだけです。怪我などで見学する時は、邪魔にならない場所があれば座って構いませんが、場所がなければ見学も遠慮をするべきです。リハーサルなどで順番待ちをする時は、可能ならばスタジオの外で、場所がなければなるべく鏡前と角以外の場所で小さく座って待っていましょう。

レッスン中の水分補給はしてもかまいません。昔は厳禁でしたが現在では身体の為には水分補給しながらレッスンをすることが奨励されています。但し、ボトル等が他の人の邪魔にならないようにしましょう。タオルも同じです。本来、タオルはバーに掛けてはいけないので邪魔にならないバーの足元に置きますが、汗ダラダラで床を汚すのもきれいではないので、他の方の迷惑にならない程度で臨機応変に使って下さい。(厳しい先生の場合はバーにタオルを掛けているとご注意を受ける事があります。) 水分補給については行った方が良いことは事実ですが、舞台の上では30分くらい出たままと言うこともよくあります。それに耐えられる程度の体造りをして下さい。

当たり前の話ですがレッスン中の私語は厳禁です!振りが解からなかったら先生に聞いて下さい。小さく一言で簡単に確認する程度ならば構いませんが、先生の説明が聞こえなくなったり、話しかけられた方の迷惑になるような行為は絶対にやめて下さい。人としての最低限のマナーですが、時々平気でおしゃべりをする方がいらっしゃるので困ります。

早退する時はレッスン前に先生へおことわりしておきます。理想はバーの終了時、アレグロの終了時などキリの良い時に抜けると良いのですが、それ以外で抜ける場合は1つのアンシェヌマンの練習が終わった時に抜けます。一緒の組になった人達に一言断って抜けた方が良いです。スタジオを出る時には、なるべく先生にご挨拶して抜けたいのですが、タイミングが悪い時はがアイ・コンタクトで目礼して退出されると良いですね。
痛みなどで抜ける場合も先生と同じ組の方に一言ことわって抜けましょう。

レッスン終了後にレべランスをしたら、私はスタジオを出る時に「ありがとうございました」と一礼して出るようにしつけられました。行うかどうかはご自由です。


 以上が標準的なマナーになると思いますが、「ひゃ〜大変!」なんて思った方もいらっしゃるかも知れません。一度にすべてのことに神経を使う必要はありませんし、日頃から気にかけていれば無意識に行えるようになりますのでご安心下さい。要は自分も気遣いをしていることが他人に伝われば良いのです。まだスタジオに慣れていない方は仕方ありませんが、あまりいつまでも迷惑をかけてしまうと周りの方や先輩から不愉快な扱いを受けてしまう事があります。好むと好まざると、日本は「自分から察する」世界ですので(特にバレエは女の世界)、不愉快な思いをしたくなければ、少し気を使うことをお勧めします。