方向 と 身体と脚の向き


※ 画像は正確ではありません。あくまでイメージとしてご覧下さい。

<方向>
 バレエのレッスンでは、自分を中心に45度づつ方角に番号をつけて指導をすることがあります。但しメソッドによって割り振られた番号が異なるので日本の先生はあまり使用しない傾向があります。私としては番号より言葉で覚える方をお勧めしますが、ロシア系列の先生に指導を受けている場合は覚えておくと良いでしょう。
 ※RADメソッドはおそらくチェケッティと一緒だったと思いますが、番号の割り振りがワガノワの方が判りやすいので、RAD系列の先生でも方角の番号はワガノワ式を使用する先生も多いです。ワガノワ式は「正面を1として右回り」として覚えると良いです。

(方向を表す用語)
 方向の用語はよく出てきます。特に自分を基点とした方向はきちんと覚えましょう。
自分を基点とした方向 動きを伴った時の方向
前方:  ドュヴァン (devant)
後方:  デリエール (derriere)
側方(横):ア・ラ・スゴンド (a la second)
前方に:   アン・ナヴァン (en avant)
後方に:   アン・ナリエール (en arriere)
側方に(横に):ドゥ・コテ (de cote)
対角線上に:アン・ディアゴナル(an diagonal)

※ “シンメトリー”(symetrie:仏/symmetry:英)は「左右対称に」という意味です。先生から舞台等で「シンメを取って」と言われたら「左右対処に位置しなさい」という意味ですし、スタジオで「シンメで始めて」と言われたら左右に分かれて同時に始めるという意味です。シンメでアンシェヌマンを始めて交差をする時は、上手側の人が前で交差するという決まりがあります。


<身体と脚の向き>
 身体の向きと脚を出す方向は、アン・ファス(ドュヴァン/デリエール/アラスゴンド)、クロワゼ(ドュヴァン/デリエール)、エファセ(ドュヴァン/デリエール)、エカルテ(ドュヴァン/デリエール)と主に9つの方向があります。

【アン・ファス (en face):正面】
 舞台正面(スタジオでは鏡)に対して、身体全体を真正面に向ける事を言います。アン・ファスは体の向きの指示であり、顔の向きではありません。例えば、「身体は正面で顔を右斜め前」に向けた時でも向きは“アン・ファス”となります。逆に「身体を左斜めに向けて顔が正面」でも“アン・ファス”とはなりません。
身体を正面に向けて前に脚を出すことを「アン・ファス・ドュヴァン」、身体を正面に向けて後ろへ脚を出すことを「アン・ファス・デリエール」と呼びます。そして身体を正面に向けて横に脚を出すことを「(アン・ファス・)ア・ラ・スゴンド」あるいは「(アン・ファス・)ドゥ・コテ」と言います(横に出す場合は“アン・ファス”を略することが多い)。

【クロワゼ(croise) と エファセ(efface)】
 正面に対して体を斜めに向けるクロワゼとエファセ、クロワゼは“交差”させるという意味、エファセはクロワゼを打ち消すという意味があります。身体が覚えてしまうまではややこしい決まり事ですね。まずは下の図を見て下さい。
クロワゼ
(右足前5番のクロワゼ)
エファッセ
(左足前5番のエファセ)

右足前5番のクロワゼは「左を向いて右足が前」、舞台正面から見て左脚が隠れて脚が交差して見えます。対してエファセは正面から見て左脚全体が見えて“交差”していないととらえます。解り難いですが一応、その概念で“クロワゼ”と“エファセ”は決められています。

<クロワゼ>(腕や顔の向きは色々あります)
右足前5番クロワゼ クロワゼ・ドュヴァン クロワゼ・デリエール

<エファセ>(腕や顔の向きは色々あります)
左足前5番エファセ エファセ・ドュヴァン エファセ・デリエール

(ご参考までに)
覚え方は人それぞれですが、私の場合は「クロワゼは腰ひねり、エファセは腰オープン(実際には腰は開いてはいけません)」なんて覚えています。なぜクロワゼが“腰ひねり”かというと、クロワゼの時にはターンアウトを見せるために自分が正面側の腰骨を手前に引いて立っているから(もちろん舞台奥側の腰骨も軽く引いていなければならないのですが)。エファセが“腰オープン”というのは今度は舞台奥側の腰を引いていないとパンツの部分が正面に対して開いて見えて(丸見えして)しまうから。そんな自分の注意をもとに方向を覚えています。皆さんもご自分の覚え方を何か工夫してみて下さい。(;^^A)

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【エカルテ(ecarte)】
 さて、正面に対して斜め方向への脚の運びを意味する“エカルテ”です。(語源は“大きく開く、大きく離す”という意味)
クロワゼとエファセは斜めに向いた時の脚の交差の有無を指示しました。クロワゼやエファセは形容詞なので、通常のポーズの呼び方は「ポーズの名前・身体の向き・脚を出す方向」で構成されますから、「(バットマン・)タンデュ・クロワゼ・ドュヴァン」や「タンデュ・エファセ・デリエール」等となります。ここで、脚を横に出す時は「タンデュ・クロワゼ・スゴンド(横)・ドュヴァン(前)」となると長いので、横に脚を出すという形容詞“エカルテ”を登場させて、「タンデュ・エカルテ・ドュヴァン」や「タンデュ・エカルテ・デリエール」という呼び方になっています。面倒ですが覚えると便利なので、とにかく「エカルテは斜め横!」と覚えてしまって下さい。

エカルテ・ドュヴァン エカルテ・デリエール

舞台正面に対して斜め45度の線上に横に脚を出すことが“エカルテ”です。正面へ出す時は「エカルテ・ドュヴァン」、奥側へ出す時は「エカルテ・デリエール」です。“斜め”の角度はレッスンでは正面に対して45度の角度ですが、エカルテに限らず舞台上で踊る時は舞台の対角線を意識した少しだけ開いた角度を取る事もあります。(あるいは脚の方向は45度を守り、上半身だけ少し開くこともあります。但しコンクール等の場合は厳密に基本と振付けを守らなくてなりません。)


 これらの身体の向きのことを“エポールマン”と呼ぶ先生もいらっしゃいますが、正確には“エポールマン”とは「肩」を語源とする首を含めた上半身の向きの表現(厳密にいうと胸から上のひねり)のことを言います。従って「エポールマンを正確に!」や「エポーレを付けて」という指示は、上半身の形や肩や胸の向きに対する指示となります。

 以上が主な身体と脚の向きの呼び方となります。本当に身体の向きを示す言葉って面倒ですよね。しかし覚えてしまうと瞬時に伝わる用語なので便利な言葉でもあります。レッスンで生徒が注意を受けられるのはほんの一瞬です。その時に先生が何を注意して下さったか解らないと、レッスン代が無駄になってしまいます。バレエのレッスンとは注意を受ける為の時間でもあるのですから。用語は全て覚える必要は全くありませんが、主な用語は覚えてしまった方が楽だと思います。特にクラス・レベルが上がると先生はアンシェヌマンの指示を速く伝えようと言葉だけで済ます場合が増えてきます。頑張って覚えて行きましょう。

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