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掲載日:2017/12/14
■ 「筋肉をほぐす」

 いよいよ本格的な寒い季節が到来しましたね。冬は身体が寒さで硬くなり易く、怪我をし易い季節であるとも言えると思います。

<身体の柔軟性>
 「身体の柔軟性」というテーマで考えると、“関節の柔らかさ”、“筋肉の柔らかさ”、“頭(思考)の柔らかさ”、“皮膚の柔らかさ”と4つの柔軟性が頭に浮かびます。この中で大切な順に並び替えると“頭→筋肉→関節→皮膚”の順番になるのではないかと思います。
頭が一番大切な理由は、バレエが上達する為にはおバカさんではダメだということ。アンシェヌマンも覚えなければなりませんし、どうすれば身体が自由に動かせるかに神経を裂かなければなりません。先生の注意も理解できなくてはなりませんし、更に個人競技ではないのである程度のコミュニケーション能力が必要となります。この世界では人間関係って結構重要でしょ?
そして一番影響が少ないのは“皮膚”だとは思うのですが、皮膚も身体を構成する一部ですので身体の柔軟性に全く影響がない訳ではありません。(でも皮膚が柔らかいと、ポアントの紐が食い込んで見えたり、レオタードのゴムが食い込んで見えたりと、ちょっとマイナスな感じもありますよね。(~ ~;))

 バレエでは「手足の可動域が大きい」という事はとても重要なポイントです。特に職業とするにはある一定以上の柔軟性が必須条件となりますが、素人の場合は無理のない範囲での可動域で動かすことが一番重要です。でも「手足の可動域」って厳密にはどういう事でしょう?主には「関節の動く範囲が大きい」という意味です。もちろん背骨など関節以外の部分の柔軟性も必要ですけれどね。

<筋肉の柔軟性>
 私も含め皆さんが必死にストレッチをするのは、この「関節の可動域」を広く保ちたいという理由からです。しかし「関節の柔軟性」よりももっと大切な柔軟性があります。それは「筋肉の柔軟性」です。なぜなら、身体を動かすのは筋肉で、筋肉の動きが悪ければどれほど関節が柔らかくても脚も上がりませんし高く跳ぶことも早くステップを踏むことも出来ません。バレエにとって、いえ運動にとって一番大切なのは「筋肉の柔軟性」を保つことなのです。

 「だから私は一生懸命ストレッチをしているわ!」と考えるかも知れません。しかしストレッチは筋肉の柔軟性を保つ為のほんのわずかな担い手でしかありません。ストレッチは筋肉の長さを伸ばしますが、筋肉の柔軟性を上げる効果はあまりないのだそうです。筋肉の柔軟性を上げるには筋肉の血行を良くしてあげることが一番!すなわちレッスン前には“ストレッチ”より“ウォーミングアップ”の方が遥かに重要だという事がお解かり頂けるでしょうか?

<筋肉って?>
 ここで少し“筋肉”についてのお勉強をしましょう。“筋肉”とは細い細い(そうめんのような)繊維が集まって出来ています。何本もの繊維が束ねられタイツのような“膜”に覆われ、更にその膜に覆われた繊維の束がいくつも束ねられ別の“膜”に覆われ、それを繰り返して筋肉は構成されています。この膜の事を総称して”筋膜”と呼びます。(ちなみにこの細い繊維が何本も傷つくと“筋肉痛”となり、膜ごと切れると“捻挫”や“肉離れ”になります。)


 筋肉は骨と骨に付着していて、複数の筋肉が伸びたり縮んだりすることで関節を動かし、固まる事で関節を固定します。つまり筋肉の大事なお仕事は“伸びる”、“縮む”、“固まる”という動作。“固まる”という言葉はちょっと良くないので“静止する”と言い換えさせて下さい。でもイメージは“固まって固定する”ことなのね。
具体的に言うと、前腿筋が伸びて後ろ腿筋が縮むことで膝が曲がり、前腿筋が縮んで後ろ腿筋が伸びる事で膝が伸びる動きとなります。他にも動きを助ける筋肉があり、それらの全てがバランスよく連動して関節が動きます。(但し「筋肉が伸びる」というのは「筋肉から力を抜く」という事ではありませんので注意して下さい。筋肉は伸ばす時も力を入れながらコントロールして伸ばすイメージです。例えばデベロッペ・ドゥバンを思い出して下さい、内腿(ハムストリング)側をゆっくりと前へ伸ばして行うでしょう?)


