先頭に戻る
掲載日:2020/09/05
■ 「重心について考える」 過去記事を訂正します!

 「バレエで立つ時の重心はどこ?」「片脚で立つ時にはどこに軸を持って行けばいいの?」 誰しも一度は考えたことがある事ではないでしょうか?

 以前も書きましたが、バレエの技術も知識も時代と共に進化して行きます。私が若い頃は「重心は足指の上に乗せなさい。」と習いました。しかし大人になってバレエを再開した頃から、この“重心を爪先に乗せて動く”という技術に私は疑問を持つようになりました。

考えてもみて下さい。足が180度ターンアウトしているならば爪先は脚の骨と同じ横のライン上になりますが、到底180度開かない人間の場合は爪先の位置は脚の骨よりかなり身体の前になってしまいます。そこに重心を置き続けるのであれば脚の骨は垂直にはならないのですから、立つ為には“常に強く筋肉を使っていなければならない”という状態になります。これは昔の日本人ダンサーの脚が太くなる原因の一つになっていたそうです。


左の図の赤い丸を見て下さい。バレエではこの足裏の3点で床を押して立つことが求められます。この3点で床をしっかりと押す事で土踏まずが上がり、足裏をコントロールして使えるようになるからです。

現在判明している知識として、解剖学的にはパラレルで立った時の重心は“踵前の位置”(左図のピンクの丸)という位置なのだそうです。
1番ポジションや5番ポジションになった時は物体としての重心は両足の真ん中となりますが、片足になった場合も同じく“踵前の位置”(土踏まずと踵の間)に重心を置きます。確かにこの位置が一番小さな力で安定して立つ事ができます。



そして“ルルベに立つ時には重心を爪先へ移動させる”という方法が現在のメジャーな手法となっています。



私は以前の記事で「重心は“土踏まずの少し爪先寄り”の位置」(左図の青い丸)と書いていました。
それは多くの先生から「爪先の上に重心を置くのは踵がすぐに上がり易くする為」と聞かされていましたので、では爪先以外で踵が上がり易い重心の位置はないだろうか?と考え、踵を上げる時に足の中で真っ先に意識して上げるのは土踏まずですから、私は土踏まずの上に重心を置くようしたのです。その位置が一番踵が上がり易かったからです。


その感覚は今でも変わっておらず、現在はもう少し踵寄り(左図の緑の丸)の土踏まずの上に重心を置いてます。ちょうど“感覚的な”足裏3点の真ん中辺りです。

しかし“踵前の位置”が一番安定する位置であることは実感しておりますので、例えば片脚でグラついた時などは一瞬“踵前の位置”で重心を取り直して、上へ伸びると共に緑の丸の位置まで重心を移動させたりしています。

上図の青い丸から緑の丸へ、ほんのわずかな位置の移動ですが、足裏の感覚には大きな変化がありました。重心を足裏3点の中心に置く事で、以前より足指を押す力が弱くなりました。

現在の解剖学的には、ただ立っている時は「足指の力は抜けていなくてはならない」という事だそうなので、あまりア・テールでの足指については語られることがありません。

しかし私はア・テールでも足指は先へ伸ばす意識でいるべきだと考えています。タンデュ等で床を足裏で舐める様に使う時には足指は伸ばして使いますし、ポアントを履いた時にはしっかり足の指を使ってオン・ポワントまで立つ時に必要となる感覚だからです。また足裏3点を間違って押すと、足指が曲がってしまったり中指が浮いてしまったりしますのでそれを防止してくれます。
軽い力で構いませんので足指を伸ばす感覚も試してみて頂きたいと思います。
(※古い本ですが『インサイド・バレエテクニック』というバレエ解剖学の本では足指は広げて伸ばすよう記述されています。但し、この本は1997年の発行なので現在では変わっているのかも知れませんね。)

 <まとめ>
現在の知識では“重心の位置は“踵前”、ルルベに上がる時は重心を爪先の方へ移動させる” これが定説となっている手法です。

私はあえてもう少し爪先寄りに重心を取ったり、足指の感覚を大切にしています。

他にも重心は内くるぶしの下という先生もいらっしゃいます。大切なことは、自分はどの位置に重心を置く事が一番脚にストレスなく動きやすいのかを研究することだと思います。

<余談>
 ここでは重心の位置のお話ですので細かくは書きませんが、土踏まずの使い方について注意があります。上記に「足裏の3点を押して土踏まずを上げる」と書いていますが、足裏というのは固めて使ってはいけません。完全に脱力することはありませんが、プリエやジャンプの着地などでは土踏まずの高さも変わりますし、ジャンプで床を踏み切る際には足裏はムチのようにしなやかに使う必要があります。足裏を固めてしまわないように注意して下さい。足裏3点で床を押して足裏を上手にコントロールするすることが大切なポイントです。


今後、過去の記事も少しづつ更新して行くつもりですが、とりあえず先にこちらでご報告させて頂きます。過去の記事を参考とされていた方には大変申し訳ないのですが、今後もこのような事は起きてしまうと思いますので、ご留意の上ご容赦頂けましたら幸いです。
m(_ _)m