横隔間は背中から閉じる


 「横隔膜を閉じて!」 これも先生からよく言われる言葉です。
横隔膜とは本来は呼吸をする時に使われるマッシュルームのような形をした肺近 くの筋肉なのですが、バレエでは「みぞおちにある左右の肋骨を横につないでいる筋肉」 と考えていて下さい。 バレエ初級者の場合はこの横隔膜が開いてしまうことが多くあります。
 
開いてしまう原因は主に、
などがあります。
 
それぞれ自分の身体を垂直に立てられるようになれば自然に閉じていくのですが、 手っ取り早く閉じるには 背中を垂直に起こして、背中から肋骨ごしにまわして 閉じてやれば楽に閉じる事が出来ます。(下図参照)
時々「前で横隔膜を閉じろ」と指導される先生がいらっしゃいますが、背筋がしっかり立っている先生方には容易に前から閉じることが出来ても、まだ胴回りのコルセット部分の筋肉が弱い初級者には、常に前を閉じる意識で動くのは至難の技!胃に力が入ってしまい、とても疲れる結果になってしまいます。

<背中から見た横隔膜の閉じ方ライン>


 上の図は背中の図ですが、赤いラインに沿って背中からみぞおちを閉じてみて下さい。ラインは必ずウエストより下から始まり、背中の部分をなるべく長く垂直に伸ばしてから、肩甲骨の下の位置から肋骨の周りを前へ向かって水平に意識を廻していきます。 そもそも横隔膜が開くのは背中が大きく湾曲しているせいですから、背中を真っ直ぐに立ててやれば、おのずと横隔膜は肋骨の中に納まってしまいます。同時にお腹も肋骨の下へきちんと入って来るはず。

先生方が言う「胸を開いて!」という意味は、胸郭上部(バストポイントより上)を左右横に引っ張る事であって、横隔膜を開く事ではありません。「胸を開いて!」と言われたら、取りあえずは両肩を横へ引っ張るようにして、横隔膜は閉じていて下さいね!

また後ろへのカンブレ(反り)には2種類の方法があります。胸から上を反るカンブレ(=胸椎で反る)と、腰から反るカンブレ(=腰椎から反る)です。バレエの基本は胸から反るカンブレです。腰から反るカンブレはキャラクターダンス的表現の時とコンテンポラリーダンスの時にしか使いません。どちらも必要な訓練ですが、両方ともまずは腰から背骨を1つ1つ上へ離す様に伸ばして行う事が大変重要です。胸からのカンブレはみぞおち辺りの胸椎の中央を起点として、肩甲骨から上の部分だけを後へ倒すように意識します。骨盤から肩甲骨の真下まではなるべく垂直に。 腰からのカンブレは、骨盤前部の腸腰筋(ビキニ筋)を垂直に引き上げ、腰を出来るだけ伸ばして(腰を折らずに大きく湾曲させて)行います。 これが正しいカンブレのやり方です。

正確には、上図の背中の垂直ライン部分はアラベスクの時やセンターで動く時には、やや湾曲させなければならない場合があります。 しかしこのラインをいかに長く伸ばして使うことが出来るかで重心が安定し、美しいバレエのラインが造れるのです。意識しなくても横隔膜が閉じている事ができるようになるまでは、バーではこの直線を意識して守って下さい。デリエール(後ろ)へ脚を出す時も、ダンデュやデガジェ程度の高さであれば背中の上部は殆ど傾斜させることもせずに垂直で行うことができます。(骨盤はやや前傾します。)

プリエの時もジャンプの時も、このコツさえマスターしてしまえば横隔膜はちゃんといつでも閉じているはずです。但し、肩が上がらないように気をつけましょう!
「横隔膜は背中から閉じる!」  悩んでいる方はぜひ試してみて下さい。


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