ちょっとややこしいですね。でもそんな知識を持っていると、ルティレの時に前腿には力を入れる必要はないという事が解ります。あまり詳しく追及する必要なないですけれどね。

 更に、筋肉一つ一つを覆う筋膜以外にも、全身タイツのように体の表面を覆っている筋膜があります。この筋膜は全身がつながっていますので、どこか1箇所が硬くなって伸び難くなると、身体の他の部分に影響を与えます。例えば背中の筋膜や筋肉を硬くした結果、お尻を経由して、膝が痛くなったりすることもあります。ゆえに理想は全身の筋肉と筋膜が柔らかい状態であること!“ふわふわの筋肉”を手に入れましょう!但し、正しく使われた時はある程度しっかりと硬くなる筋肉でなくてはなりませんよ。

 筋肉を柔らかくするにはマッサージやウォーミングアップ、長めの入浴などが効果があると言われていますが、入浴では結構長く入らないと筋肉の弛緩にまでならないらしいです。マッサージも局所的にしか出来ませんので、全身の筋肉を一気に柔らかく出来るのはウォーミングアップだけです。ですのでやはりストレッチの前はウォーミングアップが必須という事ですかな。

但し、人間の筋肉は使い過ぎると「疲労」という現象が起こります。乳酸が溜まったり血流が悪くなって組織が硬くなったり、筋膜同士が癒着(ゆちゃく)したりします。この“疲労”の厄介なところは、若い頃はすぐに元に戻るのに、年齢が高くなるにつれて戻るのに時間が掛かるようになり、また怪我の後遺症などで固まった組織は容易な事では柔らかくならないということです。
そんな疲労した筋肉を柔らかくするには本当ならプロのマッサージ師等にお願いしたい所ですが、中々毎日と言う訳にも行きません。そこで少しでも効果があるように自宅でも可能なマッサージを少しだけ簡単にご紹介します。但し、私も素人ですので責任を持てません。あまり強く長くやり過ぎないこと!それだけは絶対に守って下さい。(尚、このマッサージ方法は某メディカル・スポーツセンターのリハビリコースで指導されたやり方です。)本来は各部分ごとに効果的な姿勢があるのですがWEBでご紹介するのは大変なので、ご自分で色々と姿勢を変化させて一番効果がある方法を探ってみて下さい。

筋肉が良い状態で動けた時の快感はやみつきになりますよ!脚もいつもより高く上がる感じ(^^)b

<マッサージ>
 深いマッサージに適している時間は、お風呂上りや、夜の寝る前など余裕のある時間。身体を温めた状態で行うことが効果的です。あるいはレッスンに行く前に軽〜く行うのも良いでしょう。但し強く行ってしまうとレッスンには逆効果となりますので気を付けて下さい。

 今回ご紹介するアイテムは“グリッドローラー”“マッサージ・ボール”。流行っていますのでお持ちの方も多いと思います。

【グリッドフォームローラー】
 グリッドフォームローラーは「癒着(ゆちゃく)してしまった筋膜同士をはがす」という考え方に基づいた“筋膜リリース”という手法で全身のマッサージを行うアイテムです。短い時間で広範囲に体をほぐす事に長けています。
グリッドフォームローラーの使い方は、公式ホームページ使用方法が載っていますからそちらを参考にして下さい。
       


フォームローラーは正規品以外にも並行輸入品や他にも様々販売されていますが、あまり柔らかくない物、硬すぎない物、突起が鋭くない物を、(あまり価格が安過ぎない物)をお勧めします。また、突起のないストレッチポールとは用途が異なりますのでお間違え無く。

