先頭に戻る
掲載日:2018/1/12
■ 「更年期とバレエレッスン」

 まだお若い方にはご興味のない話題ですよね。しかし誰でも歳はとるもので、やがて自分に訪れるかも知れない症状です。先日まだ若いママ・バレリーナ族に「更年期ってどうなるんですか〜?」とか「レッスンできますか〜?」なんて聞かれたので、今回は更年期について少しお話したいと思います。

<更年期ってどんなもの?>
“更年期障害”とは何ぞや?というと、「女性ホルモンの減少が原因で、心と身体の不調をきたす症状」のこと。いわゆる“自律神経失調症”と言われる症状でございます。「症状」なのであって「病気」ではありません。多くは40代半ば〜50代半ば、60代手前くらいまでのどこかで、かかる人はかかります。生理がまだあるうちから不調が始まりますが、生理は回数や量が減少するだけではなく、逆に一時期増える人も居たりしますし、また1年に1、2回だけ生理になる時もあります。殆どの人がいずれは自然に治る症状なんです。しかし、ものすごく個人差が大きくて、気づかずに終わる人から寝込んでしまう人まで様々いらっしゃいます。大抵の人は軽度で済んでしまうようですので、あまりご心配なく! 更年期なんて来てから心配すればいいことなんですから。

 原因は女性ホルモンの減少なのですが、その他にもストレスや性格、体質など、要因は様々です。

 まずは症状ですが、本当に様々です。“ホットフラッシュ”と呼ばれるのぼせや発汗、めまい、怠さ、筋肉のこわばり、メンタル面でイライラしたり、うつ状態になったり、免疫力が下がったり、記憶力が低下したり、そして太ったり。

 仲間の情報からでは、やはり就寝時の発汗(寝汗)から気づき始める人が多いみたい。私もそうでした。“発汗”なんてものではなくて“爆汗!!”ですよ。頭のてっぺんから爪先まで布団の中でぐっしょり!シーツの上にビッグタオルを敷いて、夜中にパジャマやらタオルを何度も取り換えたりしていました。汗の不快感で起きてしまうのですよね。真夏はタオルケットをお腹に掛けただけで寝ているので良いですが、冬は布団の湿気が気になります。(ちなみに私のおススメはガーゼの素材のパジャマや布団カバーです。肌触りが良いので暑くて布団をはぐとすぐにサラリと乾いてくれるので助かります。(^^)v )

 寝汗の原因は昼間でも襲って来る“ホットフラッシュ”と呼ばれる症状。これは多くの方が体験するようです。“ホットフラッシュ”って急に体の全身や頭がカーッと熱くなって、すごい汗が吹き出します。大体数十秒から10分くらいそれが続くの。これ、メイクが崩れるのでホントに困るんですよ〜。洗濯し易い服しか着なくなりますし、お洒落着だと毎度クリーニング行き。頻度は人それぞれで、波があって、1日数回の時もあれば数十分おきに襲われたり、寒気とのぼせが交互に来る時もあったりします。冬は涼しいので楽ですが、夏は辛いです。

 あるいはメンタル的にもイライラして家族に当たってしまったり、気分が沈んで重度だと何も出来なくなってしまったり。うつ状態になり易いんです。

とにかく症状は色々!でも心配しないで。いずれは自然と治るのです。多くの場合はピークは長くても2年程度と言われていますし、慣れてくると対処も上手に出来るようになって来ます。

私が一番お勧めしたいのは「更年期である事を恥ずかしがらないこと!」更年期症状は30代でも出る人はいます。一昔前の男性優位の社会では「お前更年期か?ヒステリーだな」なんて職場で平気で言われたものですが、今ならセクハラですよね。更年期は卒業式のようなもので、煩わしい生理から解放されて、楽チンな生活への通過儀礼のようなもの。堂々としていて良いのですよ。汗だくだくでも息切れしていても、「更年期のせいだからゴメンね〜」の一言で終わり!却って周りの方が気遣ってくれるようになったりしますよ。

