腰筋を上げる


 身体の胴体の部分(コルセット部分)を正確に保つ為には、
主に 【脊柱起立筋】【広背筋】【腰方形筋】【腸腰筋】等が特に大きな役割を担います。(他にも[腹横筋][腹斜筋][腹直筋]等の腹筋もあります。)

これらがどのような筋肉なのかをまず図で見てみましょう。


【脊柱起立筋】

【広背筋】(水色部分)

【腰方形筋】

【腸腰筋】


ここでは腰筋=【腰方形筋】を取り上げます。腰方形筋は肋骨と骨盤を結び安定させる、とても太く強い筋肉です。

「・まずは骨盤を立てて!」、というページでは、骨盤を正確に立てるには「背中の腰の上部(腰筋)を垂直に引き上げ、骨盤前面の鼠蹊部(ビキニ筋)で下から支える」という表現をしました。私が言う「腰筋」とは、腰方形筋の背中側の上部と中殿筋の上部の事なのですが、面倒なので“腰の少し上”と考えて下さい。足裏で床を押したパワーは、内腿のハムストリングやビキニ筋を通って上部へ伝えますが、腰筋も意識上のそのライン上に位置しています。腰筋は、床からのパワーと肩甲骨や僧帽筋を下ろすパワーで上部に引き上げる(または押し上げる)事が出来るようになります。

では広背筋・腰筋・ビキニ筋の感覚を感じてみましょう。


 床上で足を前に出して長座に座り、背中を垂直に上へ伸ばし、おへその下の部分に軽く力を入れます。次にお尻下にある座骨が床から浮くギリギリくらいの所まで、両手を上へ伸ばして引っぱって下さい。肩も思いっきり上げて大丈夫。ここで背骨が後ろに出た湾曲状態ですと目的の筋肉を感じ難くなりますので、今だけ胸中央をほんの少し前へ出すくらいにして下さい。(肩甲骨の内側が少しくぼむくらいが理想)

この状態で僧帽筋と肩甲骨を静かに下へ降ろすと、まず肩甲骨を下すために肩甲骨下の広背筋が上へ上がって来るのを感じます。更に僧帽筋を下して行くと、腰の少し上の部分が上がる感覚を感じる事が出来ますか?それが私の言う“腰筋”です。発達して来ると腰上部の両側にも感じることが出来るようになります。 更に腰筋を上げ続けて行くと、自然に下腹部のビキニ筋(腸腰筋)が上がることを感じます。(今感じられない方でもレッスンで意識して訓練して行けば、必ず感じられるようになりますので大丈夫です。感じられている方は更に背骨に近い深い部分で意識して見て下さい。)

更に次の段階として、腰筋を含む背中の腰椎周辺の筋肉は下方向に向けても軽く伸ばす必要があります。(上記・右図オレンジの矢印)この腰から下の筋肉は構造的に下にしか伸ばせない筋肉です。しかし重いお尻の重心を引き上げようとして、この部分を無理やり上に上げようとする方がいらっしゃいます。これはただ骨盤を前傾させるだけの結果に終わるので逆効果で、ヒップアップの効果すらありません。腰から下は穏やかに床に向けて伸ばします。

原則としてバレエの全ての動きやポーズではこの広背筋・腰筋・腸腰筋を出来る限り伸ばして!伸ばして!使います。この部分が充分に伸びていることが「美しい」と感じられる形を作り出すのです。意外なことにバレエダンサーは胴長の感覚で踊っている事に気づきます。しかし筋肉というものは油断するとすぐに緩んでしまいますので、伸ばし続ける意識がとても大切なのです。
プロのダンサーでもこの部分が良く伸びている人とそうでない人がいます。特にアラベスクなどでは初級者の方がこの部分を縮めてしまいがちですが、ここを縮めてアラベスクをしているという事は、お腹・お尻・腿の力で身体を固めているということに他ならず、伸びのある動きと安定性のあるキープからはほど遠いことだと知っておいて下さい。
主役級のダンサーの背中の美しいこと!それらはこれらの筋肉を充分に伸ばし最大限に威力を発揮させているからなのです!これらの筋肉はダンサーの最大の武器です。よ〜くストレッチをして伸ばし、強いアイテムにして下さい。

<余談:“側筋”>
 先程の長座で、広背筋と腰筋を感じるために胸を少し前へ出して肩甲骨を下ろしました。これを、逆に胸を少しくぼませて背骨を少し後ろに出して湾曲させた状態で肩甲骨を下すと、今度は脇の真下、身体の側面の筋肉が上がって来ることを強く感じます。この筋肉が先生方がよく言葉にされる“側筋”という筋肉で、これも大変大切な筋肉です。実際にバレエで側筋を使う場合は背中は決して湾曲させず、むしろ胸を少し前へ出すくらいで使用します。身体のコルセット部分を安定させる為には広背筋と側筋どちらを中心に感じても構いません。感覚としては王子様に肋骨を両側から持たれて支えられている感じでしょうか。また側筋は腕を使う事と密接な連動があります。正しい訓練をされている身体であれば、どちらの筋肉も発達して適正に使うことが出来るはずです。自分に合うコツで身体の安定を手に入れて下さい。


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