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■ 発表会は加点方式

 「バレエ上達へのテクニック」「後タンデュは気持を込めて」という記事を載せました。踊りやレッスンでのプレパレーションのポーズの作り方やタンデュでの足の使い方について書いた内容なのですが、プレパレーションの動きってホントに人の注目と期待を集める大切な動きなのです!

以前ある生徒さんにプレパレーションでもっとアピールするようにアドバイスをしたところ、「踊りの中身が大したことないのにプレパレーションだけ派手にアピールするのは恥ずかしい。」というお気持ちを伺いました。なるほど、日本人らしい奥ゆかしい気持ちはとても素敵だと思います。しかし「恥ずかしい」という気持ちはバレエには不要!バレエの根本は“人様に観て頂く舞踊”なのですから、どんどん開き直って踊りましょう。

よくレッスンでも順番や技術に自信がないのか、オドオドと人の後ろを付いてくるような感じに踊る方がいますが、そんな様子を見て私はいつも「なんてもったいない!」と感じています。胸を張って堂々と踊ればずっと上手に見えるのに。そしてそのように踊らなければ観ている人の目には決して良くは映りません。たとえ荒削りでもアピールして来る人の方にこそ、人は魅力的に感じるものなのです。「私は目立たなくて良いの」と思う方ならそれでも結構ですが、観客の目(レッスンでは先生と他の生徒さんの目)を意識することは自分を高めて綺麗にしてくれる大きな要因です。「人に観られる→綺麗に観られたい→細かい所を注意する→上達」という感じに自分を鍛えてくれるのですから。

「人の視線が怖い。人目を意識してレッスンをしたくない」、実は私もこちら派の性格をしています(プラスけっこう見栄っ張り)。ですので若い頃はいつも後ろの方でコソコソ練習していました。人には心身共に調子がありますから、時にはそんな閉じた状態でのレッスンでも構わないと思います。でも、(場所の立ち位置はどこでも良いのですが)自分が気持ちを込めて踊っている内に、それが身体から溢れ出して来て、それが観ている人に伝わった時の快感と、誉めて頂いた時の喜びは、一生忘れられない思い出となります。もっともっとバレエが楽しくなる!自分から気持ちを込めて動かないとそんな体験は決して出来ないのです。

私は「目立ちたがり屋になりましょう」と言っているのではありません(もちろんそれでもOKですが)。そうではなくて「自分の踊る気持ちを全身で表現している内にそれが自然と観ている人に伝わり、人の目を集める。」と言いたいのです。ですので、もっと気持ちを込めて、もっとアピールして踊りましょう!。

<発表会は加点方式>
 バレエの指導をしていると、どうしても自分の目が人の粗を探す「減点方式」化している習慣がついてしまいます。でもバレエを楽しみたいなら実は「加点方式」に目を変える方が良いのです。だって「あ〜あれも失敗してる、これも完璧でない」と観るより、「あ〜綺麗なポーズ!、かわいい笑顔!、楽しさが伝わる〜」と観た方が、幸せ気分のお裾分けにありつけると思いませんか?これがプロの公演だと話はもっとシビアにはなりますが、まあ原則は同じ。プロの場合はあまりにお粗末ですと「席代返せ!」という気分にもなりますが、素人の方の発表会やレッスンでは、演技者の良い所に気づいて楽しんで、そして「盗んだ」方がおトクだと思うのです。

舞台の本番の時などは「失敗したらどうしよう。身体が引き上がっていない、脚が震えている、身体が硬くなってる。」なんて感じてしまう方も沢山いらっしゃると思います。そんな時は思い出して下さい。素人発表会の本番は加点方式です!

難しい技はね、出来なくて当たり前!だって発展途上なんですから。もし群舞で失敗しても実は他の仲間は同情こそすれ、そんなに怒ったりしませんよ。だって他の方がより上手に映るじゃないですか(^.^)b それに自分にだって起こるかも知れない事故です。他人を笑えません。まずは、技で失敗しても点数がゼロなだけでマイナス点は付かないと思って下さい。そして得意な動きや表現で点数を稼ぎましょう。バレエは見た目の印象がとても大切。例えばグルグルの勢い任せのダブルターンより、完璧なスローシングルターンの方が何倍も難しいし美しいです。技で失敗しても絶対に崩れずに(5番)ポジションまで戻ること!これがとっても大切です。プロがノーミスに見えるのもこんな所が大きく影響しています。例えばもし回転で軸足がポアントから降りてしまっても、ルルベのまま何事もなかったのようにそのまま回転を続けるのです。しぶとさと粘りが大事!

<得意な物で点数を稼ぐ>
大人初級者さんが大技を身に付けるにはとても時間が掛かります。もちろん大技が成功すれば嬉しいですが、そればかりに固執するよりももっと手っ取り早く手に入る美しさを追及しましょう。それは技以外の“パとパのつなぎ”だったり、“ポーズをきちんと作る・止まる”こと、“音楽よりほんのわずか早めに動き始めて音楽と一体になる”こと、だったりします。実はバレエのポーズを美しくとる方が技を習得するよりずっと難しいとは思うのですが、取りあえず平均値まで速く到達するものがこれらの物なのです。そしてその意識を続けて行くと、身体の準備も出来て不思議と技も出来るようになって行くのです。

まずは、気が遠くなるほど丁寧に動く事!パ・ド・ブレできちんと爪先を伸ばしていますか?指先はそろえて腕を長く長く伸ばしていますか?首を折っていませんか?例えば両手を開いてポーズをする時、まず背骨を頭上へ真っ直ぐ伸ばし、脇を真っ直ぐ伸ばして、それから腕や肩を開くと横隔膜は開かなくなります。これらは一瞬の注意をするかしないかで差が出ます。自分では出来ているつもりでも現実にはまだまだ未熟で、もっともっと美しくなる余地があるのです。大人は上級者より初級者の方が変化がずっと速いのですから!

プレパレーションが一番きれいであっても良いのです。次には終わりのフィニッシュが美しくなり、途中のポーズが美しくなり、全体の印象が上がる!それを目指しましょう。出来るところをアピールしないで、どこをお客様に見せるのですか?!

<バレエの先生は減点方式>
 現代の若い先生方は違うでしょうが、バレエの先生は基本的には褒めてくれません。生徒のダメな所を指摘するばかりです。私達の世代では先生には「注意されてなんぼ」「注意がなければマシということ」「そして長く注意がなくなるのは先生から相手にされなくなったこと」なんて言いました。そう、レッスンを受けるというのは「お金を出して自分を直してもらいに行く」という事なのですから。コツの伝授だけがレッスンを受ける目的ではありませんし、踊りたいだけならスタジオを借りて自由に踊れば良いのです。師匠のご注意は宝物!・・・と素直に思うようにしましょう・・・難しいけど(^^;)。

<自分は加点方式の人だけを相手に踊る>
 世の中には減点方式で人の踊りを批判する人が少なからず存在します。客席の中にもお稽古場の中にもです。しかし私達が意識するのは加点方式で観てくれる人達だけで良いのです。だから安心して、出来る部分をどんどん伸ばして行きましょう!もちろん先生の目は一番意識しなくてはいけませんけれど。

 人生は短く、踊れる時間も限られています。今を楽しんで大切にしましょう!大人素人は“雰囲気美人”ダンサーになる!それが目標の一つであっても良いと思います。さあ、“雰囲気美人”目指して楽しくお稽古しましょう!