【Amazon】フォームローラー一覧  

【楽天市場】グリッドフォームローラー一覧   【楽天市場】フォームローラー一覧


【マッサージボール】
 上記のフォームローラーは広範囲を一気にほぐすには適していますが、体の奥深い部分の筋肉までは届きません。臀筋や肩甲骨周りなど深い部分もしっかりにほぐすにはマッサージボールを使います。

マッサージボールは床と体の間に挟んで使用するアイテムですが、最初はより柔らかいテニスボールから始めても構いません。但しテニスボールは滑りやすい事とすぐにヘタって柔らかくなりがちですので、痛みを感じなければマッサージボールラクロスボールを使用すると良いでしょう。私はラクロスボールを使っています。ラクロスボールを選ぶならお勧めは耐久性のある公式試合にも使えるNOCSAE公認の刻印が入っている物をお勧めします。(以前はAmazonでもバラ売りしていたのですが、最近はまとめ売りしかしていないようですね。楽天で少しあるようです。あるいはスポーツ用品店で取り扱っているお店もあるかも知れません。)
突起の付いているボールでも良いですが、突起の付いているボールを長く使うとお肌を痛めることがありますので私はお勧めはしません。私がご紹介するマッサージでは筋肉と筋膜を圧迫することに意味があるので、突起がついている必要はないのです。
硬過ぎず、柔らか過ぎず、皮膚を傷めず、滑らない、そんなボールがお勧めです!



【Amazon】マッサージボール一覧

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<マッサージボールの使い方>
 床の上(可能ならカーペット上)に横になり(あるいは両脚を前へ出した長座をしたりして)、床と身体のほぐしたい部分の間にボールを置きます。呼吸はゆっくりと大きめに続けて下さい。

まずは基本の圧迫からマスターして下さい。身体の圧迫したい部分でボールを上から押します。出来るだけ深く5〜10秒そのまま圧迫します。その後リリースして(圧迫を解いて)15秒以上弛めて下さい。その動作を5〜10セットくらい、ゆっくりと繰り返します。 圧迫と弛緩を繰り返すことで、血行を改善させることが出来ます。

ボールを押して体の深い部分まで圧迫する事に慣れたら、今度はボールを深く入れたまま(圧迫したまま)、ゆっくりと筋肉の縁にそって動かします。
よく速い動きでゴロゴロとボールを動かす人がいますが、速い動きでは血行の促進が上手く行かず、よくほぐせない結果となります。必ず深くゆっくりと、呼吸をしながらボールを動かして下さい。

“筋肉の縁”とはどのような部分なのかというと、下図のピンク色の線のように、筋肉の外側の縁をなぞる様に動かします。これは筋膜同士の癒着をはがす為に筋肉と筋肉の間でボールを動かすという意図を持っています。


筋肉が疲れると筋肉の太い部分をもみほぐしたくなりますが、これは素人では危険です。素人が自宅で出来ることは限られています。もみ過ぎが新たなる故障を招くことも多くありますので、このボールのコロコロ・マッサージも1箇所を長々とやらない方が良いでしょう。

 どこの部分をほぐすかは自分の気持ちの良い部分で大丈夫です。お勧めなのは、お尻、腰、仙骨の側、太腿の付け根周り、背骨の両側、腸脛靭帯付近、背中の肩甲骨の周りや、腹斜筋の側など。(特に腸脛靭帯付近は硬くなる場所で、ここが硬いとターンアウトが開き難くなるそうです。) 腕や脚を色々な形にして上から圧迫して転がせる姿勢を研究して下さい。ボールを当て難い部分などはフォームローラーを利用すると良いと思います。

お勧めなほぐし場所(水色)



 毎日治療院でマッサージを受けられたら天国ですが、中々そういう訳にも行きません。自宅で素人が出来ることは少しづつ出来るだけ毎日ほぐし続ける事!年齢が上がれば上がるほどにマッサージは大切になって来ます。テレビを見ながらの少しの時間でも良いので、くつろぐ時間を作り、コロコロと転がして癒されてみて下さい。かなり痛い所もありますけど(^^;)。(←良い状態なら殆どの部分は圧迫しても痛くないですからね!)