<アラベスクの番号>
アラベスク(arabesque)の語源は“アラビア風の”という意味で、片足を後ろに伸ばして上げるあのポーズがなぜ「アラベスク」と名づけられたかは未だ不明となっています。おそらくアラビア文様にある蔦の図柄のように「四方に伸びる様から名づけられたのではないか」と言われています。
日本で基本のアラベスクの形を番号で表わす時、一番多く使用されるのは
ワガノワ・メソッドの1〜4番までの形です。RADは1〜3番まで。オペラ座メソッドでは番号では呼びません。アラベスクの形はそれこそ無限にありますが、ワガノワの基本の4つの形と両手を前へ出す
チェケッティ・RADの3番のアラベスクについては、バレエの常識として覚えておきましょう。ご参考までにRADとオペラ座メソッドの呼び方も記載しましたが、
ワガノワの4つと両腕前の第3を覚えていれば日本ではほぼ大丈夫です。
※ 下記の画像のアラベスクの形はロシア系メソッドのダンサーの形を元にしています。メソッド毎に腕や脚の高さ、首の角度等少し異なりますので、大まかな腕と脚の組み合わせについてだけ参考にして下さい。
【ワガノワ・メソッド】
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第1アラベスク
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第2アラベスク
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第3アラベスク
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第4アラベスク
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第1と第2は舞台正面側の脚が上がっていて、第3と第4は舞台奥側の脚を上げます。第1と第3の腕は正面に対して開いている形で顔は身体の前方へ向け、第2と第4の腕は正面に対してひねっている形(奥側に対して開いている形)顔は客席方向へ向けます。
図では後ろ側の腕が後方に伸ばされているように見えますが、
基本の形は肩も腰も自分の正面に対して真っ直ぐ前を向かせますので、後ろ側の腕は自分の真横よりやや後ろの位置に出す形となります。第2や第4アラベスクでは表現を付ける時に後ろ側の腕を後方へ伸ばす様に肩を回しますが(ひねりますが)、肩を回す時は基本的にでは水平に回さなければなりません。
(ご参考までに)
あくまでもご参考程度ですが、私がアラベスクの番号を覚えた時は、
「第1は定番」「第2は腕ひねり」「第3は逆脚で身体スクエア」「第4は尻見せ(だけど尻見せない)」と覚えました。「第1は定番」言葉の通りです。「第2は腕ひねり」第1の脚で腕を取り換えて上半身を少しひねります(ひねらない場合場合もあります、基本の第2はひねりません)。「第3は逆脚で身体スクエア」第1の脚とは逆脚を軸にして(前に出し)胴体を四角く保つイメージで軸脚とは逆の腕を前にします。「第4は尻見せ」油断すると背中もお尻も正面を向いてしまうという意味です、第4では背中は見せてもお尻は見せません。こんな風に私は第1アラベスクを中心に覚えましたが、もっと良い覚え方もあると思います。
【RAD・メソッド】
下図は異なっておりますが、RADでは腕は水平より少し高い程度、脚の高さは基本では90度の高さで形を作ります。どの形も顔は身体の前方へ向けます。
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第1アラベスク
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第2アラベスク
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第3アラベスク
(チェケッティの第3)
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RADの第1と第2はワガノワとほぼ同じ腕と脚の組み合わせとなりますが、腕や脚の高さや顔の向き等が少し異なります。RADでは基本では顔の向きは全て身体の前方へ向けます。RADの第1〜第3アラベスクはチェケッティとほぼ一緒で、この第3アラベスクをロシア系の先生は「
チェケッティの第3」と呼ぶことが多いです。
【オペラ座・メソッド】
オペラ座メソッドではアラベスクの形を番号では呼びません。それぞれ腕と脚の形を示した呼び方となっています。
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アラベスク・ウーベルト
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アラベスク・ウーベルト, ブラ・クロワゼ
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アラベスク・ウーベルト, ドゥ・ブラ
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アラベスク・クロワゼ, ブラ・ウーベルト
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アラベスク・クロワゼ, ブラ・クロワゼ
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“ウーベルト”は「開いた」、“クロワゼ”は「交差」、“ブラ”は腕の事を意味します。
顔の指示はないので基本では顔は身体の前方へ向けます。
以上が主なメソッドのアラベスクの呼び方です。(ちなみにチェケッティ派では5番までありますがちょっと複雑らしいです。)ソロの場合は脚の高さは自分の得意な高さで大丈夫ですが、群舞の場合は45度・90度・120度と原則として高さが決まっています(先生によって多少好みの角度が異なります)。
<余談>
最近は高さが尊ばれる時代なので世界中のダンサーがパッカリと脚を高く上げますが、本来は「美しい高さ」という一番脚が長く見える理想の高さがあります。また脚を上げ過ぎるのは品位を損なうイメージもあるので、私的には踊りによって分けて欲しいと思うところです。英国のマーゴット・フォンティーンが多用した腕も脚も低い位置でのアラベスク(ロイヤル・アラベスク)は、実はかなりスタイルが美しくないと綺麗に観えない厳しい形なのですが、とても品位と軟からさを体現した形です。
アラベスクの美しさは高さに非ず、ポーズになるまでの過程とポーズになってからの伸び、そして脚以外の身体の美しさこそがアラベスクの美だと思うのです。
最後はアン・ドゥオールとアン・デダンのページへ続きます。