ピケ・ターンは横進みではない 2


 今度はピケ・アンドゥオールの動き方についてお話します。ピケ・アンドゥオールこそまさに“回転する”と言うより“身体をひっくり返す”と言う方が適しているような回転です。ピケ・アンドゥオールにも1回転と3/4回転とありますが、速度が速まると3/4回転と言うより1/2回転という程度にしか片脚軸での回転はしません。その代り、ピケ・アンデダン(ピケ・ターン)より少し回転しづらいパだと思います。

 ピケ・アンドゥオールは連続して行うよりも、パとパのつなぎで1回転行って次のパに入る為に使用されることが比較的多い回転です。ですので、次のパの為に回転の終わりはピケ・パッセ(パッセ・ルルベ)の段階で終わるという感覚でいて下さい。

ピケ・アンドゥオールもアンデダンと同じく「自分の正面に向かって進んで行くパ」です。その感覚を忘れないで下さい。

(方向について)
 身体の向きや進む方向についてはワガノワ式の番号で記述します。


<1回転のピケ・アンドゥオール>
 それでは1回転のピケ・アンドゥオールについて説明します。ここでも2番の方向に向かって対角線上に進むと仮定します。図は正確ではありませんのであくまでイメージとしてご覧下さい。特に図(5)は腕と脚が少し捻じれているように見えますが、肘と膝は同じ方向に向けて身体の横方向に位置して廻ります。

   図(1)
まずはピケ・ターンと同じように、右脚を進行方向の2番の方向へ出し左脚はプリエ、腕は右側を前へ左側は横へ開いて構えます。
図(2) 図(3) 図(4) 図(5) 図(6)

図(2):前へ出した足にトンべして足の真上から右足に乗ります。腕はアラスゴンドにして2番方向を正面にして右脚をプリエ、左脚を横のデガジェ(バットマン・タンデュ・ジュテ:爪先は床から浮いている)で立ちます。
図(3):基本は2番を正面にして脚は5番ポジションのシュ・ス―、腕はアラスゴンドあるいアナヴァン(アン・ナヴァン)の状態で立ちます。
図(4):首を残して、右足の爪先で床を蹴り右脚を前パッセの状態にして回転を始めます。
図(5):首を返します。右肘と右膝はどんどん回転方向へ進めて下さい。
図(6):きちんとパッセのまま2番の方向まで回転します。回転後は基本では5番ポジションあるいは図(1)の状態へ戻りますが、次のパに続くことも多いのでピケ・パッセで終了と思っていて下さい。
(1)〜(5)を繰り返して、2番の方向を自分の正面にとらえて2番の方向へ進んで行きます。

さて、図(3)の段階で「基本は2番を正面に5番ポジションで立つ」と言いましたが、ゆっくりと5番シュ・スーを見せる振付けでない限り、現実ではあまり2番を向いて5番シュ・ス―に立つことはしません。シュ・スーに立つ時は既に回転を開始している事が多いので下記の図(7)の様に3〜4番の方向を向いて立つ事が普通だと思っていて結構です。但し、本来はシュ・スーを美しく見せる為に2番の方向を向いて両脚で立つということを忘れないでいて下さい。出来なくてもきちんと練習はしておきましょうね。
図(2) 図(7) 図(4) 図(5) 図(6)
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<首と腕・脇のコンビネーション>
 上半身の使い方はピケ・アンデダンと全て一緒です。腕は先行する肘を後行する手と脇が追掛ける、手の平を素早くみぞおち前へ固定する。首は正面の1点を見据え、後行する肩がアゴの下に来たら素早く水平に返す。

この回転では後ろに重ねていた右足の爪先で床を軽く蹴って前パッセに開きますので(パッセに抜くので)、より回転力は増します。その分軸を真っ直ぐ垂直に立てていないと上手く廻れません。コツは尾骨を床に向け両側のお尻を水平に、そして先行する肘とパッセの膝の位置を合わせること。上の図(5)では肘と膝が捻じれているようになってしまっていますが、正しくは体の正面に対して(実際に真横にはなりませんが)真横に肘と膝を置いて廻って下さい。

<要は図(2)>
 上の図で一番大事なのは図(2)の左足を横に出したプリエです。図(1)で前に出した足へのトンべは必ず出した足の真上から踏み込むように(足の真上に付け根ポイントを置く)。横に出す左脚は踵を起こして(ターンアウトして)自分の真横より少しだけ前へ出します。足指の付け根(あるいは土踏まず)→付け根ポイント→丹田→頭頂のイメージで垂直なラインを意識し、肩や脇、肘、腰骨は水平にしてプリエをします。(プリエの基本は下へ沈むのではなく床を押すことで上へ伸びる上がる感覚ですよ。アラスゴンドにした腕をテコにして上へ這い上がりましょう。)

