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掲載日:2016/8/7
■ 基本と反復が一番大事!

 どのような競技もそうですが、身体を動かす訓練の中で一番大切なのは基本練習と反復練習です。「当たり前の事よね」と思ってはいても、実はバレエのレッスンはこの2つが結構おろそかになってしまう訓練形式となっています。

さて、大人からバレエを始めた皆さん、入門クラスを早々に抜け、基礎クラスに移ってから各パ毎の反復練習ってどれくらい行っていますか?「私のクラスではまだまだ反復練習ばっかり」という方はとても良いクラスを受けていらっしゃいます。「私のクラスではほとんどがコンビネーションのアンシェヌマンになっている」という方が現在では多いのではないでしょうか?“大人からバレエを始めると基本の反復練習をする機会が殆どない”というのが残念ながら今の日本の現状です。同じ動きばかりの反復練習はつまらないですからね、生徒さんも飽きてしまわれるので最近は基礎のクラスでもコンビネーションで教える先生方が殆どです。これは仕方のないことで、“バレエを習う”ことの目的が“楽しむ為”である以上、そこそこ踊りに近い形で練習する方が楽しんで頂けるのでそうしている事が多いのだと思います。「趣味としてバレエを習う」上ではそれも決して悪い事ではないのですよ。しかし「きちんと美しくバレエを踊る」という為にはとても大きなマイナスだと私は思います。

 本来は児童の基本練習は各パの反復練習から始まります。幼児から低学年くらいまでは反復練習がレッスンの殆どを占めています。パッセならパッセとルティレ・バランスだけ、アッサンブレなら移動なしのアッサンブレとスーブルソーの繰り返しです。シソンヌも対角線上にひたすらシソンヌだけで移動し最後だけ走って退場。コンビネーションは短い物がホンの少し。それもゆっくり行うのでかなり深筋や関節周りの筋肉がしっかりと鍛えられます。高学年のお姉さんになってようやくある程度のコンビネーションになって来ます。そして中学後半〜高校では非常に長い複雑なアンシェヌマンを練習します。 最近では児童にも早いうちから複雑なコンビネーションを教える教師がいますが、ロシアのワガノワ・バレエ学校でも英国のロイヤルでも低学年の初級クラスではシンプルな反復練習が中心となっています。

 従って大人からバレエを始めた方には残念ながら、土台のしっかりしていない基礎に斜めに木を育てているような現象が起きてしまいがちなのです。もちろんプロを目指している訳ではありませんし、趣味の楽しみの為にバレエを習っているのですから「曲に合わせて体を動かす→踊る」楽しみを味わうことが目的なのですが、基礎のおろそかな技術は体の故障や、技術の限界を作ってしまいます。もし少しでも正しい技術を身に付けたいならば、自分にハンディがあることを自覚して、不足している物を補う意識と努力をしてみましょう。

大人から始めた方ののハンディは主に以下の点にあると思います。
  1. 正しい「形」を視ていない(知らない)
  2. 基本の動き方を教わっていない
  3. 筋力が足りない
  4. 体を動かす神経が訓練不足
  5. 音楽性の訓練が不足
子供の頃から習っていた人でも上記の不足は多々あるのですが、大人から始めた方にまず知って欲しい弱点です。
上記のはレッスンでなければ身に付けることは出来ませんが、より敏感に意識してレッスンすることで訓練成果は上がって来ます。
はレッスン・ビデオ等を繰り返し見る事や、先生の形を目に焼き付ける事で身に付けることが出来ます。バレエの訓練にはイメージが非常に大切です。
は児童のレッスン等を見学することが出来れば参考になるのですが、「基礎」や「初級」のレッスン・ビデオでも知ることが出来ます。できればワガノワや橘などのバレエ学校のビデオを見て下さい。但し生徒の演技は正確性に欠けますので気を付けて!必要なのは先生のアドバイスです。
は最近ではピラティスジャイロキネシス等、レッスンの補助になるようなエクササイズが色々ありますし、ピラティス等は自宅でも容易にできますので訓練としてはお勧めです。