ただ、個人差は大きいですが、やはり更年期で身体やお肌は大きく変化します。私の場合は怪我が増えましたし、お肌も一気に老化、体力も筋力も減少した感じ。でも諦めないで無理をしない程度にあがいて人生を楽しむことがプラスですぞ!(^o^)b まだまだ人生30年以上は残っているんですからね。

 でもね、いくら病気ではないとはいえ、やっぱり心と体の不調は不便です。なので、ある程度大変になって来たら、私は婦人科での治療をお勧めします。我慢して生活するより、薬で楽になって活発に動いた方が短い人生の貴重な時間を無駄にしないですみますよね。
例えば、私の友人は娘を叱っていて「私、どうしてこんなに怒ってばかりいるのだろう」と気づいたそうです。そして漢方薬の治療を始めたらピタリとイライラは止まり、以前の自分に戻れたとか。「娘との関係が悪くなるところだった」と胸をなでおろしていました。
別の先輩は大好きなバレエのレッスンにすら行くのが億劫になって、「このままではバレエを失う!」と思ったそうです。治療後はまた楽しくレッスンを再開!60代の今でも楽しんでいらっしゃいますよ。

<更年期とバレエレッスン>
 さて、では「更年期の時ってレッスンではどんな状態になるの?」というお話ですが、まあ変化の無い方は変化はありません。平均的には体力や筋力、柔軟性も落ちますけどね。よく聞く症状では、

「動悸がする」・・・これは突然に心拍数が上がって来る症状です。痛みはなく数分で元に戻りますが、この症状になったら動かない方が良いです。「すみません、ちょっと動悸がするので休みます」とか、“動悸”と言いたくない場合は“めまい”と言った方が心配されないかも。すぐに収まるので次のアンシェヌマンから再開出来ます。但し、あまり頻繁に起こったり、痛みを伴うようなら一度お医者様に行かれた方が良いと思います。 私は最初はちょっとびっくりしました。しかし一緒にレッスンしていたお姉様方に相談したら「よくある事だから大丈夫!」と様々なアドバイスを頂けて、ホッと安心したのを覚えています。

「息切れがする」・・・呼吸が浅くなるのでこの時も動くことはストップして下さい。大抵すぐに回復しますので心配しないで。

「めまいがする」・・・これはちょっと厄介で、重度の場合はレッスンどころか日常生活に支障を来しますので重度の場合は治療をお勧めします。私の先輩はめまいが頻発するようになり、しばらくレッスンはお休みされていました。その間は床の上で行うフロアーバレエやピラティスを受講していたそうですよ。めまいは転ぶ危険性が高いので頻発するようなら、その日はレッスンを中断された方が良いと思います。

「記憶や集中力が低下する」・・・これが実はとーっても困る現象なんです。本当にすっかり記憶に入らないので、アンシェヌマンが覚えられなくなります。周囲の人は知らないのでアンシェヌマンの順番を頼られたりするとエライことに!私の場合はピークが過ぎたら無事にまあまあ戻りましたが、とても困ったことを覚えています。こういう時は仕方ないので、常連メンバーの小さいお稽古場ならその旨宣言しておくとか、大勢のクラスならば誤魔化すしかありませんでしたね。 また、集中力も低下しますので、特にポアントのレッスンやジャンプでは慎重になりましょう。

「骨折の危険度が上がる」・・・骨密度が低下して、いわゆる“骨粗鬆症”になり易くなります。「バレエを続けてれば骨粗鬆症にはならない!」は嘘ですからね!現実に私は自慢の骨密度が一気に低下してしましました。もちろん!骨に適度な負荷を掛け続ける事はとても良いことです。骨密度は気にしつつ元気にレッスンは続けましょう!