更に重要なのは出した左脚をターンアウトしたまま自分の丹田の真下へ真っ直ぐ直線的に引いて来ることです。出した脚を引く力は爪先ではなくて内側のハムストリングです。内腿を閉じることによって、身体を崩すことなく、ターンアウトを守って、横に出した爪先がお尻の真下に戻って来ます。軸脚をターンアウトすることで回転前の“溜め”が出来ますのでスムーズに廻り始めることが出来るのです。横に出した足はロンデ・ジャンブのように廻しては絶対にいけません。このパは左脚を廻す力で回転を始めるものではないからです。


そして図(7)や(4)に立つ時には、床を強く押して強い垂直軸を作ります。腕をアナヴァンにする時に脇を更にしめることを意識してみましょう。
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【ピケ・アンドゥオールの練習】
 1回転のピケ・アンドゥオールの練習はひたすら垂直・水平に上がる訓練です。下記のようにプリエから水平に上がって軸をつくる練習をして下さい。この練習は移動しませんのでその場で繰り返します。ピケ・アンデダンと同じくピケ・パッセのポーズは一瞬で作ります。右足の爪先で軽く床を蹴る(床を弾く)ことによって速くパッセを作ることが出来ます。これはポアントを履いた時も同じ感覚で行います。

 次はプリエから5番シュ・スーを一瞬で通過して、プリエからすぐにピケ・パッセを作る感覚で練習します。但し!5番シュ・スーを通過する意識(出した足を丹田の真下に引き寄せる感覚)は忘れずに動いて下さい、シュ・ス―は決して省略しません。またピケ・アンデダンのようにピケに飛び乗ってはいけません。あくまで軸脚は引き寄せて立ちます。

 垂直に立ってパッセを保てるようになったら、図(2)〜(6)まで1回転する練習に入ります。
図(2) 図(7) 図(4) 図(5) 図(6)
回転する時は図(2)でしっかりと床を押して、図(7)では止まらないように一瞬で通過します。首を残したまま、先行する肘とパッセの膝は同時に開き(引き)、後行する手と脇が追掛けます。次の瞬間には首を返して身体を“ひっくり返して”下さい。肘と膝を引き続けなくては2番の方向まで廻れません。しかし先行する側の脇は垂直に立てて横に引いてはいけません(脇はしめたまま)。

 以上がピケ・アンドゥオールの基本です。次は連続して廻る時の動き方を説明します。

<3/4回転のピケ・アンドゥオール>
 連続して廻るピケ・アンドゥオールはアンデダンと同じく、8番の方向へ右脚を出し(デガジェ・ドゥヴァン:爪先は床から浮いている)、90度のロンド・ジャンブをして回転を始めます。そして3/4回転して8番の方向まで廻ったら次の回転のロンデ・ジャンブに入ります。
3/4回転のピケ・アンドゥオールは片脚で廻っているタイミングはほぼ半回転分くらいしかありません。先行する右脚をロンデ・ジャンブしますので廻り易いはずです。プリエでしっかりと進行方向を自分の正面に捉えて廻って行きましょう。
また、速度が上がる程に5番シュ・スーで立つタイミングは殆どなくなって来ます。しかし一瞬は必ず5番シュ・スーを通します。プリエから5番を通過してピケ・パッセへ移る時は必ず軸脚をしっかりとターンアウトして付け根ポイント(あるいは丹田)の真下へ爪先を引いて来て下さい。パッセの脚を下ろす時は必ず軸脚に沿ってお尻の真下に下します。
図(8) 図(2) 図(4) 図(5) 図(8)
 ピケ・アンドゥオールはパッセにした脚が先行して回転しますので、パッセをした側のお尻が上がり軸脚側の肩や脇が下がってしまうケースが非常に多いです。きちんと骨盤を立てて両側の付け根ポイントをお尻の下に寄せる感覚で廻って下さい。


 以上がピケ・ターンの説明になります。上手くお伝え出来たでしょうか?動きを文章で伝えるのは本当に難しいですね。コツや感覚は人によって様々です。皆さんの先生方はもっと解り易く身体で説明して下さると思いますが、それらを忘れずに自習に活かしてみて下さい。ピケ・ターンはレッスンの後のわずかな時間でも自習し易いパです。おススメは対角線ではなく鏡に向かって、鏡を正面として鏡に向かって練習してみて下さい。
「2番方向を正面に捉えて、2番の方向に進む」、アンデダンもアンドゥオールもピケ・ターンとはそのような意識で廻る回転だという事を忘れないで下さい。


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