如何でしょう?不足を補うアイテムは色々とあります。しかし私がお勧めしたいのは一番手軽に出来る、“レッスン後、スタジオを出ていく前に復習をしましょう。自分で反復練習をしましょう!”ということです。残念ながら不足している全てを補うことは非常に難しいです。でも少しでも前へ進みましょう。自分がその日出来なかったパの確認や、苦手なパの反復練習をしてレッスンを終えるのと、何もしないで終えるのではやがて大きな差が出来てきます。周りの目など気にしないで沢山失敗&修正をして帰りましょう!

 「高望みをしない」という事と「絶望して諦める」という事は少し違うと思います。「高望みはしない」というのは例えば「今からプロのバレリーナになる!」とか「中高年以上で180度開脚のグラン・ジュテをずっと繰り返す」とか、現実にはかなり実現不可能な野望を捨てるという事で、「絶望して諦める」とは“今の自分から成長しようとしない”という事です。穴の開いたバケツに水は溜まりません。穴はふさがなくては!
バレエは故障さえしなければかなり高年齢になっても楽しむことが出来る習い事です。少しづつでもより美しくより軽々と踊れるようになることがバレエを習う醍醐味、踊る歓びなのではないでしょうか?
上達は自分の心構えひとつです。今いる所から一歩でも前へ進む努力をしましょうね!私も頑張りますっ!!!

<余談>
 最近あまりにいい加減な基本を教える先生がいたりします。例えば対角線上を進む“ピケ・アン・デダン(ピケ・ターン)”。本来はまず対角線上に向いてピケ・ルティレ(ピケ・パッセ)で正しく止まる練習をしなくてはなりません。腕はアラスゴンドとアン・ナヴァンの両方で訓練します。多くは対角線に対して90度の角度を向いてターンを始めますが、ロシア式に対角線上に向いた角度からターンを開始する練習を行うとより垂直&水平に立つ訓練になります。それを突然「対角線と並行に後ろを向いてルティレで立って回る」と指導する先生がいるのには驚きを通り越して腹が立ちます!これでは周りきれずに軸や両肩を斜めにして立つ癖が付いてしまいます(~o~)b ピケ・ターンで軸をわずかに傾けて良いのは、速いスピードで円形に動くマネージュをする時だけです。初級ではわざとゆっくりと回らせて軸を真っ直ぐに保つ訓練をしなくてはならないのです。
 このようにいい加減な指導を行う教師も少なくない事が現実ですので、皆さんはなるべく正確な演技を視て目を養って先生を選別する力を養って下さい。もちろん演技が上手だから指導も上手という訳ではありませんが、安易な教え方をする先生には「細かい説明をしない」「質問されることを嫌がる」「他者のレッスンを受ける事を許さない」「お調子者でノリでレッスンを行う」等、色々特徴があります。大人だからいい加減な先生に教わっても良いという訳では決してありません。

 また「出来ない時には基本に帰る」という意識もとても大切です。例えばピルエットが回れなくなったら、5番ポジションからピルエットを開始してみて下さい。軸足後ろと軸足前の5番両方でやってみます。爪先→付け根ポイント→丹田→首→頭頂部(背骨は感覚に個人差があるので抜かしています) と垂直になっていますか?両脇ラインはしっかりと立って締まっていますか?両肩は下りていて水平でしょうか?胸は両側に張れていますか?ルティレは限界まで開けていますか?(確実に90度開いていなくても構いません) 足指は適度に床を押していますか?チェックポイントは様々あります。ルティレでは真っ直ぐに立てるのに回ると崩れるのであれば、下腹と体幹の筋肉が弱い可能性が高いです。レッスンとは別に筋トレをしてみましょう。同じ方法で失敗を繰り返していては修正は出来ません。やり方を変えて工夫してみて下さい。
(私は回転が苦手だったのですが、この方法でピルエットが楽になりました。)