「心がナイーブになる」・・・メンタル面が弱くなっているので、先生や他人の何気ない一言で傷ついたり怒ったり。感情に振り回されず、「あ、自分は今ナイーブな時期なんだな」と自覚して、後から冷静に再考して受け止めた方が良いですよ!妙に周りの人が気になったりもしますけれど、あまり周囲を気にしないことです。

 以上、他にもさまざま症状が現れるかも知れませんが、これらの事が一気に全部襲ってくるのではなくて、1〜2個程度の症状に悩む人が殆どです。ホットフラッシュはレッスン中にもやって来ますが、汗をかいていても不自然はないので暑さでボーっとなる事だけ注意していれば大丈夫です。
“更年期”は「ああ、自分はそういう時期なのだな」と自覚して開き直って上手くコントロールして過ごすのが一番です。現在更年期の方もこれからの方も、人生のひとつの山場だと思ってあまりシリアスに受け取らず、気楽に乗り切って下さい。

<更年期の治療>
ここからは更年期障害の治療に興味のある方だけお読み下さい。

 「更年期の治療ってどんなことするの?」と興味のある方はネットで検索してみて下さい。実に沢山の情報で溢れています。平均的なケースでは、まずは婦人科(産婦人科ではなく婦人科ですよ)へ行って、血液検査をします。女性ホルモン(エストロゲン)の残有量が図れますので、少なくなっていて症状が辛ければ、多くの方はまず漢方薬を処方されます。女性ホルモンが少なくても症状に出ない人も多いですし、多く残っていても症状に苦しむ人はいます。治療をするかどうかは、自分の意志とお医者様の判断です。

更年期に効く漢方薬は主に「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」3のつですがこれ以外にも色々あります。この3つが効かなくても諦めないで他も試してみましょう。漢方薬は薬局や漢方薬店でも手に入りますが、婦人科で処方してもらう方が保険が効いてずっと安く手に入りますし、婦人科に通いなれる事でガン検診などの婦人科検診もついでに受けるようになったりして一石二鳥です。薬の処方も1カ月分くらいまとめて処方してくれますので、1カ月に1回程度通うだけです。

漢方薬がイマイチ効かなかった人には「ホルモン補充療法」(HRT)という方法もあります。こちらはダイレクトに不足している女性ホルモンを補充するという薬を服用します。ホルモン補充療法は過去に海外の研究で「乳がんの発生率が上がる」という報告がされて誤解されることが多いですが、現在ではこれが間違いであったという事が解っており、日本婦人科学科のガイドラインでも乳がんのリスクを否定してます。しかし未だにそれを信じる医師も居たりして、あまり勧めない医師も多いです。漢方薬より効果が表れやすく、アンチエイジングにも多少効果があるとも言われますが、乳がん・子宮がん・血栓症の既往症のある方は使用できません。私は3年くらいHRTを利用していましたが症状が一気に楽になりました。きちんと医師に処方してもらって服用すれば安心です。ジェネリックも出ていますので費用は保険適用で1か月で\1,000 程度です。HRTは大抵5年以上は継続させないという方針の先生が一般的です。5年で大抵の人は更年期のピークを抜けますし、7年以上の服用でごくわずかに乳がん発生率が上がるという統計が出ていますがこれも他の原因も考えられる為、HRT服用における乳がんリスクの心配はしなくて大丈夫なのです。乳がんの発生原因自体、まだ明確な要因は確定されていませんので。ただ、HRT治療を始めると大抵一緒に乳がんと子宮がんの定期検診も受けるようになりますので、その面で安心さが増します。

他にもプラセンタ注射やエクオール等のサプリメントもありますが、まずは漢方薬やホルモン補充療法の方が効果が出易いようです。またプラセンタ注射は1回でも受けると献血と臓器移植の提供者には一生なれなくなります。プラセンタ注射をしても老ける時は老けますからね!弊害を考えると私はあまりお勧めしません。エクオールは飲み始めるならば“ソイ・チェック”と言われる尿検査をしてエクオールが必要な身体かどうかを調べてから開始した方が良いですよ。通販で検査キットが売っています。
 以上、長々と更年期障害について書いてしまいましたが、ご興味のない方にはゴメンナサイ。ご興味のある方にはお役に立てれば幸いです。

私は更年期を長く患った方ですが、今思い返すと「もっと気楽に受け止めても良かったなぁ」とか「もっと開き直ってダラダラしても良かったかも知れない」なんて感じています。バレエのおかげで外出(交際)不足にも運動不足にもならないで済みました。やっぱりバレエって良いですね〜v(^o^)v。