移動するアッサンブレ


★ 移動するアッサンブレ ★ ――――――――――――

 移動するアッサンブレは、その場での移動しないアッサンブレよりずっと楽に行えます。
基本のアッサンブレでは「5番に閉じて上に上がる」感覚ですが、移動するアッサンブレは上に上がると共に「5番に閉じた状態でも更に先へ移動し続ける」という感覚の動きです。移動するアッサンブレにはグリッサードやシャッセ、パ・クリューなどのステップに続く大きなアッサンブレと、ファイイとつなげ連続して繰り返しながら移動するアッサンブレ等があります。また、トンべして床スレスレに移動するアッサンブレ・パール・テールもありますね。ここでは大きなアッサンブレと連続して移動するアッサンブレについて説明します。トンべやシャッセをして低く移動するアッサンブレは脚を閉じて移動する意識に注意すれば比較的簡単に行えるパですのでここでは省きます。

<グラン・ワルツでの大きなアッサンブレ・ボレ > (アッサンブレ・ポルテ)

 まず、アレグロなどで使われる、横にグリッサードで移動し、浅い角度のエカルテ方向へ移動するアッサンブレを考えましょう。アッサンブレは5番プリエから後ろ足を横に上げる「アッサンブレ・オーバー」とします。移動しないアッサンブレと違うのは、移動なしでは腰のほぼ真下で脚を閉じるのに対して、移動するアッサンブレは上げた脚の方に軸脚を寄せて閉じる動きになる点です。グリッサード等の移動で勢いが付いているので、身体は脚を閉じた姿勢のまま空中を移動することが出来ます。


図@

図A

図B

 ここでのコツは、やはり“架空の台”を爪先の下に出現させ、それを押し台にして腰を上げ上へ垂直に上がる意識です。まず先に動脚の爪先の下に台を想像して、その台を押して上がり、軸脚を動脚へ寄せた後は軸脚の爪先の下に同じような架空の台を出現させ、今度はその台を押して軸足の付け根ポイント(腰や下腹や丹田でもOK)を、更に上へ押し上げ続ける。そのままの体勢(図B)で上へ伸び続けていれば、自然と体は空中で進行方向へ移動して行きます。
注意して頂きたいのは、「腰から下は動脚側に寄せていても、腰から上は垂直に上へ伸びている」という点です。バレエにとっての垂直ラインがいかに大切かというお話は他の項でも繰り返して来ましたが、空中で移動する時も背骨は垂直に上へ伸ばしています。時々、脚を寄せる意識にとらわれて、腰やお尻が後ろに落ちて(出て)しまう方がいらっしゃいますので、後ろへ出さないように気を付けましょう。


 次は大きく移動するアッサンブレ(グラン・アッサンブレ)の基本として、グラン・ワルツなどで行われる、グリッサードからエカルテ方向へ大きく移動する横のアッサンブレを考えます。グリッサードは横あるいは浅く斜め前方へ大きく移動するグリッサード。続いて斜め前方へ大きく移動するアッサンブレは、深く交差した5番(正確には捻りを加えた小さな4番)から踏み切って跳び上がります。歩幅や交差させる足の加減は必要によって変わりますが、後ろ足は必ず床を擦りながら1番プリエのポジション近くを通って出し、脚を直線的に少し高めに上げます。それと同時に腰と脇をエカルテ方向へ回転(身体の方向転換)、上げられた動脚に軸脚を寄せて、そのままの体勢で空中を移動、移動した足の上に腰を乗せて5番プリエに着地します。


 グラン・アッサンブレは踏み切りが命です!プリエでの踏切りは足と膝に対して完璧な腰の位置で踏み切った場合のみ最大の威力を発揮します。個人差はありますが、理想としては爪先と付け根ポイントが垂直に一直線に並んだ瞬間が踏切のベスト・ポイント!プリエの瞬間も上半身は垂直に天へ向かわせて押上げます。
 前述のように、上げた脚の下に架空の台が出現したようにイメージし、その台を爪先で一瞬押すようにして軸脚を素早く寄せます!脚を寄せる力を利用して身体を(付け根ポイントを)更に上へ引き上げます。
身体を力で固めた状態では上手く上へ跳び上がれませんし移動もできません。身体の芯以外はほぼリラックス!跳び上がった瞬間に背骨以外はアッサンブレの形を造るだけを残してすべての力を抜き、エネルギーを頭上から天に向けて垂直に抜きます。肩や僧帽筋も上がりがちになりますから、力を抜いて下ろしましょう。空中で高く大きく移動するには、早く移動のポーズになることです。素早く脚を閉じ空中でのエカルテ5番のポーズをつくりましょう。
繰り返しますが、ここで大切なことは下半身は上げた動脚に寄せて少し傾きますが、上半身は必ずほぼ垂直の状態だということです!腕に合わせてエカルテ方向に傾けるのは胸から上だけ。顔は自由に傾けますが基本的には背骨は垂直になっています(上:右図)。これはとても大切なコツですから忘れないで下さい。


<連続するファイイ&アッサンブレ>

 ジゼルなどで使われる、両足で跳ぶファイイと組み合わせて跳ぶアッサンブレは高さよりも移動距離を優先します。このアッサンブレは4番踏切りから繰り出されますので4番の踏み切り方がとても重要になります!踏み切る脚はきちんとアンドゥオールに開いて、しっかりと床を押すことが最重要です。ここでのプリエは深さが重要なのではなく、ファイイで空中から降りて来るエネルギーを効率よく跳躍へつなげられる事が重要です。ファイイ&アッサンブレは空気のような軽さを表現する“水平移動”です。上体は浮かせたままでの横移動を意識して、プリエの時も上半身は降りない感覚。まるで水面から顔だけ出して移動しているように、進行方向へ上げた爪先が先へ引っ張られているかのように、上げた爪先へ爪先へと移動して行くのです。アッサンブレでは上げる脚の足裏(指の腹)で床を擦ることを忘れずに!脚は空中で廻さずに直線的に上げます。アッサンブレは片足ではなく両足での跳躍です。下半身は上げた爪先方向へ向かい、基本では上半身はずっと垂直のまま。垂直な背骨を軸にして、脇と腰が90度づつ水平に反転を繰り返す感覚です。身体の回転のコントロールは両脇で行いますが、腰も脇についてきちんと回転させなければいけません。(身体の回転のコントロールは腰で行っても構いません。その場合は脇を腰よりもほんの少し多きめに動かすとより綺麗に見えます。)肩が上がっていると両脇が充分に動きませんので注意して!
余裕が出て来たらわずかに上半身は爪先の方向へ傾けても構いませんが、身体を大きく「くの字の形」にするのは間違いです。腰も後ろへ落ちてしまいがちになるので、しっかりとお尻の上に上げていて下さい。

高く跳ぶアッサンブレは身体を上下に伸ばす意識が強いですが、移動優先のアッサンブレでは下腹の腸腰筋により力を入れて爪先の方へエネルギーを向かわせます。どちらにしても、力まずに脚を閉じたポーズを長く保ち、その姿を観客に見せることが美しいアッサンブレを造るコツと言えるでしょう。


次のアッサンブレについての最後は、前後のアッサンブレについて記述します。

ページ先頭へ